幼稚園から帰って来ると、家に知らない人が来てた。

 

 

 

親戚のおじさんだと言うんだけど、全く会ったことがない人。

 

父親を産んだ母親、つまり私の父方の本当の祖母の兄弟の息子だとか。

 

そのおじさん夫婦には、子供がいないんだそうだ。

 

 

 

だけど私は、

 

「ふうん、そうなんだ」

 

5歳くらいの子供なので、これくらいの反応しか無い。

 

 

 

そのおじさんと言う人が、

 

「可愛いねぇ、☆☆ちゃんだっけ?

 

 今、何歳なの?」

 

とそんな風に話しかけられた記憶がある。

 

 

 

「なんでこのおじさん、私の名前知ってるのかなぁ?」

 

私はそう思ったはずだけど、実際に私は何と答えたのかは、もう覚えていない。

 

 

 

で、母親が、

 

「この子は丈夫で、何でも食べるし、いい子なんですよ。

 

 それと、掃除とか洗濯もお手伝いしてくれるし、買い物も行けるんですよ」

 

と、こんな感じのことを言ってたような覚えがある。

 

だけど、この日のこの後のことは、ちょっと覚えていない。

 

もう、遥か40年近くも前の話だから。

 

 

 

暫くして、このおじさんが奥さんを連れて一緒に家に来た。

 

そのおばさんは、私のことをジロジロと見て、

 

「可愛いねぇ、お人形さんみたい」

 

と言って、私に何かをくれた。

でも、それが何かは忘れたけど、たぶんオモチャかお菓子かな?

 

 

 

確かなんだけど、この時なのか、少しあとなのか忘れたけど、

このおじさんとおばさん、それと母親の4人で私は遊園地?みたいな所に行ったんだけど、

暫くして気がついたら、母親の姿が見えなくて、私は何だか怖いような感じになったのを覚えてる。

 

 

 

そして、おばさんが、

 

「大丈夫、お母さんはちょっと先に帰るって言ってたから、

 これから、おばさん達とお家に行こうね、ネッ、わかったかな?」

 

とこんな感じのことを言って、私を落ち着かせたと思う。

 

そして、気がついたら家に戻っていたのだけど、その間のことは今は忘れてしまって覚えていない。

 

 

 

また暫く経った頃、たぶんだけど、一ヶ月かそれより少し短いかかな?

 

そのおじさんとおばさんが、また家にやって来て、

 

「幼稚園、もうお休になったでしょ?

 

 明日から、みんなでおじさんとおばさんの家に遊びにおいで」

 

と、こんな感じで言ってたと思う。

 

 

 

翌日になって、私とおじさん夫婦と母親が、一緒におじさんの車でそのおじさんの家まで行った。

 

その家には犬がいた。

柴犬とか何かそんな感じの犬で、私は動物が大好きなので、その子と遊んでいた。

 

車に1時間以上乗ってたし、犬と遊ぶはで、疲れて私はそのうちに眠ってしまったようで、気がついたら、もう暗くなってた。

 

 

「ここ、どこだっけ?

 あー、そうだ、わんちゃんのお家だ」

 

開口一番に、犬のことを言って、おじさんとおばさんは安心したようで、私に近寄って来て、

 

「お腹空いたね、みんなで御飯食べようね」

 

とおばさんが用意してくれた晩御飯が、居間の隣の部屋の綺麗な台所のテーブルにあって、

私は、その御馳走を見て、確か凄くはしゃいでいたような記憶がある。

 

所詮は、ただの就学前の幼稚園児だ。 (笑

 

 

 

(おじさんとおばさんの家は、何だか綺麗で新しかったと思う。

 私の家には無いソファとテーブルとかがあって、子供心に凄いって思ったな)

 

 

 

オムライス、コロッケ、サラダ、スープ、けどこれは

たぶんお味噌汁だったかもしれないなぁ、それとプリンみたいなモノ。

 

家でロクに食事させて貰えないことが多かったので、夢のような食卓だったな。

作るのを手伝わされても、母親の機嫌次第で晩御飯が軽減されたり、丸々一食抜かれたりが頻繁だったからねぇ。

 

でも、父親が家にいる夜だと、その時は私は御飯は食べさせて貰えた。

思うに、母親が私を虐待してることがバレると立場が悪くなる、と思ったのかもだけどね。

 

しかしだ、彼が家にいる日なんてことは、月に1回か2回、滅多に無かったっけ。 (笑

 

 

 

「さあ、どうぞ!

 みんなで一緒に食べようね」

 

とおばさんが言ったのだけど、私は母親がいないことに気づいた。

 

 

 

「お母ちゃんは?」

 

「お母ちゃん、××君(私の弟)が具合悪くなったから、

 今日はお家に帰ったの、でもね、明日には来るってよ」

 

と。

 

 

「そうなんだ、××は風邪ひいてたからねぇ。

 じゃお母ちゃんがお家に帰るのは仕方ないねぇ」

 

と思って、勧められるままにその御馳走の晩御飯を食べた。

 

 

私は、この時はまだ今後の自分の身の周りが変わって行くことになるのを全く知らなかったのだ。

 

何も知らない私は、おばさんの作った、その美味しい御飯をガツガツ食べていたっけ。