10年ほど前に初めて名古屋を訪れたときの話です

 

熊本から一緒に行った友人4人とひつまぶしを食べに行くことにしました

熱田神宮の近くの蓬莱軒というところが有名だと聞いて

名古屋駅からJRで出かけました

冬のことだったので、熱田駅に降り立った時には陽はとっぷりとくれてしまいました

大通りにそって進みましたが、一向にそれらしき店にはたどり着きません

 

だれかが、右に曲がってみようと言い出しました

右手の杜の中に入ってみると、これまた暗いのなんの

心細くて仕方ありません

犬を散歩させているご婦人に道を聞くと

「ここをまっすぐ行って、突き当ったら左手に行くといいですよ」

と丁寧に教えてくれました

友人の一人が

「すみません、一緒に行ってくれませんか」

と言い出しました

それは、さすがに無理だろうと思ったら、案の定丁寧に断られました

 

そこから先に進めば進むほど杜は深く、暗くなっていきました

風が吹くたびに木が音を立てて揺れます

「名古屋は都会だと思っていたけど

 とんでもない田舎だ

 熊本の方がもっと明るい」

などどブスカタ文句を言っているうちに

香ばしいウナギの匂いが漂ってきました

匂いのする方に進むと、お目当ての宝来軒にたどり着くことができました

 

思わぬ大冒険の後のひつまぶしは、本当に美味しかったです

お店の人にJRの熱田駅から歩いてきたことを告げると

「ずいぶん歩かれましたねえ

 名鉄の神宮前の方がずっと近いですよ」

と教えてくれました

本当に近かったです

何だったんだ、あの苦労は!

 

今思えば、あの真っ暗な道は熱田神宮の参道でした

神様の前で名古屋の悪口を散々言ったせいでしょうか

私以外の3人は、その後インフルエンザに罹患し大変だったそうです