西条京也は

迎えに来た渉さんに向かって信じられないことを言った。

[障害あるからどーなのかなと思ったけど、

わりとフツーにできるんだね]

[しかも、けっこうエロいし]

【はぁ?なんだてめぇ】

「ちょっと、西条さん!何言ってるんですか?あたしは何もしてない」

[したかしないかは問題じゃないと思うけど

…まぁいいや]

彼がぜんぶ言い終わらないうちに渉のぎゅっと握られた拳が動いて、
西条京也の細い体が店の奥に飛んでいった。

たくさんの悲鳴と
ハサミとかヘアブラシとか色々な道具が
床に落ちる音が響く

杏奈は手首を強く掴まれて連れ出される

「あの、あたし…」

見上げた横顔は厳しく、前だけを見ている。

何度もつまずきながら引きずられるように歩いて、
小さな公園に着いた。

いつも杏奈に歩幅を合わせてくれる渉がこんなふうに歩くのははじめてだった

「渉さん」

【いいよ】


【杏奈があいつを好きっていうなら
止めない。】

「なに言ってるの?」

「そんなわけないじゃん、
あの人となにもしてないし。勝手にあんなこと言われて困ってるの」

【悪かったよ、乱暴なことして】

「なんか、やだ。疑ってるよね渉さん」

【疑うなっていうほうが無理じゃないか

それに、自分の女、エロいとか言われて

すげぇ不愉快だ。

障害があるからどーなのかなじゃねぇんだよ。
馬鹿にしやがって】

独り言みたいにそう言った渉が
泣いてるみたいに見えて

杏奈は胸を押しつぶされるような心地がした。

この人は、あたしが馬鹿にされたことに対して怒ってくれてる

杏奈は、
一瞬でも西条京也を素敵だと思ってしまった自分を恥じた。

2人で食事なんて、するべきじゃなかった

ごめんなさい

「渉さん、あたしのこと
いやになった?」

【いやになれたら、楽なんだろうけどな。

悪いけど、無理だよ。】

「あたし、渉さんのとこに引っ越して来てもいい?」

公園のベンチで
渉は杏奈に深いキスをした。

【早く帰ろう】