後方限界とは

 

高出力フラップ離陸位置地面効果なし、などの条件の下で、最小トリム速度でトリムをとり、この速度で操縦桿から手を離したときに正の静安定が得られる限界(から安全を考慮して1[inch]前方にずらした位置)」

 

と定義されています。

要は、失速からの回復やフラットスピンに入りにくくするための条件です。

 

では失速やフラットスピンに入りやすい状況とはどんな状況でしょうか。

一言で言うと臨界迎角に到達してしまう時です。

 

ではどういうときに迎角が臨界迎角を超える可能性が高いでしょうか? 次の二つです。

・そもそもの迎角が高い状態で飛行しているとき → 離陸時はピッチ高いですよね。また離陸時は高出力ですね。

・高速時に操作を誤った時 → 飛行機は揚力で操作をするため、揚力の変動は姿勢の変動に直結します。そしてその揚力は速度の2乗に比例します。

 仮に今速度が2だとします。すると揚力は4ですね。(ほんとはこんな単純じゃありません。話を簡単にしています。)この状態から速度が+1して3に変わったとしましょう。すると揚力は9です。変化量は5です。

 では今度はもともとの速度が10としましょう。揚力は100ですね。先ほどと同じように速度が+1されて11になったとしましょう。揚力は121ですね。変化量は21です。

 どちらも同じように速度は+1されましたが揚力の変化量は後者の方が大きいです。揚力の変化は姿勢の変化に直結するんでしたね。つまり、速度が大きい⇒揚力が変化しやすい⇒姿勢が変わりやすい⇒意図せず臨界迎角に達してしまう、となってしまいます。だから高速時は注意が必要なんです。そして高速時は大体高出力です。

 

でもこれらも飛行機に正の静安定があれば起きにくいですね。

 

だから正の静安定が必要なんですよ。

 

 

余談ですが後方限界は主に尾翼の復元力によって前後します。
尾翼面積が大きくなったり、尾翼までの距離が大きくなると復元力が大きくなり、重心後方限界は後へ移動し重心設定範囲に余裕が出てきます。だから訓練機って大体尾翼が大きい飛行機を使ってるんですよ。
 

また、フラットスピンですが入ってしまったら終わりです。

そのため飛行機は失速への入りやすさは

主翼→水平尾翼→垂直尾翼

となってます。

垂直尾翼が一番失速に入りにくいです。最後まで生きててもらわないと死んじゃいますからね。