清水キョウイチ郎さんと和解し


少しずつ、少しずつ

もつれていた糸がほぐれてきました


清水さんとだいぶいい関係に戻ってきたけど、もっといい方法はないものか


そこで、素晴らしいアイデアを思い付きました。


当時僕が主催していた「ぴかぴかライブ」というお笑いライブを36日の僕と清水さんの誕生日にやって、そこに清水さんにゲスト出演して頂き、僕とユニットで漫才して貰うという企画



初舞台はR-1ぐらんぷりではありますが、実はその前に知り合いの結婚式で清水さんとユニットで、漫才した事があるんです。


僕が下手くそなボクシングを見せて、清水さんが突っ込むというのをアドリブでやって、ドッカンドッカンウケて、芸人さんってやっぱり凄いなと思った事があります。


僕みたいな素人をイジッて笑いを取る技術も凄かったけど、やっぱり舞台に上がった時の華が違ったし、誇らしかったのを覚えています。



36日のぴかぴかライブではパンチドランカーの僕と、ストップ病の清水さんで漫才して、清水さんが途中で止まってもうたり、僕が頻繁にネタを忘れる漫才で、ユニット名は

「ドランカー」

にしましょうと、清水さんにその企画の話をしたら

「ええなぁ!おもろそうやん!

と言ってくれました。



そして、ある日清水さんから電話がありました。

「近いうちに高木の出てるお笑いライブ見に行くわ!


僕らの誕生日ライブに向けて、僕らの関係は順調に回復していきました。













しかし




 

 









その一週間後に清水さんは亡くなりました













肺血栓だったそうです




芸人の孤独死



 

そして、親友が亡くなった事を、僕は知りませんでした。


僕と清水さんが仲良い事を知っている方が僕に

「清水さん亡くなったって、ほんまですか!?」

と電話してきた事で初めて知りました。


親友だから知っていて当然と思ってくれたんですね

 

親友のはずなのに、亡くなった事を全く知らないばかりか、誰からも連絡が来なかったんです。



そう、どれだけ

「親友」

とイジられようが、世間の評価は芸人と一般人

連絡など来るはずがありませんでした。


僕と清水さんの立場の違いと、関係の薄さを痛感しました。


そして、清水さんとの距離が開き過ぎて、突然過ぎて

「清水さんが亡くなったと言われても」

ピンときませんでした。



親友のはずの人の告別式の場所や時間を、自分で調べて、誰にも呼ばれる事なく、勝手に行きました。


親友が亡くなってるのに、行くのを迷いました。


本当に行っていいのかと、コソコソと行きました。



僕は親友なのに、清水さんの家族や親戚に会った事もなかったんです。


当然向こうも僕の事なんて知らない


そこには確実に、芸人と一般人の見えない壁がありました。


清水さんは壁を作ってなかったのですが、僕の中には確実に入れない壁がありました


今回の事で、その溝が余計広がってました。




周りは僕の事を知らない、知らない人からしたら、それこそホームレスと言われても仕方ない見た目

 

清水さんに対する負い目もありました


僕の事を誰も知らない、知ってる人がいたとしても

「どのツラ下げてきとんねん」

「なんであのホームレス来てるねん

と思われてるんじゃないか

 

親友が亡くなったのに、哀しさよりもまず、そういう事を考えてしまう、汚れた自分がいました


 

会場についたら普通に迎え入れて頂き、清水さんの遺体を見せて頂く事が出来ました。

 

あれ以来自分から清水さんに会いに行けなかった男が、久しぶりに会いに行ったのは、生きている清水さんではなく、清水さんの遺体でした

 

亡くなっている清水さんを見ても、会っていなかった為か、亡くなっているとピンと来ず、涙が出てきませんでした



亡くなった親友を見ても涙も出ない

自分の中にこんな冷たい部分があったなんて

 

 


しかし、ふと遺品の、清水さんがよく着ていたジャンパーなどを見ると、現実なのだとわかって涙が止まらなくなりました






ドンドン隠していた想いが溢れ出てきました

 

なぜ、清水さんともっと早く和解しなかったのか


なぜ、もっと清水さんと連絡を取らなかったのか



なぜもっと

 

 

 

 

後悔の涙が止まりませんでした






   


自分の醜さが嫌になりました。



 








あの人が、清水さんが心配かけたくないと言っていた親御さんか


あの人が、芸人仲間が俺よりも仲良くなってまうと嘆いていた、しっかり者の弟さんか




清水さんと親友のはずの僕は、清水さんの家族を見た事もなかったんです。






清水さん

初めて清水さんの家族を見れたよ



清水さん

別れた奥さんらしき人が

「ごめんねぇ!

と、清水さんに抱きついて泣いてくれているよ



あんなに清水さんに会ったら

「このカス」

と、ボロクソに悪態ついていた和泉修さんが、人目もはばからず大泣きしてくれているよ



清水さん良かったね

たくさんの人が泣いてくれているよ



 

メッセンジャーの黒田さんが

「兄さん、芸人辞めたい辞めたい言ってたけど、辞めんで良かったやろ!

辞めてたらこんなたくさんの人来てくれへんかったで!

と言っていました

 

 

 

 

ほんまやね

社員さん、芸人さん、色々な人が清水さんに会いにきてくれているよ… 


清水さん、良かったね













良かった?

本当に?

 

 

 

 

 

 

 


 

いや

これで良いはずがない



誰だって、死んでからでなく生きている時に優しくして欲しいはず



僕は、清水さんが生きているうちに優しくする事が出来ませんでした



嫌な思いばかりさせてしまいました。



そして、清水さんと親友のはずの男は、清水さんの事を何も知りませんでした



家族がどんな人かも知らず、家族にも友達と知られず、あまりにも清水さんとの距離が遠すぎて、清水さんに抱きついて泣く事も出来なかったんです



清水さんと苦楽を共にしてきた芸人さんたちの前で、こんな冷たい、無関係な人間が、どの面下げて清水さんに抱きつけるのか


ただただ、後悔の涙を流し続けました…