プロギタリストの流麗なフィンガリングを見て「指が滑らかだよなぁ」「無駄な動きがないなぁ」なんて思うことはよくあると思います。なんなら出音なんて聞かなくても、運指の所作でギターの練度が大体分かってしまうことも往々にしてあるでしょう。今回は運指の滑らかな動きってどういう状態なのか?を分析します。
1.動きが滑らかに見える要因
ギターを演奏する手指に限らず、「動きが滑らか」と感じる現象は身近でありふれています。わかりやすい例でいうとアニメとかパラパラ漫画ですね。こういった動画コンテンツは秒間のコマ数が少ないと絵がカクカク動き、秒間のコマ数が多いと滑らかに絵が動きます。そして、この秒間のコマ数を"フレームレート(単位:FPS)"といいます。PCでゲームをする方にはお馴染みですね。
アニメというとディズニーアニメを思い浮かべる方も多いと思います。昔のディズニー映画ってすごく滑らかに動きますよね。対して、日本の昔ながらのアニメって比較的パキパキと動く感じで滑らかに見えることは少ないです。この違いはどこにあるのか?以下にディズニーアニメと日本のアニメのフレームレートを比較したものを示します。
〇ディズニーアニメ
・24FPS(秒間24コマ)
・1コマ毎に絵が変化する(フルアニメ)
・秒間の絵の変化は24コマ
〇日本のアニメ
・24FPS(秒間24コマ)
・3コマ毎に絵が変化する(リミテッドアニメ)
・秒間の絵の変化は8コマ
どうでしょう?章冒頭でフレームレートが大きいほど滑らかに動くと説明したので、ディズニーアニメのほうがフレームレートが大きいと思いませんでしたか?実は日本のアニメもディズニーアニメもフレームレートは同じなんですねぇ。
じゃあ、この滑らかさの違いは何なのかというと、秒間に変化する絵の数(多いほうが滑らか)です。そう、つまり、物体が滑らかに動いて見える条件として、単純なフレームレートの大きさ(秒間のコマ数)だけではなく、秒間により多くの絵の変化が必要であると言えます。
2.指が滑らかに見える所作とは?
前章を踏まえてこれをギターに当てはめてみます。演奏動画はビデオカメラによって撮影されますので、フレームレートはビデオカメラ(約30FPS)に依存します。アニメ表現が24FPSなので、滑らかに見せるには十分な値ですね。このことから、指が滑らかに動いて見えるギタリストは秒間30コマの中でより多く絵が変化していると言えます。
「あの運指は滑らかで無駄な動き無い!すごい!」なんて言われがちですが、アニメーション的に言えば滑らかに見えるものほど動きが多いことになりますね( *´艸`)
後述ではアニメーションの観点から運指が滑らかに見えるからくりを紐解いていきます。
(1)運指が止まっている時間が少ない
滑らかな指の動きはは秒間で多く絵が変化している状態であると言いました。これは別の言い方をすると"運指の停止が少ない"ともいえます。ギターにおける運指が止まる瞬間。それは指がピタッと固定されてしまう"押弦"です。
つまり、押弦している時間が少ないほど滑らかな動きに近づき、不必要な押弦の時間が多いとぎこちなく見えるということなります。
(2)結果的に手指は等速(リズム)的に動く