3月25日(月)、父から電話があった。
父:「遺言書を書きたい。」
!
私:「・・・死ぬ気か?」
父:「(笑)おお。」
洒落にならない会話である。
私の父はつい先日誕生日を迎え、86歳になっている。
今、この瞬間に死んでも、なんら不自然さはない。
父:「俺の住んでいるマンションをお前にやる。司法書士とかに頼むのか?どうやるのかわからないから、ちょっと調べてくれ!」
私:「・・・わかった。」
確かにいつ死んでもおかしくないということは、重々承知しているものの、改めて「遺言」の言葉を聞くと悲しくなる。
そして、ふと思った。
なぜ今なのか?
私には兄が1人おります。
でも、両親の離婚により、兄とは私が8歳の時に別れております。
兄は父の元に残り、私は母の元で育ちました。
もし遺言がなかった場合、父のマンションの相続の権利は2分の1ですよね。
父は独身なので、兄妹で分けることになります。
そして、父は今父が住んでいるマンションを私に相続させたいらしい。
でも、実はこれ、昔から父は私にそう言っていた。
確か、父がマンションを購入したのは、今から25年くらい前だったと思う。
その時私は、定職につかず、英語の勉強をしながら、アメリカへ行ったり来たりしていた。その私の姿を見て、不憫に思ったのか、
「俺が死んだら、このマンションあげるから、ここに住め!」
と、会う度に言っていた。
その都度、私たちは同じ会話を繰り返していた。
私:「うん、でも、そうは言っても、お兄ちゃんと分けることになるから、そうもいかないでしょ。」
父:「大丈夫だ。あいつには家がある。」
*色々と事情があって、私の兄は20代前半で、大伯母(祖母の姉)の家と土地を相続しています。
私:「それとこれとは別だよ。遺産問題で揉める兄弟姉妹はたくさんいるからね。 遺言があれば別だろうけど・・。」
父:「大丈夫だ!」(←自信ありらしかった)
そして、長年住んでいる間に、色々な物が壊れ始める。
「クーラーを2台を換えといた。」
「お風呂の換気扇を換えといた。」
「トイレの部品を換えといた」。
「蛇口を取り換えた。」
「10年の火災保険に入っといたから、この書類をやる!」
など、そこに住んでいない私にいちいち報告してくる。
「お前が住むときに困らないように・・・」
と、涙がちょちょ切れそうなことを言う。
でも、それ、遺言書がないとそうはならないよ(←心の声)、
それが・・・何故、今になって突然遺言を書きたいと言ってきたのか?
聞いてみたら、実は、去年(2023年5月)に、遺言を書いたらしい。
兄からも、医者からも、そろそろ遺言書を用意した方がいいと言われていて、ちょうどこの頃、心臓がキュ〜っと息苦しくなったこともあって、なんとなく書いたようだ。
それから1年経って、やっぱり公式に書いていた方がいいな〜、と考え直したようだ。
でも、1人だとよくわからないから、私に手伝って欲しいとのこと。
最初、父は「公正証書遺言」を考えていたようだが、調べたところ、証人2名が必要ということが判明した。
証人2名が必要なほどの遺産でもあるまいし・・・・
ということで、「自筆証書遺言」を書くことにした。
・・・で、父に書き方を伝えた。
私:「貯金は?口座別に遺産を分ける書き方とかもあるよ。」
父:「貯金はない。マンションだけ遺言する。」
私:「? えっ? マンションだけ? お兄ちゃんへの遺言は?」
父:「ない。」
!
・・・ないんかいっ!
お兄ちゃんに、「そろそろ遺言書を用意して欲しい」って言われたんだよね?
そう言われて書く遺言が、妹へのマンション相続の遺言って・・・怒らないか?
でもまあ、すでに兄は大伯母の家と土地を相続しているから、納得してくれるのかな〜?
私の意思ではないので、まっいいか!
父の話によると、マンションの管理費&固定資産税で、1年大体35万円かかるそう。
すると、1ヶ月計算すると約3万円。
賃貸より大分お得!
ありがたいことである。
自筆証書遺言は、法務局保管か自宅保管が選べます。
法務局で保管された自筆証書遺言書は,家庭裁判所での検認手続が不要です。
父は、自筆証書遺言の法務局保管を選びました。
手順はこちら:
法務局で、遺言書保管手続き予約を取ります。
必要書類:住民票の写し、マンション登記書のコピー、身分証明書、印鑑、遺言書の保管申請書、保管料(3900円)
遺言書の書き方にはルールがあります。
サイズ、余白etc.
法務局のウェブサイトの例を見ながら書くと簡単にできます。
4月12日(金)、父の遺言書は受理されました。
法務局から「保管証」が渡され、そこに「保管番号」が書いてあります。
父の死後、法務局から相続者に連絡がいきます。
相続人は、必要書類(遺言者の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、住民票)&手数料を揃えて、その遺言書を受け取りに行く。
・・・・受け取るのも面倒くさいですね・・・。
本人が望んだことなのでやったけど、遺言書の手伝い・・・って、なんか悲しい。
そして大変だった。
とにかく父が高齢で、認知機能が低下しているので、
●聞いてない
●俺はそんなこと言わない
と、言った言わないの会話が続き、物事が全く進まない。
近くに住んでないし、スマホ&PCが使えないのでメッセージも送れないし、全て電話のやり取りなので、ものすごいストレスだった。
高齢者は、そうだったらいいなという希望が、事実になるらしいです。
こんな会話がありました。
私:「遺言書のサイズはA4のみって書いてあるよ。コピー用紙を持ってるよね。それに書いて!」
父:「便箋じゃダメなのか?」
私:「便箋でもいいみたいだけど。必ずA4サイズね。」
父:「・・・そうか。」
〜翌日
父:「書いたぞ。無印で買ってきた紙に書いたよ。」
私:「あっそう。A4サイズなら何でも大丈夫だよ。」
父:「A4じゃないよ。B5くらいか、これは? 線がないと書きにくいから。」
私:「えっ? ダメだよ。線はあってもいいみたいだけど、サイズはA4のみって書いてあるから。」
父:「なんだ今更。昨日それを言わないと! お前が便箋でもなんでも良いって言うから、買って来たんだ。何で最初にそれを言わない!」
父は怒っていた。
怖い、怖い、怖い・・・。
父が怒っているのが怖いのではなく、父が全く私の話を聞いていなくて、聞いていないどころか、勝手に話を作りあげて、勝手に自分好み便箋を買っていることに恐怖を感じた。
老いる・・・って、こういうことなのね。
やっぱり、あまり関わるのはやめておこう。
最低限に、頼まれたことだけをしっかりとヘルプしてあげようと思います。
お互いのために・・・。
以上、遺言のお話でした。