3か月続いたサンバクラスが、昨日でひと区切りついた。

 そして、来週からは、みんなで赤くて華やかな大きなスカートをはいて、かっこよくて美しいパソドブレに入る💃

 私たちのこの50代ラテンサークルには、

 毎回のレッスンで、先生が必ずやる“ちょっと厳しいこと”がある。

 それは――

 一人ずつ、前列のど真ん中に立って、みんなをリードして踊ること。

 後ろのほうで何となくついていくのではなく、誰かの動きを見ながら“だいたいこんな感じ”で済ませるのでもなく、自分の番が来たら、ちゃんと前に出て、そのフレーズを自分の身体で踊って見せる。

  先生にも、みんなにも、そして何より、自分自身にも。

  だからこの時間になると、みんな急に真剣になる。

  だって、身体ってごまかせないから。

  人の中で踊っている時は、

 誰かのリズムを借りたり、

 誰かの動きをなぞったり、

 その場の勢いに乗ることもできる。

  でも、いざ前の真ん中に立つと、リズムが安定しているか、動きがはっきりしているか、重心があるか、「分かったつもり」じゃなくて、本当にできているか――

 全部、すぐに出る。

 だからこそ、私たちみたいな50代の集まりでも、少しずつちゃんと“本物の身体”になっていくんだと思う。

 そして私が特に好きなのは、先生が基礎の動きでさえ、

「はい、各自でどうぞ」で終わらせないところ。

 一人ひとりに、ちゃんと手を取って、組んで、実際に踊ってくれる。

 これが、本当に大事。

 ラテンって、一人で踊っていると「まあ、こんな感じかな」と思っていても、いざ相手と組むと、すぐに分かる。

  身体が立っているか。

 距離が近すぎないか。

 力を押しつけていないか。

 リズムが自分の中にちゃんとあるか。

  そういうことって、頭で分かるんじゃなくて、手を取った瞬間に、身体がやっと理解するんだよね。

 だからこのサークルのいちばん真面目なところは、

「派手に踊れること」でも、

「動画映えすること」でも、

「みんなが上手で綺麗に見えること」でもなくて、誰も、ずっと後ろに隠れてはいられないこと。

 にいくつになっても、週に一度、自分を人前に出して、立って、踊って、見られる。

 それって実は、すごくすごく、立派なことだと思う。

 この年齢で、まだ自分を人前に躍らせようとする人は、それだけでちょっと美しい。

 もうとっくに、不惑も知命も通り過ぎたのに、それでも前に立とうとする人が鍛えているのは、きっともう、ダンスだけじゃない。

  毎週水曜の午後、新宿での3時間。

 練っているのは、たったいくつかのサンバの基礎かもしれない。

 でも心のほうでは、私たちみたいな、ちょっとふくよかな大人たちが練っているのは、

 もう一度、後ろに引っ込まない人生

  なのかもしれない。