前回から結構時間が経っての「実録!金融詐欺!!!」シリーズの更新です。


初めてこちらをご覧になる方は、

実録!金融詐欺!!!~第1夜~

実録!金融詐欺!!!~第2夜~

実録!金融詐欺!!!~第3夜~

を読んでから入っていただけると分かるかと思います。



前回までの囚人

 

金融会社のサクラのお客になるアルバイトで借りた100万円が持ち逃げされた!

いったい囚人たちはどうなるのか!?


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バイトを斡旋したO君からその後連絡が来たのは1ヵ月後。



市民団体を組織し、弁護士団を作ったとの連絡を受けた。

被害を受けた各自に弁護士が振り当てられた。

M君とTと囚人と、担当する弁護士は別であった。



囚人の担当になったのはH弁護士事務所のY弁護士だった。

彼は主にこのような金銭の絡む相談の担当だそうだ。

ベージュのくたびれたようなスーツに銀縁の眼鏡、やせこけた頬が印象に残る人だった。

彼はいたって事務的に淡々と仕事をこなしていった。




初めての訪問では詐欺の事実に基づく書類を制作した。

どのような詐欺だったのか、こうなるにいたるまでの話、心情、いろいろ話を聞かれた。



全く他人事で、何の感情も示さないY弁護士。

弁護士とはみんなこんなもんなのかと囚人は思った。



法定内範囲でお金を払えばいいとのことだったが、囚人の場合はさほど返済の額は変わらなかった。

バックマージンとして振り込まれたお金が15万残っていて、それを返済にまわすにせよ残りは70万強。

いくら詐欺に遭ったとしても、囚人お名前で借りてる以上返済は免れなかった。




「で、その詐欺の話はご両親は知ってるの?」



「いえ、知りません。できれば親には知らせたくないと思ってます。」



「じゃぁ、このお金どうやって返すの?親に頭下げてお金払ってもらったら?」



「それだけはしたくありません。」



「だって、今働いてないんでしょ?月々払う目処もつかないし、一括で払ってしまったほうが余計なお金もかからない。ほかの子はそうすると言ってたよ。」








車のために貯金している通帳はあったが、管理していたのは親だったためその通帳を持ち出せば理由を問われる。

かといってお金の出所もない。

頭を下げるか、自分で何とかするかしばらく考えていた。




「払えないなら自己破産ていう手もあるけど。ま、100万程度で自己破産もバカバカしいしね。もちろそうすれば親にも分かることだし、いろいろ手続きも面倒になってくるからね。

あとは、無駄だと思うけど友達に頭下げるくらいしかないね。」



とY弁護士はそう言って鼻で笑った。




Y弁護士にとっては詐欺だろうがなんだろうが、囚人は一お客。

可哀想に・・・なんて微塵も思ってないらしい。





一回目の面談はコレで終わった。

二回目の面談は支払いをどうするか、残金がまとまったら連絡して欲しいとのことだった。






その週末、まだ答えが出せないまま友達を約束していたボードに出かけた。

暗雲が近づいていたとも知らずに。









午後から早めに切り上げた仲間と高速のドライブインで少し遅いランチを食べた。

その時、家からの電話が鳴った。




父親からだった。



「お前、今どこいるんだ!」



「今?●●のドライブインだけど?」



父親の声からして何か怒りに震えてるというのが伝わってきたが、詐欺のことはばれていないはず。

ちゃんと請求書だって分からないところに隠してある。




「いいからとにかくすぐに帰って来い!すぐにだ!」





隣で聞いていた友達にも電話からの怒鳴り声が尋常でないことがわかったらしく、急いでワタシを送ってくれた。





「いったい何があったの?」



「いや、何があったかわからんけど・・・」



「でもお父さん、尋常じゃなかったじゃん?なんかやらかした?」







「実は・・・」




と、詐欺に遭った一部始終を話した。





「ばれたんじゃねーの?」



「いや、請求書とかわからんとこに置いてあるし。」



「それにしてもバカやっちゃったねー、囚人。」




そう、ばれようがばれまいが、バカをしでかしたのは間違いなくこのワタシ。



平気な顔して車の中で話をしてるふうでも、動揺しまくっていたこのワタシ。


心配した友達数人がワタシの荷物を玄関まで運んでくれた。


ワタシの顔を見るなり父親は、



「ちょっと来い!」


と居間から飛び出てきた。



「みんな悪かったな、ちっと今日は帰ってくれや、コイツと話があるから。」



と友達を帰した。





着替えもさせられず居間に呼ばれた。

そこで見せられたものは・・・・・・






隠していたはずの請求書!





「これ、なんだ?」





ワタシはパニくった。

いきなり出てきた請求書に驚いたからだ。

借りに親が部屋に入ったとしても、絶対に触ることのないだろうPC関連の本と本の間に封筒に入れて挟めておいたのに。




「これ、あんたの部屋の本のとこにあったよ。」




と母親が言った。



「なんで人の部屋もモノ勝手にいじるのさ・・・。」



自分が悪いにも関わらず、少し逆切れしてしまった。

でもいつもなら人の部屋もモノなど触らない母親。

いろんな意味で「オンナの勘」が働いたのだろう。



「そんなこといいから説明しろ。これ2社だけなのか?なんで100万も借りてんだ!」



父親は眉間にしわを寄せて、目頭を押さえていた。

子供のことでは見せたことの無い表情。

父の目頭には「怒り」と「呆れ」と「情けなさ」が涙という形になっていた。



もう逃げられないな・・・とワタシは話すことを決めた。

が、全部が全部「本当」を話すことはできなかった。

ワタシはとっさにあった出来事に違うシナリオを追加した。




「詐欺にあったんだよ。

友達に紹介された子に個人情報のデータ集めてるって言われて。

謝礼が出るからって保険証のコピー渡したの。

でも紹介された子も集めてたデータが悪用されてるなんて知らないでしてたからみんなして詐欺に遭ったの。


でも、弁護士さんとも話がついてお金は払わないで済んだし、ブラックリストにも載らないから心配ないの。」




ちょうどこの時期、金融詐欺が多発していてテレビで特番も多かった。

そのため親も疑問に思うことが多かったらしくいろいろ矛盾に思うところをついてきた。

しまいにはO君に電話をするとまで言い出した。

が、彼も被害者だからやめてくれとそれを止めた。



とっさに出てきたこのでっち上げ話。

スラスラと自分の口から出てきたとは思えない出来上がり。




初めてワタシのことで父親が涙ぐんだ。

それを見た瞬間どんなにワタシ自身が恥をかいたとしても、この人たちまで巻き込めないと思った。

そして自ら親に100万を援助してもらう道を閉ざした。




全ての説明を聞いた後でも、両親はしばらくうなだれていた。


「どうしてこの子をこんな行為に走らせてしまったのか。」


と思い悩んでいたのだと思う。





自分の尻拭いは自分でしなければ。




そう決心した。

だけど、残されてる道はあと二つ。

すぐさま仕事を見つける

or

友達に借りるというほとんど可能性の無い手段。



どちらもこの不景気には難しい手段だった。


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やっぱ、親に泣かれるってキツイっすよねー。

泣かしてから気付くものは大きかったです。

ではこの続き、どうなるのかお楽しみに♪




本日の名言


親の涙はビンタより痛い。


               BY 囚人