「・・ま。 あたしがこんな風に思えたのも。 あなたの奥さんのおかげかも。」
紗枝は高宮に向いてそう言った。
「は??? 夏希?」
驚いて思わず声が大きくなった。
「彼女のおかげで。 あたしもだんなさまを大事にしようって。 改めて思えたし。 彼は私の仕事を一番に優先してくれるけど、あたしも・・そういう彼を生涯大事にしようって思えたから、」
紗枝は笑顔でそう言った。
「・・な、夏希が? 何を・・」
「あたしも。 かわいい奥さんになるために。 がんばろ、」
「かわいい・・はちょっとどうかと思うで、」
志藤から横やりが入って
「いちいち一言が多い、」
紗枝は志藤の腕を叩いてまた笑った。
そんな時。
高宮はまた母から電話を受けた。
「夏希さんから聞いたけど。 別に何ともなかったんですってねえ、」
「え、」
彼女が母とそんな会話をしたことを知らなかったのでちょっと驚いた。
「夏希さんが忙しいんじゃないかしら。 もっとゆっくりすればいいのに。 仕事は子供生んでからでもできるでしょって言ったんだけど、」
夏希が事実を母に告げず、理不尽な進言をされてもおそらくいつものように軽くいなしたのであろうと想像するだけで胸が熱くなった。
「・・心配してくれるのはありがたいけど。 大丈夫。 夫婦の事はおれらで解決するし。 彼女は・・ホント、一生懸命おれのこと考えてくれてるから、」
高宮はそう母に言いながらも夏希への思いが溢れそうになる。
「え? あー、電話。 あったけどー。 ま、でも別に絶望的でもなかったし。 あんまお義母さんに心配かけてもねって思っただけだよ。 だいじょぶだいじょぶ。 とにかく隆ちゃんが身体に気をつけてくれたら。 今はさ、人工授精?とか? いろいろあるらしいよ。 もし、ほんっとに切羽詰ったら、そっち考えてみるとか。 一応あたしもまだ26だし。 もちょっと様子見ようよ、」
家に帰って夏希に話すと、いつものように力の抜けた感じで笑いながらそう言われた。
「・・ごめん。 オフクロに責められたんじゃないかって、思って。」
「え?全然! そんなことないよ。 お義母さん、ほんといじわるとかじゃなくて、心配してくれてるもん。 最後は『そうなの? じゃあ、ちゃんとご飯作ってあげてね』って。 隆ちゃんのことほんと心配してるんだなーって。 だから、」
夏希はわんこたちと戯れながら明るく笑った。
「・・・そっか。 ありがと、」
彼女のそういう考え方がいつも嬉しい。
「成田さんがね。 結婚したんだって。」
高宮はカバンをソファに置きながら言う。
「え、そーなの? へえええ。 そうなんだあ。」
夏希も驚いた。
「で。 夏希のおかげでダンナさんを大事にしようって改めて思えたって言ってたよ。」
「え? あたし?」
びっくりして立ち上がった。
「うん。 何か、話したの?」
それにはしばし固まってうーーんと考えた。
そして
「え? なんか言ったかなあ・・・。 だいたいあたしが成田さんにそんなすごいこと言えるとおもう???」
大真面目な顔でそう言った。
その顔があまりにおかしくて。
高宮は吹き出した。
「ちょっと、何笑っちゃってんの! え? どーゆーこと??? ぜんっぜんわかんない!」
彼女がそんな風に言えば言うほどおかしさがこみあげてきてソファに転がって笑ってしまった。
「ちょっと! 隆ちゃん! もーーー」
少しずつ。
いろんなこと乗り越えて。
最後は結局
しあわせ
で、解決できる。
彼女といるだけで。
いつもいつも高宮は夏希のこの明るさに救われてます。そしてその幸せをかみしめて・・
短編でしたが読んでいただいてありがとうございました。
あとのことはのちほどまたお知らせさせていただきます。
(^.^)
人気ブログランキングへ
↑↑↑↑↑
読んでいただいてありがとうございました。よろしかったらポチお願いします!