結城はひとつ大きなため息をついた。
そして
「・・入院中、ずっと考えてた・・・」
静かな口調になって話し始めた。
「・・・プロポーズのことは。 なかったことにしてくれないか、」
その突然の告白に
あゆみは驚いて彼を見つめた。
「・・勝手に・・・プロポーズして。 きみの気持ちを振り回しておいて。 本当に・・・申し訳ないんだけど。 何だかもう自信がなくなってしまって、」
結城は彼女から目をそらすように弱弱しくそう言った。
「・・・こんなおれよりも。 あゆみさんのことを幸せにしてくれる男はいるんじゃないかって。 おれはきみには相応しくない・・・・」
こんなに衝撃的な話なのに
あゆみは不思議に思ったほどのショックを受けていない自分に
驚くほどだった。
それよりも
信じられないほど彼が急速に『自信』を失っていることの方が
心配でたまらなかった。
「・・・退院したと言っても。 いちおう手術もしたんです。 身体は疲れていると思うんで。 ・・・無理をしないで休んでください。 あたしは・・・これで失礼しますから。 ・・・ウサちゃんはもう少しウチで預かります、」
彼の言葉への答えはしなかった。
落ち着いた様子でそう言って
あゆみは静かに帰り支度を始めた。
「なんだ、帰ってたんだ。」
有吏が風呂から出ると、あゆみはテーブルの上にウサギを遊ばせて、それを肘をついた姿でボーっと見ていた。
結城が退院したらしい、とあゆみから聞いて
そのまま今日は帰らないと思っていた。
「・・・結婚。 なかったことにしてほしいって。」
あゆみはボソっと言った。
「は・・・・」
タオルで頭を拭く手を止めて有吏は固まった。
「ね、見て。 カワイ~~~。 この姿。」
あゆみはウサギが鼻をふごふごさせる姿を見て、ふふっと笑った。
しかし有吏は
「って! 呑気に笑ってんじゃないよ! いいのかよ、ソレ!!!」
テーブルをバシっと叩いて彼女の前に座った。
「・・うーん・・・。 ひょっとしてこうなるかも、みたいな予感はあったから・・・・」
あゆみはウサギを抱っこして頭をナデナデした。
おいおい
どーかしちゃったんじゃないだろうな・・・
有吏は姉が一気に心配になった。
結城からプロポーズの撤回を言い渡されてしまったあゆみですが・・・
↑↑↑↑↑↑
読んで頂いてありがとうございました。
ポチっ! お願いします!
人気ブログランキングへ
携帯の方はコチラからお願いします