「・・資格？」

真緒はポツリと言った。

「なんでもいいのよ。何か取れると自信にもなるし。これからの仕事に役立つかもしれないし。」

「なんか。考えもしなかったです。あたし・・真太郎と違って学校の成績もあんまりよくなかったし、」

「でも英語とフランス語ペラペラじゃない。それだってすごいことよ。」

「それは生活のために・・」

「もう。自己肯定感低いのねー。」

紗枝は笑った。

「は？」

「天下のホクトGのお嬢さんなのに。なんでもできるのに。もったいないわよ。ねえ、このプロジェクト終わったら。どうするの？」

紗枝は身を乗り出した。

「や・・それは・・」

起業したいです

はこの場でさすがに言えなかった。

「また・・事業部のバイトかな、とか・・」

とごまかすと

「ホントもったいないわよ。確かに事業部の仕事も重要かもしれないけど。でもあなたにしかできない仕事はあるわよ。・・で。野々村さんは・・これ終わったらまたこれまでの仕事に戻るのかしら、」

いきなり初音のことを聞かれ、ドキっとした。

「・・さあ・・」

目を逸らした。

「ああいう人にウチに来てもらいたいなーって。実はちょっと上司に相談してたのよね・・。　まあ彼もやりたいこともあるだろうしもちろん無理強いはしないけど、」

「え、」

意外な展開だった。

「あの才能は。この世界で生きるわよ。絶対。NCも不況や日本の経済不振もあって。今後新しく展開していくの難しい所なんだけど。今ある施設を発展させていくアイデアが必要だし。彼の確かな企画力はものすごい価値がある、」

真緒の心の中としては

がーーーーーーん

という感じだった。

そうなのだ。

初音はド素人の自分と企業するような、そんな人材ではないのだ。

きっと高野楽器からも熱望されているだろうし、ホクトだって逃したくない・・

「・・ですよね、」

真緒はふっと笑った。

自分の席に戻ってファイルを広げたが、もう彼のことで頭がいっぱいになってしまい

『起業のことは忘れて下さい』

と何度メールを打とうかと思った。

しかし。

どうしても・・できない！！

あたしだって・・諦められない！！

思わずデスクに突っ伏してしまった。

それは。

仕事のパートナーとしての彼を、でもあり

一人の男性としての彼を、でもあった。

紗枝が初音をNCに、と考えていることを知りまたまた真緒は自分の浅はかさを思い知りますが。どうしても・・

にほんブログ村

恋愛小説ランキング

↑↑↑↑↑

読んでいただいてありがとうございました。よろしかったらポチお願いします！

小説（森野日菜） - カクヨム

kakuyomu.jp

　で過去のお話を再掲しております。こちらもよろしくお願いします。

Altair(17)