機械工学部ゴルフ学科

機械工学部ゴルフ学科

幾何学的、物理学的、力学的、科学的なゴルフへのアプローチ

ここでいう「デコピン」は、話題の大谷さんペットではなく、
指でおでこをパチンと弾く、あの昔ながらの“デコピン”です。

 

デコピンの動作を分解すると──

  1. 親指で弾く指(人差し指など)をしっかり押さえ込み、力を蓄える。

  2. 親指の押さえが外れる瞬間、弾かれた指が一気に加速して伸びる。

このとき、指そのものを速く「動かしている」わけではありません。
親指による**抑え(抵抗)**によって一時的に力が溜まり、解除された瞬間に“蓄積エネルギー”が一気に放出されるのです。

もし親指の抑えがなければどうなるでしょう?
単に指を伸ばすだけの「デコピン」になり、痛くもなければスピードも出ません。


🔹ゴルフスイングとの関係

ゴルフスイング(特にスインガーはほぼ100%)も、この
「抑えて解放する」メカニズムを巧みに利用しています。

スイング中に“クラブを振る”のではなく、

  • グリップの軌道と体の動きが**「溜め」**を作り、

  • クラブヘッドが慣性と遠心力によって自然に弾かれるように走る。

つまり、ヘッドを「速く動かそう」と意図するのではなく、
**“解放されるまで抑えを効かせておく”**ことが、最大の加速を生むポイントです。

その結果、クラブはまるでデコピンの指のように、
止めていた力が一瞬で解き放たれ、ヘッドスピードが最大化します。

🔹そして、クラブで重要なのが「ライ角」

デコピンの力が正しい方向に伝わるためには、指の向きが合っていなければいけません。
同じように、スイングで溜めたエネルギーを正しくボールに伝えるための角度が――
まさにクラブのライ角です。

ライ角が合っていないと、

  • インパクト時にフェースの向きがズレ、

  • 「抑えて解放」した力が斜め方向に逃げてしまう。

逆に、ライ角が自分に合っていると、
クラブの“弾かれる力”がそのままターゲット方向に伝わり、
デコピンのように一直線にエネルギーが抜けるスイングになります。

また、アップライトなクラブはターンが早くなり、
フラットなクラブはターンが遅れる傾向があります。
したがって、ライ角が合っていないと、スイング全体のタイミングとパフォーマンスが大きく低下します。

ちょっと時間があったので。、実はワンプレーンはクラブの通る平面ではなかったんですよ。

 

■ ワンプレーンの本質

多くの人が「ワンプレーン=クラブヘッドの軌道」と思いがちですが、
実際は “グリップ(手元)の通り道” を示しています。

クラブはシャフトが斜めに傾いた状態で構えられるため、
グリップが上下動すると、クラブ全体はその傾きに沿って 斜め方向の振り子運動 を行います。
つまり、ワンプレーンとは「クラブを含む腕全体が、一貫した傾斜面上で動く」ということではなく、
グリップが一定のプレーン上を動く結果、クラブがその延長で動いているように見える現象 です。


■ トップ位置による見かけの違い

トップの位置が変わると、「プレーンの数」が違って見えます。

トップ位置 見かけのタイプ 実際の意味
浅いトップ(フラット) ワンプレーンに見える グリップの上下量が少ないため、腕とシャフトの角度差が小さい
高いトップ(アップライト) ツープレーンに見える グリップがより高く動くため、腕とシャフトの角度差が大きく見える

しかしどちらも、グリップの通り道が一貫していれば、スイングの原理はワンプレーン的 です。
見た目の違いは、「グリップの高さの変化」と「体の傾きの度合い」による錯覚に過ぎません。


■ 要約

ワンプレーンとはクラブの軌道ではなく、
「グリップが動く平面」を指す。
そのグリップの上下動が、斜めに傾いたクラブを
自然に“斜めの振り子”として動かしているだけである。

トップの高さは、見た目のプレーン数を変えるだけで、
スイングの本質(グリッププレーンの一貫性)は同じである。

◆ スイングの結果としてのヘッド姿勢を整える

ライ角が合っていないクラブは、
インパクト時にソールの片側が先に接地します。
これによりフェースがわずかに開閉し、
エネルギーが正しい方向に伝わりません。

つまり、スイングを変えずにヘッド姿勢を「正しく通す」ための調整がライ角。
これが一般的に知られるライ角フィッティングの目的です。

この調整により、
地面反力とトルクロスを防ぎ、方向性と飛距離の両立を実現します。

◆ ライ角にはもう一つの“隠れた役割”がある

実はそれだけではありません。
ライ角フィッティングには、
「スイングプレーンとエネルギー方向を同期させるための設計調整」
という重要な一面があるのです。


① ライ角が変わると、プレーンの傾きが変わる

  • フラット(寝ている)ライ角
     → クラブが体の外側を通りやすくなり、プレーンが浅くなる。
      結果:イン・トゥ・アウト軌道が強まる傾向

  • アップライト(立っている)ライ角
     → クラブが体の近くを通りやすくなり、プレーンが立つ。
      結果:アウトサイドイン軌道に傾きやすくなる

つまりライ角とは、スイングプレーンの“傾斜角”を道具側で補正する要素です。


② 適正ライ角がプレーンの底点を安定させる

正しいライ角では、
インパクト時にソール全体が均等に接地します。
これにより、プレーンの底点が安定し、
スイング軌道の再現性が格段に高まる。

そして、スイングの回転軸(身体の軸)とクラブの回転面(プレーン)が一致すると、
遠心力はヘッドの進行方向へ最も効率的に働きます。
その結果、同じ力で振っても飛距離が伸び、方向性が安定します。


◆ まとめ

ライ角は、プレーンとエネルギー方向を結ぶ“蝶番”である。

観点 不適正ライ角 適正ライ角
スイングプレーン 傾きがズレ、軌道が不安定 回転軸と一致し、安定した円運動
ソール接地 トゥ/ヒールどちらかに偏る 均等接地で摩擦ロスなし
フェース挙動 タイミングがズレ、開閉が不安定 フェース向きが自然にスクエア
飛距離・方向性 エネルギーが分散 最大効率でボールへ伝達

“速く振る”よりも、
「正しいライ角でエネルギーを通す」ことこそが、
最短距離で飛距離を伸ばす方法。

という事です。クラブパスも重要な要素となりますよ。

カラーコードチャートがあっていないという事は、最初から最適条件を手放すこと。先ずは、フィッティングを体験することが大事です。すぐにできないとしたら、とりあえずカラーコードチャート通りのクラブを使ってみるというのも手ですね。

次はこれが壊れることについて書きますね。