「こんなおれでも人で変わるんだから。 人生、おもしろいよなって思うよ、」
成は外の景色を見ながらポツリと言った。
さくらは彼の思わぬ『告白』に押し黙ってしまった。
「え? なんか思いつめちゃった??」
成はそんな彼女をからかうように言った。
「・・どんなに平穏に暮らしているって人にも。 色々あるなって。 何も抱えてない人・・いないなって。」
さくらはつくづく言った。
葦切の過去を知った時にも同じようなことを思った。
「そりゃ。 誰しも何かしらを背負って抱えてる。あの人は順風満帆で羨ましいって思える人でもね。少なからずある。」
成は笑った。
「だから。 カジだって何も絶望することない。これからどうにでもなる、」
さくらは成の言葉に小さく頷いた。
「・・どう、ですか?」
晴菜は加治木の顔色を窺うように尋ねた。
「んー・・。」
腕組みをしたまま彼は目を閉じた。
しばしの沈黙。
「音に自分が追い付いてないってうか・・」
「は?」
「魂だけ走ってる感じ、」
晴菜はその説明を聴いてどんどんと身体が傾いだ。
そこで
「晴菜ちゃん、この前この辺から走りすぎだよって言ったじゃん? なんかね、『もう少し、もう少しだ!』って気持ちがすっごく出ちゃってるわけ。 早く終わらせたいって感じで。 そうじゃなくて。 『あたしはまだまだ弾くわよ!』くらいの余裕が欲しいんだよね。全体的に落ち着きがないんだよね。 曲が盛り上がってくるところは速く弾くところじゃないよ。 もっとじっくり聴かせる気持ちで、」
傍で見ていた成が晴菜に言った。
「あ・・ハイ。 なんだろ、終わりに近づくとだんだん焦っちゃって、」
彼女はようやく理解をしたようだった。
「じゃあもう一回最終章だけやってみようか、」
「ハイ、」
晴菜の希望もあり彼女の指導を加治木に任せることになったが、まだまだ自分の想うところをうまく説明するのが苦手だった。
「なるべく具体的に。 抽象的だと生徒が理解できない。 数学みたいに解き方や答えがあるわけじゃないから難しいけど。 でも、指摘するポイントは絞って。」
彼女のレッスンが終わった後、成は加治木にそう言った。
「・・はい、」
何となくうつむきがちな彼に
「だいじょぶだいじょぶ。 おまえの言いたいことはわかる。 晴菜とどんどんコミュニケーション取ってお互いの性格もちゃんとわかってくれば。どうやって教えていったらいいかわかってくる、」
肩をポンと叩いた。
「いや。 彼女はだいたいおっちょこちょいで人の話をあまり聞いてないところもあります。取りあえず人の話を聞け!というのはどう注意したらいいのかと思って、」
加治木がシレっとそう言ったので成はややコケながら
「いや、おまえがおれの話ぜんっぜん聞いてねえし!」
と笑った。
どんな人でも何かしらを抱えている・・とさくらはつくづく思います・・
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