♪ぴこにゃんの真向勝負♪ ~鋼鉄篇~

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ロックとアイドルについて語ります

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元インディーズアイドルのマアヤ(22)は、引退から約2年後の2021年7月3日に、ライブハウスの新宿 club SCIENCEで1日限りのバンドライブ、アイドルライブを行った。

 

結論から言えば、非常に楽しむことができた場であった。同時に、アイドルのセカンドキャリアを深く考えるきっかけにもなった。

 

本稿はマアヤの熱狂的なファンである筆者の個人的な感覚に基づく内容であることを前提としている。よろしければ、読み進めていただきたい。なお、マアヤは現在「まあや」と名乗っているが、アイドルとしての屋号はカタカナの方がふさわしいため、そちらで統一する(他のメンバーも同様とする)。加えて、現役時代には年齢に10をかけた「200歳」などと称する事実上の妖精アイドルだったことを先に記しておく。マアヤの軌跡については本ブログの過去記事をご参照いただきたい。「マアヤのことすべて」シリーズや、現役の頃に所属したグループ「エルフロート」についてのエントリーで概要を記録に残しているので、併せてご笑覧いただきたい。

 

 

 

 

 

本題に入る。

 

「まやまやパラダイス復活公演」はバンド編成の1部、アイドルユニット編成の2部で構成され、非常に充実した内容となった。

 

1部はマアヤ本人が「夢」と語っていた念願の生バンドライブ。アイドルは楽曲を音源で流してパフォーマンスを披露するのが通常だが、個人として一から楽器隊メンバーを募り、リハーサルの時間を調整し、機材を扱い、音量が大きい環境で練習を重ね、本番に臨んだ。その苦労は自称・元バンドマンの私にもよくわかる。実際、マアヤはリハ初期に勝手が分からなかったとみられ、スタジオでのリハでは自身の歌が聞こえなかったと証言している。そんな中、所属していたグループ以外のカバー曲も積極的にそろえる攻めの姿勢を貫き、現役アイドル時代にかなわなかった「夢」を具現化させた。この新しい企画に敢然と取り組む胆力がマアヤの本質であり、心から敬意を表したい。

 

 

 

 

1部バンドライブのセットリストはこちら。

 

 

① 時折マーメイド (エルフロート)

② 「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの? (Juice = Juice)

③ 夏空HANABI (PASSPO☆)

④ オーケストラ (BiSH)

⑤ PAIN ~AIの証~ (エルフロート)

⑥ 星が瞬く夜に (BiSH)

⑦ ムーンエージェント (エルフロート)

 

※②にはかつて事務所の同僚だったさゆてん(旧・藍川さゆ)、⑦ではエルフロートの盟友だったミズキがゲストで参加した。

 

 

 

バンドで歌うマアヤ。本人のツイッターより(以下同じ)

 

 

ライブ内容の総合的な感想としては、「プレーがうまいバンドマン仲間のコピーバンドライブを見に行き、楽しんだ」というのに近い。カバー曲は原曲を聴いたことがないので、あるがままを受け止めた。エルフロートの楽曲については、脳裏に刻み込まれた原曲が生演奏で奏でられるさまに感慨を覚えるとともに、各メンバーが西山雄作・元プロデューサーらのペンによる緻密なサウンドを再現することに苦労している様子もあった。例えば「PAIN ~AIの証~」(作曲・石谷光)ではハイポジションで弾く必要があるギターのメインメロディーの演奏が大変そうだったし、「ムーンエージェント」(作曲・西山)ではディレイを活用した冒頭の白玉(ロングトーン)を長く響かせることができなかったりと、西山特有の変態ソングライティング(笑)との格闘の跡がみられた。同時に、腕利きのミュージシャンをそろえただけに、リズムは安定していたし、ドラムは変態的なフィルを一部簡略化した演奏でボトムを支えていたように思う(一度聞いただけだから断言はできない)。そして、「ムーンエージェント」の印象的なアウトロのギターソロは名演だった。

 

マアヤはバンドの「ヴォーカリスト」としては初の舞台とみられる。歌って踊るアイドルとは勝手が違うこともあり、パフォーマンス全体で振り付けがない歌い手としては不慣れな印象が否めなかったが、本来的に優れた歌手であることから、バンドサウンドのグルーブと同化する歌を意識して披露していたはず。高音域がやや厳しかった点を除けばブランクはほぼ感じさせず、得意の中音域で伸びやかなトーンを披露。若い人が本腰を入れて練習に励めば、短期間でもここまで仕上がるのかと再確認した。蛇足ながら、今後もバンドで歌うつもりであるならば、ビブラートを練習すればさらに良くなると思う。衣装はミニTシャツとロングスカートの合わせ技で、エルフロートの青衣装を彷彿させるシルエット。本人も意識したのではないか。

 

余談ながら、数年にわたってひとりで「エルフロートでエアギターする市民の会」を主宰してきた私としては、アイドルのライブでギタリストのプレーを見ながらエアギターするという人生初の経験を体感したライブであったことにも触れておきたい(本当に余談ですみません)。

 

 

バンドメンバー、ゲスト、観客との集合写真。マアヤは写真中央

 

 

 

 

マアヤ(左)とビニールシート越しにハートを作る中年男性(筆者撮影)

 

 

 

 

 

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2部アイドルライブのセトリはこちら。

 

 

① 時折マーメイド

② 禁断のShall We Dance

③ 無限大ファンタジー

④ 一凛哀傷歌

⑤ water tree

⑥ ハートウォール

⑦ 精霊NIGHT

⑧ PAIN ~AIの証~

⑨ ホワイトエンジェル

⑩ 奇跡の旗

 

―アンコール―

⑪ 時折マーメイド

 

 

 

 

新宿は事実上の「あきちか」と化した。

 

あきちかとは、エルフロートが本拠地とした秋葉原の地下にあったライブハウス。2020年10月をもって、新型コロナウイルスの影響などにより、エルフロートが所属するブルーフォレスト事務所ごと廃業した経緯がある。いわゆる「コロナ廃業」だ。

 

新宿 club SCIENCEのステージはあきちかと似た感覚もあり、同様の雰囲気があるハコというのもいくらかは程度は影響したであろう。それよりも、現場にいるメンツがあきちかに集まっていたファンばかりで、メンバーもそうだった……という点が大きい。

 

まやまやパラダイス2部では、マアヤ、ミズキに加え、現役アイドルであるモモ(SAY-LAももちもも)も参加した。SAY-LA運営のI-GET事務所の太っ腹な姿勢に、心から感謝を申し上げたい。ミズキ、モモ、マアヤのトリオは、2015年7月から18年4月までのエルフロートの編成であり、一般的にはZepp Tokyo単独公演で1200人を動員した「黄金時代」と見なされるころのメンツである。

 

復活公演2部ライブは、正直に言って「エルフロートそのまんま」であり、少ない人数ながら各自が大量破壊兵器のような強烈なパフォーマンスを放射する唯一無二の表現が、全盛期と寸分違わぬ形でこの世に現れた。個人的には、出囃子のSEに続く名曲「時折マーメイド」で涙腺が決壊し、2曲目の「禁断のShall We Dance」ではアマゾン川のポロロッカのように涙が逆流し、感染防止のための「無言のヲタ芸」を打とうとして打てず号泣してしまった。ライブ全般も文句なし、言うことなしのエルフロートで、振りコピ、無言のミックス、エアギターなどにより、久々に全身汗だくの状態となった。

 

マアヤが最高指導者となる前に、4年にわたってリーダーを務めたミズキについては過去の記事で詳しく触れたのでそちらをご参照のこと。2021年7月時点のミズキは普通の社会人である。同時に、昨年4月に所属グループのアンピクシープーペ卒業ライブが緊急事態宣言の発令で中止となったことを今でも気にかけていることが発言から伝わってきた。非常によく分かる。同時に、誤解してほしくはないが、「エルフロートはやはり天才ミズキのグループだったんだな」というのも再認識した。私はマアヤ、リカ、ミオのトリオ編成だった19年1月~8月こそが最強のエルフロートだったと確信しているが、その上で、ライブアクトとしての人気は、しっかり者なのに語り口がぴよぴよしており、それでいて突出したダンススキルを武器としたミズキのいた時代が頂点だった。これはおそらく、のちのリーダーであるマアヤやリカの責任ではなく、受け手にとっての問題なのだろう。

 

まさかの参加となったモモ。もう、完全にモモだった。ツイッターで複数回触れているが、モモのパーソナリティーは野球選手のレジェンドでいえば長嶋茂雄や新庄剛志のような浮世離れした感覚と共通するものがあり、今回もMC中に脈絡のない謎のダンスを披露。マアヤから「踊らないで!」みたいに制されていたが(笑)、まったく気にする様子がなかった。さすがモモちゃん。大物である。現役の選手で例えるならば、米メジャーリーグのロサンゼルスエンゼルスに所属する大谷翔平投手が指名打者として試合に出場し、「これが本当の二刀流じゃああああ!」と宮本武蔵リスペクトでバットを2本持って打席に入り、2打席連続でホームランをかっ飛ばした……的な「ありえなさ」に近い(?)。

 

そして、マアヤ。ライブの主催者であり、元エルフロートのメンバーの結集を企てた主犯(笑)でありながら、ライブの進行をいくらかミズキに任せるという「あの頃のエルフロート」を意図した演出を巧みに混ぜ込んでいたのはさすがだった。もともと非常に頭の回転が速い人であり、今回の復活ライブでも多くの困難があったはずだが、結果として大成功させたのは、そのストイックな性格に由来するだろう。パフォーマンスは他の2人も含めて全盛期と遜色のない内容であり、再度言うが、あきちかそのもの。言うことなし。3年分のノスタルジーも加味され、極めて印象的な公演となった。汗だくライブ。これぞエルフロートだ。

 

 

左からモモ、マアヤ、ミズキ。事実上のエルフロート再結成となった

 

 

 

 

 

 

以上を踏まえた上で、「この感覚はどれだけ続くのだろうか」ということを考えた。2021年7月現在では、妖精アイドルのエルフロートによる魔法は健在だった。ただ、これが10年、20年と続くものであるかどうか。

 

冒頭に記した通り、アイドルのセカンドキャリアについては議論の余地がある。モモは現役だが、本稿の主題であるマアヤ、そしてミズキは既に最前線から退いた引退アイドルである。要するに一般人。勤め人だ。事務所が消滅した事情も含め、今後も音楽活動をする場合、まあ、いろいろと難しい話もあるのではないかと察する。マアヤは明確にステージへの意欲を示しており、アイドルをするもよし、バンドのヴォーカリストとして新たなキャリアを始めるもよし、とファンとして思う。個人的には、頭脳明晰な人だからこそ、学業や読書に専念する環境があっても良いのではないかと思うが、本人が決めるべきことなのでこれ以上は触れない。

 

そして、一般論で言って、アイドルはバンド界隈と比較して現役時代が短い。バンドなら解散しても出産しても再起することが容易な時代となったし、良いことだと思う。一方で、アイドルの旬は短いと見なされている。自然な時間の流れとして、結婚して子どもが生まれた後に、ステージに戻ってくることができるかどうか。客観的に、現状ではなかなか厳しい。現状の日本社会において、アイドルが40歳、50歳になってもライブハウスでステージに立つことが想定されていないのは否めない。

 

私は、この風潮を変えたい。

 

松田聖子(59)は今でも「聖子ちゃん」である。実力と人気とメジャーレーベルの後押しがあってこそかもしれないが、それでも受け手である我々自体が「聖子ちゃん」をリスペクトし、認識しているところに鍵がある。インディーズ界隈でも、まりえ(40)、葉山あゆり、Coco海里といった偉大な先駆者が既に存在する。

 

エルフロートのメンバーは、生涯現役であってほしいと思っている。それだけ素晴らしいグループだったから。もちろん、セカンドキャリアは自分で悩み、つかんでいくしかない。熱狂的なマアヤ支持者としては、どんな道であっても、彼女を応援するスタンスであることは言うまでもない。そういえば、エルフロートの面々は妖精なので人間の10倍の寿命を誇る。マアヤは300歳、400歳、500歳、1000歳でも「ついてきてね!」とドヤ顔ができる存在であり続けるのではないか。そういう未来予想図を描いている。