お師匠さま 勝手に弟子入り中のピコロコです。
僭越ながら、『マーヴィンズルーム』の感想をお伝えさせていただきます。
お師匠さまがいつも、ご自分のお気持ちを嘘偽りなく述べていらっしゃるのを真似て、私も自分の感じたことをそのまま書かせていただきます。
演出の方や、役者さん達や、この舞台をご覧になった方が読んだとき、「そうではない」と感じられることも、多々あるかと思います。
お師匠さまや読んでくださった皆さまに、もしかしたらご不快な思いをさせてしまうかもしれませんが、そこは私の未熟さと思って受け取っていただけると嬉しいです。
まず、一文で言うと、
「創られた皆さま全員の魂がこもった、本当に素晴らしい舞台でした!」
とても陳腐な言葉に聞こえますが、これが端的に私の心を現わしています。
私は一番前の一番端の席でした。(これは、私がチケットを購入する際の備考の欄に、「可能であれば、出入り口に近い席を希望します」と書いたので、希望を叶えてくださったのだと思っています。スタッフの方には、ご配慮くださったことを心から感謝しています。)
この席からは、役者さん達の表情がとてもよく見えました。
リーがハンクと会話する時の、苛立ちと悲しみと、どうしたらよいのかわからないという気持ちを含んだ、怒ったようで泣きそうな表情。
ベッシーがリーの前でウイッグを外す時の苦悩の表情。
治療のためほとんど髪のないベッシーの頭をみて、ハッとするリーの表情。
ベッシーが、入院先に見舞いに来たルースとテレビドラマの話を、とても楽しそうにする表情。
リーが夜中に、冷蔵庫からオレンジジュースをコップに注いだ時の表情。(これはなぜだかわからないのですが、とても印象に残っています。)
ベッシー、リーだけでなく、すべての役者の皆さんの印象に残った表情は、数えきれないぐらいあります。
とても重いテーマの作品なのですが、重く暗くなりそうになったら、ルースとウォーリー医師が登場して、場をユーモア溢れる温かい場所に変えていきます。
テレビのとてもくだらない恋愛ドラマを見ることを、生きがいにしているルース。
患者の名前を間違えてばかりの、ウォーリー医師。
2人が出てきて演じるたびに、観客は大爆笑でした。
本当に、場の空気がパッと変化しました。
(これは夫も同じことを言っていました。)
演出の凄さもあるとは思いますが、それ以上に、佐藤しのぶさんと磯辺万沙子さんの演技の凄さだと思いました。(奥様だから褒めているのではなく、本心で思いました。)
自分の人生を、
深く見つめる時間は
もちろん大切だ。
でも、そればかりをしていては、
つまらない。
楽しいことや、くだらないことや、
不真面目に生きることも
大切なんだよ。
人生は楽しむために、
あるのだから。
私はこの演出は、「人生は↑こういうものだ」ということを教えてくれているのだと、思っています。
私がこの舞台の中で一番印象に残っている場面は、ベッシーとハンクが病院で話をする場面でした。
ハンクが自分の精神病院での生活を、楽しそうに面白おかしく話す。
それを、すぐに嘘だと見抜いたベッシーが「どうして、そんな嘘ばかり話すの?」と、静かに怒る。
「嘘じゃない」と話を続けるハンク。
無視するベッシー。
話題を変えて、たわいのないことを話しかけるハンク。
それでも、毅然として無視するベッシー。
ハンクはやっと、自分の本音(絶望と苦悩)をベッシーに語り出す。
その話を真剣に聞き、寄り添うベッシー。
「母さんは、あまり凄いって思わなかったみたいだけど、施設のレクレーション大会で5位だったんだ。」と寂しそうに語るハンクに、「すごいじゃない」と満面の笑みで答えるベッシー。
ハンクの嘘は、他の誰かを傷つけるものではなく、自分自身を深く傷つける嘘でした。
ベッシーの
『私は、私の愛する家族(ハンクはベッシーの甥)を、傷つける人は、誰であれ(それが本人であれ)許さない』
と言わんばかりの毅然とした態度に心が揺さぶられました。
演出の田中壮太郎さんが、パンフレットに「なぜこのお芝居がマーヴィンズルームと名付けられているのか、思いを馳せていただけると嬉しいです。」と書かれていましたので、考えてみました。
マーヴィンというのは、ベッシーとリーの父親の名前です。
マーヴィンは沢山の病気を抱えて、20年間、言葉も話せず寝たきり状態で生きています。
お芝居では、ガラス越しのマーヴィンが寝ている部屋が見えるだけで、姿は一度も現しません。
時々、うめき声や、笑い声が聞こえてくるだけなのです。
(でも、存在感は物凄かったです。マーヴィンが、楽しそうに笑う時、私はベッシーやリーになって、とても幸せな気持ちになりました。岡田吉弘さんという役者さんの凄さを感じました。)
マーヴィン、それは「家族」の象徴。
時にうっとうしく、時にお荷物で、時に頼りになり、時に愛おしく、とてもとても大切な存在。
『マーヴィンズルーム』
それは、家族の部屋であり、
『私の居場所』なのだと思いました。
感想は以上になります。
まとまりのない長文になってしまいました。
申し訳ございません。
最後までお読みくださり、本当にありがとうございます。
改めまして、この素晴らしい作品に出会うきっかけを作ってくださった、北村総一朗さま、心から感謝しています。
そして、田中壮太郎さま、米倉紀之子さま、あんどうさくらさま、佐藤しのぶさま、磯辺万沙子さま、岡田吉弘さま、赤江隼平さま、屋鋪琥三郎さま、林佳代子さま、岩田翼さま、白倉裕人さま、出演されていた皆さま、スタッフの皆々さま、
本当に素晴らしい作品をありがとうございました。
「この素晴らしい舞台を観ることが出来たこと」は、私の人生の宝物になりました。
ご縁に心から感謝しています。