佐藤小夜子は夫を送り出したあと、洗濯機を回しながら朝食の後片づけをして、各部屋にザッと掃除機をかけて、洗濯物を干した。
ここまで済ませると、あとは自分の時間だ。
彼女は、ほぼ毎日、午前11時頃から夕方までパソコンして過ごした。子どもはまだいない。夫は早く欲しがっているが、私はまだ23歳。もう少し、こうやってのんびりと自分の時間を楽しみたかった。
その日も家事を終えた小夜子は、コーヒーが並々に入ったマグカップを持って、パソコンデスクの前に座り、スイッチを入れた。モーターが回るような音がして、起動を知らせる音とともに画面が明るくなる。いつものようにウィンドウズを起動して、いつものようにブログにログインをした。
(今日は窓辺に置いたラベンダーの鉢の話を書こう)。
窓の外、ベランダに置いてあるラベンダーに目をやると、さっきまで初夏の強い日差しで明るかった景色が、いつの間にか薄い灰色に変っていた。空は重そうな雲に覆われている。
(そういえば、昨日はもの凄い雨だったな――)
小夜子はパソコンをリビングの奥、南側の窓辺の壁に付けて置いていた。外の景色がすぐ見えるからだ。この窓の先は空き地なので威圧感がない。その先に京浜急行の線路が見える。電車が通るとちょっとうるさいが、ずいぶん建物がないだけ開放感があった。
窓の外には2m幅のベランダがあるから、直接、日差しが部屋に差し込むことはないが、夏場はそれが都合よかった。ここで小夜子は、いつものように半日をのんびりと過ごす、つもりでいた。
「さて、メッセージはきているかな」。
自分のブログを確認した小夜子は、思わず両手で口を覆って息を呑んだ。
「――なによ、これ」。
〔死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死〕
昨日書いたブログのコメント欄に〔死ね〕のも文字がいくつも並んでいる。途中で切れているが、きっとコメント欄に書ける文字数いっぱいまでコピペしたからだろう。
小夜子は立ち上がるとテレビのスイッチを入れた。静まり返っている空間が怖かった。テレビかの画面に昼のワイドショーのコメンテーター達の顔が映り、賑やかな笑い声が聞こえると、小夜子は小さく「よし」と気合を入れてパソコンの前に戻った。
幸い、コメント欄にはいつものようにブログへの感想がいくつも残っていた。しょっちゅう、訪問してくれるお馴染みさんや、あるSNSで知り合って意気投合したネットの友達は励ましのコメントを寄せてくれている。
〔上に、ヘンなコメントが書かれているけど気を落とさないでね。ガンバ!〕
〔大丈夫? 嫌だねぇ。誰だか知らんけど、止めといてよ〕
そのひとつひとつにお礼を書いていくうちに、段々と動揺が治まっていくのがわかる。が、あるコメントで小夜子は再び固まった。
〔誰かに狙われていない? 気をつけたほうがいいよ〕
淹れたことを忘れていたマグカップのコーヒーをゴクッと飲み込むと、小夜子はテレビのボリュームを更に上げた。

≫≫続きは、6月12日を予定。また読んでくださいね
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※この物語はすべてフィクションであり、著作権は國枝真理にあります。
ここまで済ませると、あとは自分の時間だ。
彼女は、ほぼ毎日、午前11時頃から夕方までパソコンして過ごした。子どもはまだいない。夫は早く欲しがっているが、私はまだ23歳。もう少し、こうやってのんびりと自分の時間を楽しみたかった。
その日も家事を終えた小夜子は、コーヒーが並々に入ったマグカップを持って、パソコンデスクの前に座り、スイッチを入れた。モーターが回るような音がして、起動を知らせる音とともに画面が明るくなる。いつものようにウィンドウズを起動して、いつものようにブログにログインをした。
(今日は窓辺に置いたラベンダーの鉢の話を書こう)。
窓の外、ベランダに置いてあるラベンダーに目をやると、さっきまで初夏の強い日差しで明るかった景色が、いつの間にか薄い灰色に変っていた。空は重そうな雲に覆われている。
(そういえば、昨日はもの凄い雨だったな――)
小夜子はパソコンをリビングの奥、南側の窓辺の壁に付けて置いていた。外の景色がすぐ見えるからだ。この窓の先は空き地なので威圧感がない。その先に京浜急行の線路が見える。電車が通るとちょっとうるさいが、ずいぶん建物がないだけ開放感があった。
窓の外には2m幅のベランダがあるから、直接、日差しが部屋に差し込むことはないが、夏場はそれが都合よかった。ここで小夜子は、いつものように半日をのんびりと過ごす、つもりでいた。
「さて、メッセージはきているかな」。
自分のブログを確認した小夜子は、思わず両手で口を覆って息を呑んだ。
「――なによ、これ」。
〔死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死〕
昨日書いたブログのコメント欄に〔死ね〕のも文字がいくつも並んでいる。途中で切れているが、きっとコメント欄に書ける文字数いっぱいまでコピペしたからだろう。
小夜子は立ち上がるとテレビのスイッチを入れた。静まり返っている空間が怖かった。テレビかの画面に昼のワイドショーのコメンテーター達の顔が映り、賑やかな笑い声が聞こえると、小夜子は小さく「よし」と気合を入れてパソコンの前に戻った。
幸い、コメント欄にはいつものようにブログへの感想がいくつも残っていた。しょっちゅう、訪問してくれるお馴染みさんや、あるSNSで知り合って意気投合したネットの友達は励ましのコメントを寄せてくれている。
〔上に、ヘンなコメントが書かれているけど気を落とさないでね。ガンバ!〕
〔大丈夫? 嫌だねぇ。誰だか知らんけど、止めといてよ〕
そのひとつひとつにお礼を書いていくうちに、段々と動揺が治まっていくのがわかる。が、あるコメントで小夜子は再び固まった。
〔誰かに狙われていない? 気をつけたほうがいいよ〕
淹れたことを忘れていたマグカップのコーヒーをゴクッと飲み込むと、小夜子はテレビのボリュームを更に上げた。

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