みなさんこんにちは
昨日から今朝にかけて、とても寒いですね
関東から東北では、雪が積もりました
足もとには、お気を付け下さい。
さて今日は、
まだ生まれていない子供さん は、
事故で親御さんを失ったとき、損害賠償を請求できるのか
について見てみます。
事案は、少々複雑です。
事実の概要
お父さん(A)が、大八車を引いて踏切を横断中に、電鉄会社にはねられ、死亡しました。
その際、Aさんは、Bさんと内縁関係にあり、同棲し婚姻届をまもなく出す予定であり、Bさんのお腹には、Aの子Xを懐胎して臨月でした。
その後、電鉄会社と和解し、賠償金を弔慰金名目で金千円を受け取り、将来の一切の賠償請求を放棄することを約束しました。
お腹の子供Xが出生した後、BさんとXは、電鉄会社に対し、以下について損害賠償を請求しました。
① Bの逸失利益:事実上Aの妻としての逸失利益
② Bの慰謝料:Bの精神的苦痛
③ Xの逸失利益:Aから認知されて扶養を受けるべき地位の侵害
④ Xの慰謝料:生涯にわたって私生児として被る精神的苦痛
⇒ ①・②については、B本人が和解契約をしており、いずれの請求権も消滅している。問題は、
③・④の請求権で、母が胎児を代理して和解が出来るのか?
和解すると、生きて生まれた子は、もはや請求出来なくなるのか?
ということです。
では、判決を見てみましょう。
昭和7年、最高裁判所がまだ 大審院(たいしんいん)と呼ばれて
いた頃の判決です。
【 大審院昭和7年10月6日第一民事部判決 】
Xは、和解がされた際には、未だ出生せずBの胎内にあった。民法は、胎児の損害賠償請求権については既に生まれたものとみなしており、これは胎児が不法行為のあった後生きて生まれた場合に、損害賠償請求権を取得するのは、出生の時に、さかのぼって権利能力あるものとみなすべきというにとどまり、胎児に対してこの請求権を出生前において処分できる能力を与えるとする主旨にはない、のみならず、たとえこの能力があったとしても、民法上出生以前にその処分行為を代理すべき機関に関する規定もないので、和解交渉は、子Xを代理した有効な処分と認める理由がない。
⇒ 胎内にある子を代理して、法律行為を行うことは、出来ない
としています。
つまり、Bさんが懐妊していることも考量して示談されていたとしても、胎児にとっては無効だ、ということです。
Xの身分は民法711条列挙のいずれの場合にも該当しないため、同条に基ずくXの慰謝料請求は是認できない。
⇒ 認知を受けていない子の場合には、本当の父親が死亡しても、
損害賠償は請求出来ない(民法711条)、といっています。
しかし、その後の判例では、
未認知子の死亡について、事実上の父による請求を肯定
(東京高判昭和36年7月5日)
文言上同条に該当しない者であっても、被害者との間に
同条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、
被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者につき
同条の類推適用を認め、交通事故死者の夫の妹からの
請求を認容した (最判昭和49年12月17日)
など、”父母・配偶者・子”の範囲を限定せずに広くとらえ
救済を図っています。
Bは、Aの内縁の妻として、同人と同棲している者であり、Xはその間に生まれた者であるならば、少なくともAの収入により生計を維持することが出来る者であり、XはAの死亡により利益を喪失したる者ということが出来る。この利益は、民法709条により保護を受けるべき利益であると認められるのである。他人を傷害した場合において、その者に妻子あるいはこれと同視できる関係にある者の存在があって、行為の結果これらの者等の利益を侵害してしまうことがあるのは当然に予想できることである。
として、原判決を破棄差し戻した。
⇒ 誰かを死亡させた、あるいは傷害を負わせた場合、その者に妻子や扶養している者がいることは、当然に予想できる。だから、その人達の権利である保護を受けられるという利益を侵害したことになる と言っています。
未認知の子についての現在の判例は、
扶養を受けられる権利は守られる
その子自身の慰謝料請求権も認められる
となります。
上記判例は、胎児の権利能力や未認知子の損害賠償請求権について考えさせられるものです。
前々回に登場した 民法711条 で、父母・配偶者・子自身の精神的慰謝料請求権について、裁判所は拡張して解釈し、被害者と近い者等の保護を図っています。