February 2012

ゾウの歩んできた道 (岩波ジュニア新書)/小原 秀雄
¥819
Amazon.co.jp

ゾウが大好きな友人がいて、彼女のことを考えていたらゾウについてもっとよく知りたくなった。図書館で適当に「ゾウ」で検索してこれがよさげだったので借りてみることに。ゾウが出てくる童話とか絵本もいっぱいあって、結構ゾウって愛されてるんだなぁ、と検索結果からだけでも感じた。

ゾウってのは大きくわけるとアフリカゾウとアジアゾウがいて、アフリカゾウの方が体が大きくて牙も大きい。アジアゾウは牙が無いのが多い。アジアゾウとアフリカゾウの見分け方は、耳の形と背中の形。耳が三角だったらアフリカゾウ、丸かったらアジアゾウ。背中の腰あたりがコブのように骨が出っ張っているのがアフリカゾウ、特に出っ張りがなくてずんぐりしているのがアジアゾウ。

ゾウが激減した理由はやっぱり象牙を狙った密猟。昔はアジアゾウも牙を持っている個体が多かったが、牙のあるものばかりが殺され、牙の無いものが生き残り、その遺伝的要因もあるらしい。アジアの方が昔から猟が盛んだったそうだ。

牙だけとれば何も殺さなくても・・というのが素人の疑問だが、牙はゾウの頭蓋骨までずっとつながっていて、三分の一は隠れているらしい。それを根こそぎとるため頭を割ることになる。

牙というけど、あれは本当は牙(犬歯)ではなく、門歯(噛み切り歯)になるらしい。ゾウに犬歯は無い。でもあれで食べ物を噛み切るのは無理。攻撃、木を倒す、枝を折る、穴を掘る、長い鼻を休める(!)などいろいろなことに使うらしい。しかも右利き、左利きというのがあって、よく使う方は決まっているそうだ。さらに、牙は生きている限り伸び続ける!これって途中で折れることを想定して進化した結果なのだろうか。あまり長くなったら不便極まりないと思うのだが。

そして、一番驚いたのが、ゾウは仲間の死というものを認識しているらしいこと。群れ(ほとんどが年長のメスを中心としたメスと子供の集団)の中で仲間が死ぬと、その遺体の周りにずっととどまって離れなかったり、遺体をみんなでなでるような仕草をしたりするらしい。ゾウも人間と同じように海馬が発達していて記憶能力が高く、人には聞こえない低周波を出してコミュニケーションをとっていることから、かなり知能が高いらしいが、まだまだ研究は進んでいないとのこと。

あと、ゾウはその巨体を維持するために、やはりめちゃめちゃ食べる。(でも体重と食料の重さの比で考えたらライオンなどよりも食べる量は少ないらしいが)。そのために、ゾウが環境を破壊すると言われることもある。でも実はそうじゃない。ゾウはキリンやサイと違って反芻しないため、繊維や堅い実などはあまり消化されずに排出される。そのため、ゾウの排出物を食べる昆虫や、排出物から芽が出るなどのサイクルがある。「熱帯林はゾウによって保たれている」という研究者もいるそうだ。ゾウによって森林が破壊されるというのは、人が狭い地域にゾウを追いやっているためなのだ。。。

この本が書かれたのは2002年。10年たって、”ゾウの歩む道”はゾウにとって歩きやすくなっているのだろうか。大型動物は寿命も長いが、一つの個体が生む数も少ない。事態が劇的に改善することはないけど、いかに人間側の意識が変わってきているか。アフリカの政情安定は人間だけでなく、動物たちにとっても本当に重要。

この本が主にアフリカゾウについて書かれているためかもしれないが、近いうちにアフリカに会いにいかねば、と思った。でも自分が行って観光サファリで彼らの生活をかき乱すのもどうなんだ、ということも感じる。どういう形で支援ができるんだろう。一番いいのは人間がもっと少なくなることなんだろうな。。。