最小トリム速度はピッチや重量によって変わるので一概に何ktということはできません。
「トリム速度」とはもちろんトリムが取れている状態です。
トリムが取れている = 一定の状態が保たれる(上昇下降もft/minが一定なら一定の状態、と言います) = 加速度が0 = 荷重倍数が1G
ということです。
ここで荷重倍数が1Gの時のピッチとパワーの関係がどうなるかというと、、
こうなります。縦軸がスピード、横軸がピッチです。
曲線は1Gの線です。つまりこの線上にあれば1Gを満たしている、ということです。
この図ではピッチが5.0°で70ktの時は1Gの荷重倍数なんですね。つまり手を離してこの状態が維持できるならトリムが取れているということです。
そしてこの70ktがピッチ5.0での“トリム速度“です。
この1Gの曲線がどんな数値を取るかは、使用する航空機、気温、気圧、重量で変わってきます。
では話を戻すと、最小トリム速度とはなんでしょう?
この図から言うとピッチがどんどん増えていって最終的に0になりそうですが、実際にはその前にストールしますね。でもストールしてしまうと1Gは超えてしまいます。
ではストールする前でかつ1Gが保てる速度はどこでしょう?
ストールの直前ですね。厳密にはストールの直前で正解ですが、実際には違います。
実は、power off でaftトリムをMAXにとった時の速度です。ストールの直前では安全の余白がないのでそんなところには設定しません。
Aft trim max →ピッチが高い→さっきの図からトリム速度は下がる
Power off →最悪の状況を考えている。
こんな状態にしたらストールしそうですが、実はlight aircraftはこれではストールしないように設計されています。
なんでこんなところに設定したかとういうと、操縦桿が壊れてもトリムでピッチを操作し、かつストールに入らないようにするためです。
ところで後方限界ってなんのために設定されているんでしたっけ?
安定性とフラットスピンを防ぐためですね。
Power off, Aft trim manで手を離して正の静安定が得れれなかったらどうなるでしょう?
死にますね。
操縦桿が壊れてパワーも使えない(または着陸時などの少ない時でも)ストールに入らないようにするために、後方限界にトリムの条件が入っているんです。
では前方限界では操縦桿が壊れた時のことは考えていないのでしょうか?
前方限界の目的は操縦性と着陸時の引き起こしですね。
操縦性は置いといて、着陸時の引き起こしは操縦桿が壊れたらどうするんだ?と思われるかもしれませんが、トリムでやります。そしてトリムの性能条件にそれが入っています。なので前方限界でトリムの条件を入れる必要がないんです。