ベリーショートにした。
ウィッグを被りやすくするためだ。
ベリーショート自体も悪くはない。
楠田えりこのような、Superflyのような、自称クールな女性に変身した。
ただ、やはり前頭部が薄いので、風が吹くと“落ち武者感“が色濃く出て落ち着かない。
後頭部は割としっかり残っているらしいが、今日からウィッグを被ることにした。



日曜日のショッピングモールは混んでいた。
初めてのウィッグ。
エスカレーターの背後が気になった。
誰かと目が合うと、劣等感を感じた。
鏡に映る自分は不自然で、サングラスをしてくればよかったと後悔した。
知り合いに会いませんようにと、人混みを避けた。



罪を犯したわけでもないのに、なぜ私はこんなに縮こまっているのだろう。
らしくない。
これから続くであろう長い治療を、
この先短いかもしれない我が人生を、
下向きに過ごすなんてもったいない。
闘病中でも、明るく楽しく生きていこうと決めたのだ。
夫が強く手を握り返してくれる。


ベリーショートに似合うピアスを購入して、家路に着いた。