Departure(19) | My sweet home ~恋のカタチ。

My sweet home ~恋のカタチ。

せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「よう、」

 

強い目力で志藤から声を掛けられ

 

「こ、こんばんわ・・」

 

奏はものすごく緊張した。

 

手を洗って戻ると、

 

「ちょっと、いい?」

 

志藤に奏だけ隣の和室に連れて行かれた。

 

「な、なんなの? パパ・・」

 

ひなたが心配そうに言うと

 

「おまえは関係ない。 入ってくんな。」

 

無機質にそう言われ、奏はさらに緊張MAXだった。

 

 

箱根の旅行計画のことは志藤も知っていることは南から聞かされていた。

 

そのことでめちゃくちゃ叱られるんじゃないかと覚悟をした。

 

そっと畳の上に座ると

 

「座布団あるんやから座ればええやん。 ほんまにもー、真面目すぎ・・」

 

逆に怒られた。

 

「はい・・」

 

上目遣いに志藤の顔色を窺ってしまった。

 

「明後日やな。 いよいよ、」

 

「あ、はい。」

 

いきなりウィーンへの出発のことを切り出されて少し戸惑う。

 

「設楽が送り届けてくれるんやて?」

 

「はい・・ なんか。 今、日本の仕事で大阪にいるんで・・ ぼくのスケジュールに合わせてくれて一緒にウィーンに行ってくれることになりました・・」

 

「もうめっちゃ心配なんやろな、」

 

「そう、でしょうか。」

 

志藤が笑顔になったので少し緊張がほぐれた。

 

「おれは。 留学の経験ないし。もうなんも言えへんのやけど、」

 

そう前置きをして

 

「前にも言うたけど。 そこに『住む』ことが大事やからな。 今までみたいに夏休みの間だけって感じじゃなくて、そこに住んで。生活して。勉強して。ウィーンの音楽を体感する。 最初はうまくいかんかもしれん。 でも。 生活に慣れたらきっとピアノも伸びてくる、」

 

何を言われるかドキドキしたが。

 

志藤の顔はとても優しく穏やかだった。

 

「ホクトの仕事の方も。オファーはあるんやけど。 でも。 当分は止めておくから。 ピアノに専念できるように、」

 

「・・ありがとうございます、」

 

「おまえはしっかりしてるけど。 ちょっと気が小さいトコもあるし、気にしいやし。 心配やけど、」

 

そんな風に言われて

 

「慣れなくて、大変なこともあると思いますけど。 でも。 ぼくは『ひとり』に慣れてます、わりと。 自分がやりたいことをやりたいだけできるようになって。 これ以上のことはありません。 自分のできるかぎり。 頑張ります。」

 

ようやく笑顔になった。

 

「・・ま。 もうひなたのことはめんどくさいから。 言うのやめるわ。 ほんまめんどくさいから、」

 

いきなりひなたのことを振られて

 

「え、」

 

ぎょっとした。

 

「ほんま。 どうでもええわ。」

 

志藤は鼻で笑って、奏を見てまた笑った。

 

少し困ってしまったけれど、志藤の目の奥はとても優しかった。

 

 

わかりずらくも志藤は奏のウィーンでの生活を心配しておりました・・

 

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