「そ・・そんなに笑わないでください!」
「いや・・もう・・想像の上を行くなあって、」
初音は顛末を聞いて笑いが止まらなかった。
「だって!2月の青森ですよ?寒いだろうなあって思うじゃないですか!もう飛行機に搭乗する前にキンコンで引っかかっちゃって・・大変だったんですから!」
それにはまた笑いがこみあげてしまい、大きな声で笑ってしまった。
「いったいどれだけ・・」
恥ずかしいと思いながらも。
彼がこんな風にあけっぴろげに大笑いしているのを初めて見た気がしてそれはそれで少し嬉しかった。
すでに初音が詳しく資料などを先方に送ってくれていたおかげで見学や担当者からの話はすぐ詳細に入ることができた。
「う・・っわ、夢みたいにきれい・・」
真緒は色とりどりの模様が入ったグラスを手に取って思わずつぶやいた。
窓からの日差しが入るところに置くとそのカラフルな影が長く映る。
「季節感あるものも多いので、季節ごとのメニューに使うのもいいですね。グラスだけじゃなく、プレートも素敵。」
「これなんかハーブティーやペリエなんかを淹れるグラスにいいですよね。さわやかで、」
初音もその美しさに感動していた。
「大量注文になればお値段の方もそれによって見積もりお出しします。日本のレストランやカフェではお水は基本タダでしょう。タダのものを淹れるのにこだわったグラスを使う人はおりませんから、」
担当者は笑った。
「このカフェのコンセプトはゆったりした時間を過ごしていただくための『贅沢』なんです。もちろんグラスや食器は割れたりするでしょうしできるだけ廉価のものを、となってしまいそうですけれど。お客様に少しでも喜んでいただくことが第一なので、」
初音は穏やかに言った。
2時間ほど滞在して1件目の工房をあとにした。
「まあ。グラスなんかなんでもいいじゃないってぼく個人は思ったりしなくもないですが。でもそういう『贅沢』は心が豊かになります。もちろんそれはお金がないと得られないものかもしれませんが。でもホクトというバックグラウンドがあるからこそ、のお客様への還元は素晴らしいと思うんですよね。なんか普段の生活の真逆をやっているようで。時々自分でもおかしくなっちゃうんですけど、」
初音はタクシーを待つ間、そう言って苦笑いをした。
結局お金なんですよね。
真緒は天音が言っていたことを思い出す。
確かに生活は大変だったと思うけれどこの人はたくさんのお金を得たいというよりも心の豊かさを大事にしている。
上からでもなんでもないけれど。
お金に困ってこなかった自分は本当の『贅沢』なんか全然わからなかった。
初音の出自を知ってしまった今、真緒は複雑な思い出彼の言葉を聴き入ります
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