駅のホーム

「ねぇもう渉さん帰ってくるから…」

〔思い出したんだろ?あの時の気持ちも〕

じっと見つめられると杏奈は

苦しくなって目をそらす

〔俺を見て〕

見られない

あの時の気持ちが蘇ってしまう

この人といると、
渉さんのことは、この人に似てたから好きになったのかなとか

考えてしまう。

〔なに考えてんの?〕

「渉さんは、すごく優しくて、あたしのために本当に色々してくれるの。」

〔そんなの、俺だってできる。〕

「違うよ。とにかくもう遅いの。

あたしはミキオくんのものにはならない」

〔川嶋さんが彼女のために理学療法士になったのは知ってる。

その彼女が杏奈だとは思わなかったけど、

でも俺は医者だから。もっといい暮らしさせてやるよ〕

杏奈は一瞬驚いたように目を開いて
彼を見あげる

でも

そーゆうことじゃないから。

それ以上そこにいられず背を向けて

歩き出した。

〔杏奈!〕

振り返らない