もぉもぉぉぉぉぉぉっ!
さて、今週もいろいろありましたね。
そう、世間が”どんぐり”や”鈴カステラ”や”お姫様だっこ”に沸いている中、もちろんそれもしっかり享受しながら、私はモモに侵略され、ひきずりまわされていました。
高村薫氏の「黄金を抱いて跳べ」の原作を読み始めて5日、もう心も身体もへとへとです。
普段私はこういう小説をあまり読まないのですが、流れるようなストーリー展開と、緻密な描写、興味深いキャラクター設定、細かいことはさておき、面白かったです。
というのは表向きの感想で、、、実際は、ぎゃぁぁぁーーー!とか、うぉぉぉーーーーー!とか、あぁぁぁーーーーーーー!とか叫びたくなる衝動と常に戦っていました。
いや、すでに叫んでいたかもしれません。
原因は、、、モモですよぉ!モモっ!
さて、ここからは、映画を見るまで、もしくは原作を読むまで、まっさらな状態でいたい方は読まないでください。
感想については、全くの主観であり、さらに言うと、私は映画について流れてくる内容に関する情報は読まないようにしているので、あくまで原作についての感想です。
映画には全く表現されていないものがあるか、もしくは、全く別のものになっているか、もしくは、ずばりそのものかもしれません。
この作品、確かにモモが重要なポイントを締めていると思います。
もちろん登場人物それぞれ魅力的だし、物語は”幸田”を中心に進むので彼が主人公であるのは間違いないのですが、私はどうにもモモが気になって仕方がない。
それはチャンミンが演じるから!というわけではなく。
某国の元工作員という設定も手伝って、独特の雰囲気と悲哀を背負いながら、登場から引き際まで一貫して、無垢で、切なくて、どこか神秘的なモモ。。。
いや、それがチャンミン効果なのかすでに私の中でわからなくなってきました。
それくらい、私の中では、モモは”チャンミンの一部”で、チャンミンは”モモの一部”でした。
もちろんチャンミンの生まれ持った”華やかさ”はモモにはないチャンミン独特のものだけど、深く澄んだ瞳も、とびきりなつっこい笑顔も、静かでちょっと知的な雰囲気も、どこか儚げな佇まいも、、、モモそのものではないですか!!
そして、こんな彼のためにあるような魅力的な役にめぐり合い、さらにはこの作品を選んだ、チャンミンの強運と鋭さに、いつもながらまた惚れ直したわけです。
もちろん、彼を採用してくれた井筒監督にも感謝です。
映画がどんな切り口で描かれていようと、彼がどんな風に演じようと、モモはチャンミンしかあり得ない。。
そして物語を読み進むほどに、オレンジ色の”どんぐり”やら”鈴カステラ”やらがとてもありがたくなってきて、誰だか知らないけど感謝したわけです。
なぜなら、黒髪のチャンミンはいまやモモと同化してしまって、見ているだけで苦しくなってくるから。。。
ちなみに”モモ”という名前、私は”桃太郎”ではなく、ミヒャエル・エンデの”モモ”を思い浮かべていました。
どこか不思議な異次元の感じ。。
チャンミンになると、ポスペの”モモ”も入ったりして、あはは。
さて、以下にモモを表現していると思われる箇所を原作からちょっとだけ抜粋します。
とびとびで脈略はありませんが、原作の”モモ”の雰囲気を味わってみてください。
特にチャミファンであれば、必ずやモモに心を奪われるはずです。
モモについて、予想というものが全く立たなかった。
イエスにしろノーにしろ、つつけば血が出るのは覚悟していた。
それにしても、質素なセーターとジーパンに流行遅れのショルダーバッグをひっかけた格好は、貧相で弱々しく、何が悲しくてこんなに冴えねえのかという感じであった。
上背はある方だが、何度見ても顔の特徴がはっきりしない、のっぺらぼうだった。
表情がないせいだ。
なまりのない言葉も、動きのない顔の筋肉も、人工的で土地や生活の臭いがなく、幸田は直感的に”こいつは偽装だな”と思った。
だが雑然とした街の風景に溶け込んで、誰にも気づかれないような風采は、半分はモモ自身のもののようにも見えた。
モモの親しさは、和やかになった目つきに現れた。
騒がしい雑音に包まれていると、モモはなんだか生き生きとした感じになり、よく笑った。
笑うと、二十代半ばと思われる年齢があらわになり、歳相応の青臭さも感じるのだが、それ以上に、奇妙な初々しさが目を引いた。
いい歳をした一人前の男に、何の初々しさか。
改めて考えると下らないと思うが、モモを見るたびに、ちょっと胸打たれるものがあった。
冬眠から覚めたクマじゃあるまいし、何がそんなに嬉しいのか。
それほど、晴れやかに楽しげに笑う。
時々、パチンコ屋の帰りにそこを一緒に通ることがあったが、そう言えば、誘うのはいつもモモだった。
人気のない夜道で、いつもモモは生き返り、自由になるように見え、パチンコ屋にいる時とはまた別の、のびやかな笑みを見せるのだが、今夜は別だった。
モモは何も見ていなかった。
自分の声さえ、聞こえてないようだった。
その頭の上で、音のない稲妻が光っていた。
まるで、それらが二つの暗い眼球の穴に落ちてくるかのように見えた。
モモは、帯電したフランケンシュタインのように、初めて生きた心臓の音を立てて、ぐらぐら揺れながら立っていた。
虚空に向かったモモの目が、うつろな二つの穴を開けていた。
その穴の縁で、涙らしいものが鈍い光を放った。
もうその顔にはサングラスはなく、あの、冴えないのっぺらぼうの真ん中に、ひたすら透明な茶色の目が二つあるだけだった。
幸田はモモの顔を見た。
かなり茶色がかったモモの目は、犬の目のように黒目の部分が大きい。
寝不足で血走っているが、その視線はむしろ柔らかかった。
どうかしているのは俺の目だ、と思いながら、何も言わずにフスマを閉めた。
すでに3週間そこに缶詰になっているモモは、その夜も一人で本を読んでいた。
数日前まで内村鑑三だったのが、その夜は森有正の『ドストエフスキー覚書』になっていた。
相変わらず髭を伸ばしっ放しの面は、そろそろ諦めの境地に達したのか、最近はちらりと笑みを見せることもある。
ジイちゃんによれば、洗濯、掃除、メシの用意はモモがやっているらしく、そう言えば、いつの間にか何もなかったキッチンに、新しい鍋や茶碗の三つ四つ増えていた。
モモは古雑誌と紙袋一つだ。
その紙袋には、『背教者ユリアヌス』の何巻目かと、ビスケットと巻尺と、ドライバーとペンチとゴム手袋が入っている。
幸田が「どうだ?」と顔を向けると、モモは青白い頬を緩めて微笑んだ。
最近、時々そんな表情を見せることがある。
この世から切り放された彼岸に、一つぽっかりと浮かんでいるような感じの、不思議な笑みだった。
あの独特の親しい感じは、夜明けの薄闇の中で街をかぎ回っている間にだけ生まれ、日の出と共に消えるのか。
モモはいつも、明るくなっていく日差しの中で、再び何者かわからなくなってしまう。
「…あんな男を殺してまで、生きる意味はないと思った。…それだけだ」
モモは声を立てずに笑っていた。
見えたのは、濡れたように光る2つの眼球だけだった。
「これには人間が絡んでいないから楽しい。
誰の命令でもないし、思想も理念も何もない。
生まれて初めてだ、こんなに好き勝手やっているのは・・・」
「幸田さん。あんたには、すまないことをした・・・。
俺は、誰かに知ってもらいたかったんだ。
兄を殺したことを、誰かに知らせたかったんだ。
教会に行って告白したかったが、それも出来なかったから、誰かを探していた・・・。
あんたは、黙って聞いてくれた。
ピストルも見せたのに、あんたは何も言わなかった。
おかげで、俺は随分気が楽になった。
代わりに、あんたが苦しむことになったが・・・」
その手は、ばあさんの繰り言のように幸田の背を撫で続け、繰り返し繰り返し、何事かを祈り続けていた。
・・・幸田さん。北川さんから聞いた。あんたが聖書を持っているって。
あんたのことは、ほとんど何も知らない。でも、いつか、あんたとは神の話をしたいと思う。
あんたとは、心の話をしたいと思う・・・。
野田の話はさっきモモも聞いていた。
察しのいいモモに、これ以上不愉快な話を繰り返す必要はなかった。
「あまりいい感じではないが、とにかくやってみることだ。
ぶつかってみなければ先に進まないときには、ぶつかってみるしかない。
一歩進んで、何もなければもう一歩進む。
何かあるようなら退く。
そのうち、裏切り者が尻尾を出すさ」
モモは、ゆったりとそれだけ言った。
ツルンとした色白の顔に、すっきりとした切れ長の目が二つ。
長いさらりとした髪を肩に垂らして、唇がほのかに赤いモモだった。
これで、タートルネックのセーターが赤やピンクだったら泡を吹くところだったが、黒もなかなか艶かしかった。
とにかく笑った。
久日ぶりに、腹が痛くなるほど笑った。
モモは、悲しげな目で笑みを浮かべていた。
そして一言、「今日から、モモ子だ」と言った。
モモは、いや、モモ子は、淡いピンクのダウンパーカーを着て二度ばかり姿を消したと思ったら、昨日からは、旭区の工大実験室から盗み出した薬品と、ビーカーやフラスコをテーブルに並べて、隠微なままごとを始めていた。
8畳間の冷蔵庫で、爆弾と一緒に寝起きし始めて一週間。
女になって一週間。
そのうち神経がおかしくなると思ったが、モモは驚くほど落ち着いていた。
「どうして黙ってた?何で逃げなかった?」
「逃げても、行くところもないからな」
暗がりで、モモの唇は穏やかに笑っていた。
「それに、ジイちゃんがどういう理由で末永とつながっているのか知らんが、きっといろいろ事情があるんだろうよ・・・。
昔の俺なら、頭を一発ぶち抜いておしまいだったが、もうスパイはやめたんだし。
そうだな・・・。今は、おとなしく逃げ回るしかない」
そんなバカなことがあるか。誰のために、何のために、こんな真っ暗な冷蔵庫で寝てなきゃならないんだ?
「モモ。外へ出よう!」
幸田は、引きずるようにモモを外へ連れ出した。
モモは淡いピンクのダウンパーカーを着て、髪をきれいにとかしていた。
今夜から、夜は自分のアパートへ来たらいいと言うと、モモは「ありがたいな・・・」と小さな声で笑った。
モモは最近、すっかり《モモ子》が板についてきた。
ちょっとした京美人だ。
以前のようによく笑い、笑うと一層きれいに見える。
問題は、でっかい縫い取りのマークだったが、結局それはモモの仕事になった。
北川はモモを自分のマンションへ呼び、奥さんのものだった電動ミシンの前に座らせて、ジイちゃんの描いたイラスト通りの模様を、青シャツの胸に縫い取ってくれと頼んだ。
モモはまず、ミシンの使い方の説明書から読み始め、最初に雑巾を十枚縫い、それから丸一日かかって、そのマークを仕上げた。
「ああ。…モモに何かあったら、事が済んだ後で、ジイちゃんには首を括ってもらう。
モモに何かあったら、絶対に許さない。俺も生きていけない。」
・・・つづく。

