僕は親友なのに、清水さんの家族や親戚に会った事もなかったんです
当然向こうも僕の事なんて知らない…
そこには確実に、芸人と一般人の見えない壁がありました
清水さんは壁を作ってなかったのですが、僕の中には確実に入れない壁がありました…
今回の事でその溝が余計広がってました
周りは僕の事を知らない、知らない人からしたら、それこそホームレスと言われても仕方ない見た目…
清水さんに対する負い目もありました…
僕の事を誰も知らない、知ってる人がいたとしても
「どのツラ下げてきとんねん」「なんであのホームレス来てるねん…」
と思われてるんじゃないか…
誰も僕の事なんて知らないのにね
親友が亡くなったのに、哀しさよりもまず、そういう事を考えてしまう、汚れた自分がいました…
会場についたら普通に迎え入れて頂き、清水さんの遺体を見せて頂く事が出来ました
あれ以来自分から清水さんに会いに行けなかった男が、久しぶりに会いに行ったのは、生きている清水さんではなく、清水さんの遺体でした…
亡くなっている清水さんを見ても、会っていなかった為か、亡くなっているとピンと来ず、涙が出てきませんでした…
亡くなった親友を見ても涙も出ない…
自分の中にこんな冷たい部分があったなんて…
しかし、ふと遺品の、清水さんがよく着ていたジャンパーなどを見ると、現実なのだとわかって涙が止まらなくなりました…
ドンドン隠していた想いが溢れ出てきました…
なぜ、清水さんともっと早く和解しなかったのか…
なぜ、もっと清水さんと連絡を取らなかったのか…
なぜもっと…
後悔の涙が止まりませんでした…
自分の醜さが嫌になりました
あの人が、清水さんが心配かけたくないと言っていた親御さんか…
あの人が、芸人仲間が俺よりも仲良くなってまうと嘆いていた、しっかり者の弟さんか…
清水さんと親友のはずの僕は、清水さんの家族を見た事もなかったんです
清水さん…
初めて清水さんの家族を見れたよ…
清水さん…
別れた奥さんらしき人が
「ごめんねぇ!」
と、清水さんに抱きついて泣いてくれているよ…
あんなに清水さんに会ったら
「このカス」
と、ボロクソに悪態ついていた和泉修さんが、人目もはばからず泣き崩れていてくれてるよ…
清水さん良かったね…
たくさんの人が泣いてくれているよ…
メッセンジャーの黒田さんが
「兄さん、芸人辞めたい辞めたい言ってたけど、辞めんで良かったやろ!
辞めてたらこんなたくさんの人来てくれへんかったで!」と言っていました…
ほんまやね…
社員さん、芸人さん、色々な人が清水さんに会いにきてくれているよ…
清水さん、良かったね…
良かった?
本当に?
いや…
これで良いはずがない…
誰だって、死んでからでなく生きている時に優しくして欲しいはず…
僕は、清水さんが生きているうちに優しくする事が出来ませんでした
嫌な思いばかりさせてしまいました
そして、清水さんと親友のはずの男は、清水さんの事を何も知りませんでした…
家族がどんな人かも知らず、家族にも友達と知られず、あまりにも清水さんとの距離が遠すぎて、清水さんに抱きついて泣く事も出来なかったんです…
清水さんと苦楽を共にしてきた芸人さんたちの前で、こんな冷たい、無関係な人間が、どの面下げて清水さんに抱きつけるのか…
ただただ、後悔の涙を流し続けました…