夫の涙を見たのは3回目だった。
初めての子供を流産した時。
その後子供が生まれた時。
私の転移を知らせた時。
20年でわずか3回だった。



でも、きっとこれからたくさん泣かせてしまうことになるんだろう。
申し訳なさすぎて、また涙がこぼれる。
どうやら私の病気は、日常生活を脅かすものに様変わりしてしまったようだ。
仕事や子供達への悪影響を回避すること、これを最優先に考えてきたのだが、そんな呑気な考えは、いよいよ捨てなければならないようだ。



1年半前に宣告された乳がん。
超早期のステージ0。
手術のみで完結し、完全に私は過去の人になっていた。
それがなぜ、急速に悪化してしまったのか。
主治医の言葉を借りると、"めったにない"ことが現実に起きてしまった。
人生に翳りが見えてきた今、「これまで」と「これから」を記録に残していこうと決心した。
私の経験が、いつかどこかで誰かの役に立つことを願って。