「ウクライナ戦争の嘘」 中公新書ラクレ 手嶋龍一 佐藤優
この6月に初版が発行された本。あまりに実相に踏み込んだ内容でしたので、ご一読をお勧めします。
以下は私が個人的に”白眉“と感じられた箇所の抜粋です。
外交とは、交わるはずのない平行線を交わったと表現する業なのです by手嶋龍一
手嶋龍一
「外交交渉の現場を数多く取材してきた外交記者として言えば、停戦のキーワードは”中立化“の外にはありません。ウクライナは、NATO加盟を申請していますが、現時点ではNATOの加盟国ではない。形式的には中立国です。一方のロシアも、ウクライナのNATO加盟阻止が大義名分です。もっともプーチンの言う”中立化“は、事実上の属国化です。”中立化”と言っても、両者の内実には大きな隔たりがある。しかし外交とは、交わるはずのない平行線を交わったと表現する“業”なのです。」
佐藤優
「西側が兵員の派遣を含む本格的介入を行えば、ウクライナ全土からロシア軍を駆逐することは可能だ。それのみならず二度と他国を侵略することが無いようにロシア国家を分断し、弱体化することもできると思う。しかしアメリカはその選択に踏み込まない。ロシア国家が存亡の危機に瀕した場合、ロシアは核兵器を使用すると明言しているからだ。その場合、戦術核だけでなく、ワシントン、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコなどのアメリカの主要都市を戦略核で攻撃することもロシアは辞さない(ロシアは南極回りで北米大陸を攻撃できるサルマートという大陸間弾道ミサイルを持っている。このミサイルを迎撃することは現在のアメリカの防空能力では難しい)したがって、アメリカを中心とする西側連合は、アメリカがロシアと直接交戦することを避けるという条件下でしかウクライナを支援しない。このようにアメリカによって(管理された戦争)で、ウクライナ軍がロシア軍を駆逐し、1991年の国境を回復することは不可能だ。客観的に見て、アメリカの戦争目的は、ウクライナを勝利させることではなく、ウクライナを使ってロシアを弱体化させることだ」