「料理だって・・・別にうまくもないし。 ほっときゃ、掃除だっていいかげんだし。 10年前に買った靴、平気で履いてる。 寝起きの顔なんか・・・ほんと・・・ビックリするくらいだし。 ジャージでコンビニに買い物行っちゃって・・・」
絶対に止めたかったのに
涙が止まらない。
「ホント。 そんなイイ女でもなんでもないですから。 あの人。 ただ・・姉ちゃんには返しきれないほどの恩をもらっちゃってるし。 絶対に一人前になって・・・姉ちゃんを幸せにしてやろうって・・・思ってたから。 だけど・・おれじゃあ幸せにできなんだよなって・・ずっと・・・」
「有吏・・・」
子供みたいに無造作に手で何度も何度も涙を拭う彼に
結城の心も揺れた。
有吏は静かに頭を下げた。
「・・・姉ちゃんを。 よろしくお願いします。 ・・・おれが・・できなかった分、幸せにしてやってください、」
涙が床にポタっと落ちた。
「有吏! よく言った!!!」
いつの間にかみんな二人の周りを囲んでいて、有吏は南にポンと背中を叩かれた。
「は・・・」
涙でぐちゃぐちゃの顔をあげた。
「・・・責任、重大だぞ。 有吏の分まで幸せにしなくちゃ、だもんな。」
玉田も嬉しそうに頷いた。
「もぉ~~~、ほんといつの間にかに聞いてるのとか、やめてくださいよお・・・」
有吏はもう格好悪くて
そんな風に言って当たりちらした。
「よくわかんないけど! 雨降って・・・地かたまる??でしたっけ? そんな感じで!」
夏希がいつものよく通る声で喜んだ。
「珍しく合ってるし、」
八神も笑った。
「こりゃ、飲むっきゃないか。 ね、南ちゃん、」
真緒が南の腕を取った。
「そりゃ。 飲むっきゃないでしょう!」
社長が倒れてからの社内の混乱の余波で
事業部もずっと余裕なくみんな忙しく仕事をしていた。
こんなにもみんなでまた明るく笑えるのも久しぶりだった。
「・・・3ヶ月間、休職、ですか・・・」
あゆみは昼休みに結城から電話を受けた。
「うん・・。 斯波さんが取り計らってくれて。 クビは免れたけど。 迷惑を掛けてしまったからね。 ちょっと休むことになる。」
「そう・・ですか。」
「その間・・・有吏が行ってるバイト先で仕事させてもらおうかなあって、」
「は? あの・・イベントの舞台設置とかの・・・会社???」
イキナリのことで驚いた。
「肉体労働だけどね。 今までそういう仕事してきたことなかったし。 こういうときでもないと経験できないし。 身体が良くなったらやらせてもらおうかと思って。」
明るく言う結城だったが
「そんなこと・・・結城さんにできるんですか?」
あゆみは思わず言ってしまった。
「やっぱさ。 汗水垂らして働くのが基本だろ?」
彼がどんどん変っていく様子が手に取るようにわかって
あゆみは嬉しそうに電話口で微笑んだ。
結城はあゆみのために生まれ変わろうと思います・・
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