世界情勢について語る
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罪と罪①

20XX年。

世界は争いの傷跡を覆うように、平和主義が蔓延している。

しかし日本はというと、第三次世界大戦の敗戦をうけ、人口が約3000万人に減少し、情勢は荒れ狂っていた。

この世の中を変えるべく、政治家たちは奔走していた。

その中で戦争によって私腹を肥やした1人の政治家が3つの法案を立案した。

まずひとつめが「議員優遇制度」。

なにもかもに議員が優遇されるといった、ふざけた制度であるが、その代わりとして給料の全額カットが余儀なくされる。

ふたつめに「強制養子制度」。

学校などで先生を間違えて『おかあさん』と呼んでしまうと、強制的に養子縁組されるといった制度だ。

そしてみっつめの「認可制度」。

表向きはなんでも政府の認可がなければできないということだが、逆を返せば殺人も認可されれば可能だと言うことである。

もちろんその含みを持たせたのはわざとであり、仲介の会社を政府で管理して儲けようという策である。

とはいっても、その仲介の会社を経営するのは立案した政治家である。

それはまさに動乱を利用した悪の根源である。

始めは疑いが勝っていたのだろう、誰も殺人を認可してもらおうとはしなかった。

俺は黒のスーツで身を固めていた。

社会を混沌とさせている場所の、ある一室でそわそわしていた。

少し動機が激しくなっていたが、隠すように目を瞑っていた。

すると、背中の方で扉が開いた。

「中俣くん。例の法律が可決されたよ」

声の主は代議士である豊田博太郎である。

豊田の下についてもう3年になる。

俺の遠い親戚らしいが、ほとんど他人のようなものだ。

大学を卒業してからもダラダラと就職もせず、遊んでいた俺に偶然声をかけてもらった。

「おめでとうございます。これで先生の」

ここまで言ったところで豊田が咳払いした。

「あっ、すいません。おじさんでしたね」

なぜか俺におじさんと呼ばせる。

どうせ、身近な存在だと世間にアピールしているだけだろう。

「これから、忙しくなるぞ。よし、明日休みを取りなさい。きっと働きづめになるからな」

俺の肩をポンと叩いて、部屋を出た。

その背中に礼をしてため息をついた。

「日本はどうなるんだろうな」





「おい!起きろ」

目を開けるとそこには拳銃を持ったスーツの男が立っていた。

驚きよりも諦めが先に出た。

「お前の親父のせいで・・・」

泣いているのか。

まだ目がぼやけているせいではっきりは見えなかった。

しかも実際には親父ではないが、今はそんなことどうでもいい。

あの法律が可決されてからこんなことは日常茶飯事だ。

恐らく今日本中がそうなっているんだろう。

豊田はいったい何のためにこんな馬鹿げた法案を出したんだ。

あぁ、明日秘書を辞めよう。

それよりも今のこの状況をどうすべきか考えた方がいいか。

いや、こいつが引き金を引いたところで俺の命は終わりだから考えるだけ無駄かな。

「おい!なにをぶつぶつ言ってんだ」

やっぱり俺を殺すつもりだな。

ただ、本当に殺意のある人間は止める間も無く、撃ち刺し殺すという話を聞いたことがある。

こいつはそこまで殺意が強くないな。

「殺されるかもしれないのになんで何もしないんだ?何か言いたいことはあるか」

こいつこそなんでさっさと殺さないんだ?

なにを躊躇っている。

「お前が俺を殺すのは自由だ。ちゃんと許可も取ってきたんだろう」

「・・・うるさい!黙れ」

男は狼狽した。

もしやこいつは許可を取っていないな。

「そうか。なら死んでもらうしかないようだな」

俺が虚勢で言った言葉に、男は驚き少し後退りした。

その瞬間を見逃さないで、枕元にあるボタンを押した。

男は俺の目の前から忽然と消えた。

ベッドの横に現れた穴に落ちたのだ。

俺はその夜、豊田の秘書を辞めた。

「こんな下らない世の中なんて、何が楽しいんだ」

俺は「永久殺人許可証 中俣聡史」と書かれた紙を破った。

そして、死体が山積みになったベッドの横の穴の下を見て、その中に紙を捨てた。





俺は公園のブランコに乗って、ぼぉっとしている。

「あぁ~。ヒマだな」




聡史は公園のブランコに乗っている。




「ヒマですねぇ」




千佳は聡史の隣のブランコに乗っている。




「そういや、俺たちって付き合ってんの?」




聡史はなんとなく言った。




「今そんなことどうでもいいでしょう。気にするだけ無駄ですよ」




千佳は無機質に答えた。




「そうだなぁ。ほとんど死んじゃったみたいだしなぁ」




聡史は当たり前のように言った。




「ここって、危なくないんですか?」




千佳は建てまえで言った。




「危ないんじゃないの?あんまりそういうの興味ない」




聡史は適当に答えた。




「興味ないんだ。いいですね。そういう考え方」




千佳は聡史のそういうところに魅かれていた。




「どれだけ隠れてもどうせ見つかるんだ。それならぼぉ~っとしとくのがいちばんだよ」




聡史は諦めとは違う、なにか希望とはほど遠い感情だった。




「それにしても誰があんな法律作ったんですかね」




千佳は怒りを通り越して呆れている。




「そんなこと考えるのが無駄なんだよ」




聡史は少しムッとしたが、それも無駄だなと考えた。




「まぁ、今はヒマを楽しめってことですかね」




千佳はブランコから降りて持っていたカバンから拳銃を出した。




「そうか。千佳も行くのか」




聡史は変わらない様子で言った。




「うちの両親の仇です」




千佳は涙ぐんでいた。




聡史は黙って千佳に寄り添った。




今日もどこかで銃声が鳴り響いている。


刑事の苦悩

「私の直感が正しければ、犯人はあなただ!桜水さん」



「いい加減適当に犯人当てるの辞めてくれないか」

素田は言葉を失った。

小池と素田は喫茶店で向かい合って座っている。

「というのもな、直感で犯人当てて、はいやりました。トリックはこうで、動機はこれで、証拠はこうこうこうです、って言われても俺たち警察は何やってんだって話になるわけだ」

素田はうつむいている。

「もちろん冤罪でもなければ、ちゃんと証拠もある。不当逮捕ではないから構わないんだが」

素田は眉間に皺を寄せ、やはりうつむいている。

「まあ、なんというか。メンツってことだな」

小池は目の前にあるコーヒーを口にした。

すると素田が顔を上げ口を開いた。

「えっ?聞いてませんでした」

小池は口に含んだコーヒーを素田にぶちまけた。

「なんで!?」

小池は信じられないといった顔で素田を見ていた。

「奥歯に詰まったスルメを取ってました」

素田は無垢な笑顔で小池を見ていた。

小池は呆れていた。

「私の直感が正しければ、小池さんは何か私に言いましたね」

直感が働かないやつでもわかると、口にはしなかったが小池は額に血管を浮かび上がらせた。

「私の直感が正しければ、小池さんは怒ってますね」

小池はみるみる顔が赤くなり、体が震えてきた。

「じゃあ聞くが、お前の直感が外れたらどうするんだ」

強い口調で小池は言った。

素田は当たり前の顔をして答えた。

「仕方ないんじゃないですか?勘だし」

小池は気づいた。

コイツはバカなんだと。

「外れることはまあないですけどね」

自慢そうに素田は言った。

小池はイライラして仕方なかった。

「だって、僕責任ないですし。全員にあなたが犯人だって言ったらどれかは当たるし」

小池は気にせずタバコに火を点けた。

素田はそれでも続けた。

「根本的にまず、あなたたち警察が色々と調べてくれるでしょう。それを見ていちばん怪しいやつを犯人にしてるだけですし」

素田は警察を小馬鹿にしたように、半笑いで上から目線で言った。

角度で言うと、10°ぐらいの角度で上から見ていた。

小池は立ち上がった。

「僕の直感は小池さんたち警察のおかげですよ」

小池は気づくと、机にあった灰皿を振り回していた。

鈍い音がして、ドサッと人が倒れる音がした。

素田は薄れゆく意識のなかでこう言った。

「わ・た・しの・・・ちょ・・かんがただ・しけれ・ば・」

TIME

午後2時50分。


男は張り切っている。


顔を少し赤らめ、高鳴る胸の鼓動を抑えるかのように、午後3時を待っていた。


男には彼女がいた。


もうすぐ、付き合って4年近くになる。


後ろに肩の下まで長く伸ばしたストレートの髪はブラウンの色をしている。


2人はいつも3時に、街の中心にある大きな時計の下で会っていた。


それも、ほとんど毎日だ。


雨の日も、風の日も、雪の日も、2人に天気なんて関係なかった。


ただ、雷がこの時計に落ちた時は、さすがに会えなかった。


今日こそは彼女に、結婚のプロポーズをすると決めていた。




  ゴーン  ゴーン  ゴーン




時計は力強く人々に時間を知らせた。


同時に陽気な音楽を奏でて、道行く人の足を止めた。


ちょうどその時、彼女はやって来た。


その音楽に乗せられるようなリズムで、男の前にやって来た。


時計の周りにいる人々は、忙しい手を止めて2人に注目している。


音楽が終わり、男が口を開いた。


「好きだ。結婚しよう」


彼女は男に背を向けた。


男は不安そうな目で、彼女の後ろ姿を見ている。


「さよなら」


彼女はそう言って、男から離れていった。


男は呆然とした。


今にも零れそうな涙をぬぐって、来た道を戻っていった。


昼間も電気をつけなければ薄暗い部屋に、男はいた。


そこで1日をぼんやり過ごした。




次の日。


男はまた張り切っている。


今日もまた3時を待っている。


今日こそは、という気持ちがあったのかもしれない。


やはり、時計が道行く人に3時を知らせた時、彼女はやって来た。


プロポーズの結果はやはりノーだった。


男はまた、肩を落として部屋へと戻った。


その夜、激しい豪雨になり雷も鳴り響いていた。


夜が明けて、昨夜の天気が嘘のような雲ひとつない、青が広がっていた。


しかし、男の気分は晴れなかった。


今日は3時が来ても部屋から出ようとしなかった。




「おい!こっちだ」


夜。


男は聞き覚えのない声がしたので、目が覚めた。


すると、男の部屋に大男が入ってきて、部屋から連れ出された。


抵抗も出来ないまま鉄の硬いベッドに寝かされた。


大男はぶつぶつ独り言を言いながら、男を眠らせた。




男は目を覚ました。


周りを見ると、いつもの部屋だった。


何も変わったことはなかった。


夢だったのかもしれない。


男はまた、3時を待っていた。


「今日が最後のチャンスだ」


覚悟を決めていた。


すると、時計は響いた。




   ゴーン ゴーン ゴーン




いつものように人々は、街の自慢である時計に目をやった。


陽気な音楽にリズムをとる人、大きな音に立ち止まる人、足早に歩くサラリーマン、泣きわめく赤ん坊。


そのなかに、昨日の大男もいた。


皆それぞれの顔で、男の告白を待って見上げている。


彼女もいつものように音楽に合わせてやってきた。


「好きだ。結婚しよう」


男はいつもに増して、強く言った。


彼女はやはり男に背を向けた。


「君の答えはわかっている。今日で最後にしよう。さよなら」


男はそう言って、体の向きを変えて帰路に着いた。


その時。


「待ってください。結婚してください。私を幸せにしてください」


背中から彼女の声が聞こえた。


男は足を止めて振り返った。


そして、2人は抱き合った。


時計台の下の人々からは拍手が起こった。


まるで舞台を見ていた観客のように。


人々は、男と彼女が結婚したのと同じように、大男にも拍手をした。


大男は照れくさそうにして言った。


「この時計台で、あの2人のようにプロポーズしてくれる人が増えて欲しいね。それには、まず成功者を作んなきゃいけないと思って」




次の日。


男は張り切って3時を待っていた。

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