フロイドローズやいわゆるFRTタイプのトレモロユニットが登載されたギターの音に対するイメージはあると思います。金属っぽい、冷たい、タイト等々、往々にして音が硬い傾向であると評されることが多いです。今回は何故音が硬いのか?と音を柔らかくする方法について解説します。

 

■FRTタイプのトレモロ(ロッキンマジックプロ2)

 

1.フロイドローズの音が硬い原因

  フロイドローズとシンクロナイズドトレモロタイプでは何故こうも音が違うのか?それは金属の質量による違いです。

 

 まず、前提のお話をします。そもそも、エレクトリックギターという楽器は弦振動をピックアップマイクが拾ってアンプから出音されるわけですが、音の素となる弦振動は以下のように形成されます。

 

■振動の伝播経路

 ①ピッキング → ②弦  → ③ ナット・ブリッジ → ④ネック・ボディ → ⑤ナット・ブリッジ → ⑥弦

 

 ④ネック・ボディの振動は、ナット・ブリッジを介して弦に振動が返ったり、ピックアップ自体を振動させることで、複雑な倍音を形成します。ここまでが前提のお話です。

 

 そして、物体には組成や質量によって振動しやすい音(固有振動数や共振周波数)を持っています。詳細はリンク参照ください。

 

 ナット・ブリッジ部の金属は質量が大きくなるほど、弦振動との共振周波数にギャップがうまれます。つまり、弦振動はナットとブリッジを振動させにくくなります。これにともない、④ネック・ボディ以降に伝わる振動が少なくなり、木部が弦振動に与える影響も少なくなります。結果、倍音構成が単調になり、硬い音を形成します。

 

2.フロイドローズの音を柔らかくする

 前章で解説した通り、フロイドローズの硬い音の原因は倍音が少ないことにあります。そのため、倍音を増やす方向で解決を図ります。

 

(1)電気的な処置

 今回はハード起因のものなので、電気系の対処(ピックアップ交換等)による解決はできないと考えますが、念のためEQやエフェクター類を色々いじって倍音を増やす方向で試しました。

 

 結果的にシンクロナイズドトレモロのような音に近づけるはどうやっても無理でした。フロイドローズをフロイドローズたらしめる、あのどことなく表面がツルっとした感じがどうしてもぬぐえなかったのです。

 

(2)ハード的な処置

 フロイドローズユニットってカチッと作りこまれているので、意外と改造できる部分が少なかったりします。そこで、どのFRTユニットでも使えるであろうトレモロスプリング、Rawintage RVTS-1です。

 

 これは本来、シンクロナイズドトレモロ用でヴィンテージ志向の商品です。なぜこれをチョイスしたかというと、このスプリングは響き(倍音)が多いんです。また、張力も弱く沢山張ることができるので、倍音の増加としてはうってつけのアイテムなんです。

 

■RVTS-1を5本掛け

 

 通常の硬めのスプリング3本がけも試してみて、比較しました。結果、ローミッドの倍音が増えて厚みが増し、ウォームな傾向になりました。音質傾向で言えば、倍音が増えて音が柔らかくなったと言えます。が、やはりフロイドローズトーンの範疇を超えるようなものではありませんので、過度な期待は禁物です。

 

3.まとめ

 今回言いたいことは音が硬いことは悪い。ということではなく、音楽によってギターにも得手不得手があるということをお伝えしたく。倍音が少なくてスッキリした音像にもメリットが多分にあります。

 

 エフェクターのノリが良い、現代音楽にも馴染む、深く歪ませても音が潰れにくい等々。Every Little Thingsのいっくん(伊藤一郎氏)もフロイドローズ搭載のギターは一定の音質傾向があるため、音が作りやすいとも仰ってました。

 

 といったように、ケースバイケースなんです。ギターの構造上に明らかに不得手なケースは、トリッキーな調整や改造などで解決しようとせず、音楽に合ったギターを使おう!買おう!というのが私の見解です。(なんかめっちゃ当たり前のこと言ってる)

 

おしまい☆