日本統治時代の台湾に建てられた建築物についての本です。

湾生の母から台湾の話を詳しくききはじめたのがつい6年ほど前。

それまで、台湾という国のイメージは、急成長中の亜熱帯の隣国、というぐらいのものでした。

ところが、母から伝え聞く台湾は、戦前なのに随分とモダンで整備されていた印象。

プールなんか、私が通った鹿児島の公立小学校のしょぼい25mプールなんかじゃなくて50mもあったらしい。

ホテルのプールみたいに立派だった、などと宣う。

母が生まれ育った屏東という町は、高雄よりも南の比較的小さな町ですが、宝塚がやってくる劇場や料亭もあったらしい。

高雄には吉井百貨店というデパートがあって、そこのレストランではチキンライスなどというハイカラなメニューもあった。

・・・そんな話を聞くにつけ、どうしても現場を見たくなって台湾に行ったのが2016年の旅でした。

たしかに、1895年から1945年までの50年間、大日本帝国にとってはじめての植民地（←言い方に問題あればお赦しください）ということもあり、その威信をかけて開発されたのが台湾。そこには巨額の国費が投入された経緯もあります。

しかし、太平洋戦争で日本は敗戦。全てを失い、台湾から去ったのでした。

本書は、こうして台湾各地に残る建築物の様式、技術、意匠などをプロ（渡邊さん）が解説してくれる本です。

渡邊さんは、NHK「ふるカフェ系ハルさんの休日」台湾編で日式建築のナビゲーターとしても出演されていて、台湾の日式建築の保存に尽力されています。

内容は、渡邊さんのフィールドノートがベースで、写真以外に手描きのスケッチやその場その場で記したノートで構成されています。この手描きのスケッチが、写真では見えない技術や意匠に隠された意味を教えてくれます。

スケッチはこんな感じ↓

この本を読んで感じるのは、台湾に残された日式建築の多さです。

日本国内で同時期につくられた建物（木造はおろか、博物館や銀行、学校など鉄筋コンクリートの建物も）はどんどん壊されて現存するものが少なくなっているのに、台湾にはまだまだ残っていて、修復したり補強したりして残そうという機運があるとのこと。

この本を片手に、台湾の日式建築を見て回りたくなりました。

『台湾日式建築紀行』 by 渡邊義孝