先週からスタートした、「ライフサイエンス分野知財評価員養成制度」人材養成プログラム。
文科省の振興調整費を利用した5年目のプログラムで、今年が最後の年になるということで、
いつものように情報提供を受けて、応募した。
応募のときは、3枚の願書に、履歴書と小論文と志望動機を書いて、締切日のおよそ20分前に出来上がってそのまま提出。
倍率○倍の中を勝ち進んで(?)、選考に選ばれた。
既に今日が3回目の講義。
しかも、今日から講義室が変わって、ずいぶん学校の奥まで歩いていって・・・
(帰りに一緒になった人の話によると、その研究棟の地下は、解剖室があるんだとか。)
今日の話はバイオテクノロジー講義の3回目で、ケミカルバイオロジー分野。
どちらかと言うと、薬化学という感じで、以前いた会社でちょっと触れたことのある蛍光プローブの話とか、たんぱく質の特異選択による蛍光ラベリングとか。
こういうとき。
色々な経験をしてきたことが、よかったなって思えるとき。
普段は、何年も仕事をバリバリこなしてる人をうらやましいと思ったりもするんだけど、
いろいろな仕事をしてきたからこそ、バリエーションが広がることもあるな・・と。
もちろん、知識としてはそれほど深くはないけど。
で、蛍光プローブをライフサイエンス分野に応用した例とかの紹介があって。
実際にTMDUで応用して創薬に結びつけた研究の紹介があった。
第1回、第2回のときも聞いた、あのジェネティクスからケミカルジェネティクスへの応用をどういう風にするかの具体的な話もあった。
前回の先生は特に、工学博士と医学博士という肩書きを持ってるすごい先生で、
今日の先生は化学系からのアプローチだったから、なんとなく聞きやすい(?)感じだった。
化学系出身といっても、今の仕事にも特段使ってないから、実を言うと、そうでもないかもしれないけど。
で、レチノイドの創薬の過程を聞いた。
そういえば、抗がん剤ってなんで脱毛とか嘔吐とかの副作用があるのかっていうの、考えたことなかった。
だけど、副作用とかの話の途中にその説明があった。
抗がん剤はそもそも、がんの細胞周期の途中に焦点を合わせて攻撃するものだそうで、人間のほとんどの正常な細胞というものは休止期にあるんだけど、毛根細胞、血液幹細胞、粘膜上皮細胞は、常に活発な状態にあるため、がん周期を狙った抗がん剤の影響を受けることになる。
だから、細胞周期よりも病気に関係ある細胞だけを標的にしようとして、分子標的薬が開発された。
その後レチノイドというビタミンAの成分が、がんに効果があるというのに着目して、それを合成するのではなく、その効果のある官能基を持つものを新たに合成した。
レチノイドにも副作用が起こりやすい等の問題があったわけで、それをそのまま合成によって作り出すよりも、もっとよいものを作ろうとしたというわけ。
その過程で、レチノイン酸、つまりビタミンAが動物の発生に密接にかかわっているということの試験等を行って、
ビタミンが核内に入るとホルモンのような働きをすることになる等、さまざまな研究を重ねて、レチノイドが3年前に正式に認可をされたんだそう。
その間、約20年。
本当にひとつの薬を作り出すことの大変さ、そしてphaseがある程度進んでも、最終的に薬剤になるまでは気が抜けない世界だな・・と痛感した。
ライフサイエンス分野で知財を生かす!というのは本当に難しいのかも。
あるいは、これも一種のテクニックでどうにかなるのかもしれない。
実態を分かれば、何かの答えが見つかるかもしれないし。今年最後のTMDUのライフサイエンス知財の評価員という位置づけなんだから、いい機会を大切にしよう・・・