『響・出産』後編
翌朝7時、
「やっとＬＤＲあきましたよ。移動しましょうね。」
と看護婦さんが迎えに来た。
相当な痛みにもかかわらず子宮口はまだ３センチ弱。
歩いてＬＤＲに移動するも、陣痛のたびに廊下にしゃがみこむ始末。
7時半、実家の母が病院へ。
自分のときの出産話をしつつ背中をさすってくれた。
「あんた産んだときこんな時間かからなかったけどねぇ。」
出産て、母娘で似るなんていうけど、もう一日が経過している以上その説は
完全に迷信だよ。
もう何をしているかわからない、何をしていいのかわからない、痛みの波を
いかに越えるか朦朧とする意識と闘った。
カッコ悪くて出したくない・・・・
なんて思っていたうめき声も出ちゃう始末。
「フェーーーーーーーーーーーーーーーーっ！」
どこからこんな高いうめき声が出てんだよ・・・とある意味冷静になるもんで。
声を出すことで自分を取り戻せていた気もするなぁ・・・。
１０時半、ダンナ様のお義母さんも到着。
とにかく汗だくで、病院着が１着だめになり、お着替えタイムへ。
ヘンテコな椅子に座って見ても、地べたに這いつくばっても、赤ちゃんは出てこない。
「ベッドの上で四つんばいになってみましょう。赤ちゃんさがってくるかもよ。」
とまたまた
ワンワンスタイルに。
しかし、これが地獄なのなんの！比べ物にならない激痛が押し寄せてきて、
４～５回の陣痛で勘弁してもらった。
腰を
ハンマーで叩きつけられるような、言葉にできないレベルなんだもの！
それからお昼になり、先生の診察。
そこで、
「破水して時間が経っているからこのまま夕方まで出なきゃお腹切ろうね。」
ここまで痛い思いしていまさら帝王切開の危機！！！！！！
冗談じゃねーよ！
だったら早く切ってくれっちゅーの！
違う意味で焦り始めて、お腹に向かって
はよでてこーーーーーーい、はよでてこーーーーーーーーい
と呪文を不気味に唱えるワタシ。
呪文の努力も空しく夕方が迫ってきた。
先生はお母さんとお義母さんに廊下で何やら説明している。
ＬＤＲに入ってくるなり、
「あと１時間で出なきゃ切るよー。」
最終警告かよ！
簡単に言ってらぁぁぁぁぁ！
そう、先生はお義母さんにダンナ様に早く病院に来るように連絡させていたのよ。
帝王切開になるだろうからと。
ワタシはこの時点でやっと陣痛促進剤を入れられた。
そのせいか、それとも赤ちゃんが帝王切開に反応して焦りだしたのか、
最終警告の一時間後には一気に全開へ！
助産師さんにも
「あと３０分ででるわよー。」
なんて励まされつつ、その３０分後には、
「あれぇ、出ないわねぇ。」
と首をかしげられた。
「お父さん待ってるんだよ、きっと。よくいるんだよね、そういう赤ちゃん。」
待ってなくていいよ！早く出ろ！でろっちゅーーーーー！
いきんでもいきんでも頭は見え隠れ・・・
助産師さんに
「私のお腹本気で蹴ってもいいからホラ頑張って！」
など言われても、
（キックボクシングしてた私が本気で蹴ったらアンタらふっ飛ぶんだってばぁ！）
と逆に気を使ってしまい集中できなくなっちゃうし。
６時前、ダンナ様が到着。
先生が
「せっかくだから入ってもらいなよ。」
と言ったものの、
先生うちは立会い希望じゃねーーーーーって！！！！！
って言葉にならないこの痛み・・・
「ほら、もうここまで頭でてんだよー。ほら、手でも握ってあげて。」
先生、アタシ一番見られたくない姿をダンナ様にさらけ出しちゃってんだけど。
この先、もう女として見られないかもなぁ。
夫婦生活なくなるかもなぁ。
怪獣・・・とか思われてんだろうなぁ。
グロイとか思われてんだろうなぁ。
もうそんなことを冷静に考えていたよ。
と考えてる間に間に・・・・・・・・・・あれれ・・・？
キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ！（＞＿＜；）
ダンナ様の手を払いのけ、ベッドのハンドルを壊しそうな勢いでいきんだ！
・・・・ずるるんっ！
ダンナ様が来てひといきみで、出ちゃったのねぇ。
ほんとにお父さん待ちだったのね・・・・・・・・・・・・・・・。
あとで助産師さんと話したら、本当にこういうパターンは多いらしい。
お父さんは嬉しいだろうけど、お母さん泣かせだよね。
俗に言うこれぞ、
難産。
だけど産んでみて思ったのは、
死ぬほど痛いけど、実際死なない。
結論、死ぬほど痛い・・・は嘘！！！！！
「うそつきっ。
」（緒川たまき風）
母子手帳の分娩時間の欄。
「２０時間３０分。よく頑張りましたね。」
響編・完