日本ではあまりニュースにならない(バリューが低い)話題ですが、韓国政治がまたテンヤワンヤになっています。

 

韓国では先月、憲法裁判所の判決でユン大統領が罷免され、6月に大統領選挙が予定されています。革新系の最大野党は早々とイ・ジェミョン氏を候補に選出し、高い支持率を背景に政権交代に向けて鼻息が荒くなっています。

 

一方、保守系の与党は先日(5月3日)、京畿道知事や雇用労働相を歴任したキム・ムンス氏を候補に決定しました。キム氏は労働運動出身、異色の保守政治家ですが、ユン氏の戒厳に理解を示し、弾劾には反対の姿勢を打ち出していたため、下馬評では前代表のハン・ドンフン氏(もとユン氏の後輩検事で関係も深かった人物ながら、戒厳発動を当初から激しく非難し、党内から「裏切り者(←はあ?)」のレッテルを貼られ代表を辞任)が有利と見られていました。

 

戒厳反対派のハン氏を候補にしないとさすがに保守陣営としても戦えないと見られていたわけですが、案に相違してキム氏が選出…って、この期に及んで「弾劾反対(=ユン支持)」の候補を立てるところからもう理解不能です。

 

ここで事態をややこしくしているのが、ユン政権で国務総理(首相)を務めたハン・ドクス氏(無所属)の立候補です。いやアンタ、政権の要職にいたんだから責任あるんじゃないの?よく出馬できるねえと思うのですが、何でもアリなのが政治の世界。

 

ところがさらに不可解なのは、与党執行部が、候補に選んだばかりのキム氏に対してハン・ドクス氏との候補一本化を求め、「応じなければ裏切り者だ」と発言をするに至り、キム氏が「何のために党の候補選出をしたのか!」と激怒(そりゃそうだろう)しているのです。言ってみれば、首相の座をにらんで自民党が候補を選出したのに、無所属の誰かと一本化するよう執行部が強要しているという形ですからなんともはや。大義名分、理念、政策などより好き嫌いやメンツの力学なんでしょうね。

 

韓国政治を観察していると、あるパターンに気づきます。すなわち、

党内で候補選出

→敗れた候補が離党して無所属で立候補

→票が分散してふたりとも選挙で敗北、です。

党内選挙で敗れたハン・ドンフン氏も、保守層からそれなりに支持されていますし、そもそも政治家ではないので立場はかなり自由。というわけで今回もこのパターンなのかなあ。