みなさんこんにちは
今日が仕事納めの方も多いのでしょうね。
僕は、明日が仕事納めとなりますが、
行政書士は、年中無休 です
交通事故でケガをされた時、
はじめは、軽いものだ と思っていても、
その後、思わぬ後遺症や再手術となることも
しばしばあります。
次の判例は、まさしくそのような事案です。
【 最高裁昭和43年3月15日第二小法廷判決 】
事実の概要
ある建設会社Aの運転手であるBさんは、同乗していたA社の普通貨物自動車が故障したため、路上に降りて応急手当をしていたところ、Y運輸会社の被用者であるCさんの運転する普通貨物自動車に接触され、左前腕骨複雑骨折の傷害を被った。Bさんは、事故直後、比較的軽微な傷害であり、治療費などは自動車損害賠償保険金で足りるものと考え、事故後10日も経過していない入院中に、Y会社との間において、
① Y会社はBさんに対して、自動車損害賠償保険金10万円を支払うこと
② Bさんは、その後本件事故による治療費その他慰謝料など一切の要求を
申し立てないこと
を内容とする示談契約を締結し、その10万円を受領した。
⇒ 事故直後は、被害者の受けた障害が軽微なものと考えて、
示談をされた ということです。
ところが、事故から一ヶ月以上を経過した後、Bさんの傷害は予想に反して重傷であることが明らかになり、Bさんは、再手術を余儀なくされた上、手術後も左前腕関節に機能障害が残り、結局、入通院17ヶ月を要することとなって、77万円あまりの損害を被った。
⇒ 実際に受けた傷害の程度は、
後遺障害が残るなど予想以上に重傷だったのです。
そこで、Bさんは、Y会社にその損害の填補を請求したところ、Y会社がこれに応じないため、国に対して労災保険金を請求し、約40万円の保険給付を受けた。
このため、国は、労働者災害補償保険法20条(現行12条の4)にもとづいて、Y会社に対するBさんの損害賠償請求権を保険給付の限度において代位したものとして、Y会社にその支払いを求めて本件訴訟を提起するに到った。
これに対してY会社は、示談によってY会社に対するBさんの損害賠償請求権は消滅しており、その後に国が保険給付を行ったとしても、国がY会社に対する求償権を取得することはないと主張した。
⇒ 被害者のBさんは、労災保険の給付を受け、
その後、支払った国が加害者のY会社へ請求したところ、
Y会社は拒否した ということ。
第一審判決
示談にあたって、保険金によって損害が填補されない場合には、その金額支払いについて交渉することが留保されており、Y会社とBさんとの間に損害賠償請求権の放棄に関する合意が成立したものとは認められないとして、国の請求を認容した。
控訴審判決
示談契約は有効に成立したものと認めた上で、権利放棄の約定には、後に著しい事態の変化が生じた場合にはその条項を失効させる趣旨の解除条件が付されていたものとして、第一審判決の結論を支持し、Y会社の控訴を棄却した。 そこで、Y会社が上告した。
最高裁判決
上告棄却。
一般に、不法行為による損害賠償の示談において、被害者が一定額の支払いを受けることで満足し、その余の賠償請求権を放棄したときは、被害者は、示談当時にそれ以上の損害が存在したとしても、あるいは、それ以上の損害が事後に生じたとしても、示談額を上回る損害については、事後に請求し得ない趣旨と解するのが相当である。
しかし、全損害を正確に把握し難い状況の下において、早急に少額の賠償金をもって満足する旨の示談がされた場合においては、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであって、その当時予想できなかった不足の再手術や後遺症がその後発生した場合、その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない。
⇒ 示談は、民法上、和解契約(695条)または、それに類する無名契約と考えられます。
とすると、当事者が互いに譲歩して争いをやめること が条文の趣旨であり、争いの蒸し返しは許さない とも思えます。
しかし、最高裁は、予想してもいなかった再手術や後遺症の発生がある場合、先になされた示談契約の中身にはならない、つまり、予想していなかった部分の損害賠償については、請求できる と判断しています。
この点、もし被害者の予想以上の傷害についての損害賠償ができないともなれば、被害者にとって、非常に酷な状況となるのは、簡単に想像がつきます。
少し専門的なことですが、この判決で示されている要件は、
① 全損害を把握しがたい状況で
② 早急に
③ 少額の賠償金で満足する旨
の示談がなされたこと となります。
思うのですが、実際の交通事故被害者の方における状況は、本当に様々です。
この判決の要件がどれほどの射程距離をもっているのか、明らかではありませんが、例えば、治療費の打ち切りを加害者代理人の任意保険会社の方が通告してきた場合なども、この要件にあてはまるように思えます。
その場合でも、もちろん、自賠責保険における被害者請求による認定と保険金の支払いがなされることが、大前提です。