「あんぱん」第74回
第15週「いざ！東京」
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メイコ） フフフフ。嵩さんの
漫画、何べん読んでも面白い。
このミス高知、お姉ちゃんみ
たいや。
のぶ） おっちょこちょいの向こ
う見ずって言いたいがやろ。
メイコ） そのバッグも
おっちょこちょいで？
のぶ） うち、
またやってしもうたがよ。
（修理をする）
のぶ） よし！ 出来た。
（カメラを手に取る）
メイコ） お姉ちゃん、
カメラ仕事で使うが？
のぶ） 明日から東京出張やろ。
せっかくやき、次郎さんと
一緒に行きたいなと思うて。
今日からまた練習や。
メイコ） そう。
のぶ） うん。
メイコ） えいねえ。
あの…お姉ちゃん。
のぶ） ん？
メイコ） うち、好きな人が
おるがやけんど…。
のぶ） うん。けんど？
メイコ） その人はうちのこと、
女として見てくれんが。
のぶ） メイコはその人に、
どういてほしいがで。
メイコ） 振り向いてもらいたい。
のぶ） 振り向いてもらえたら？
メイコ） お嫁さんになりたい。
のぶ） お嫁さんになれたら？
メイコ） 決まっちゅうやろ？
その人と、幸せになるがやき。
のぶ） 幸せになれるか
どうかは、分からんで。
メイコ） え？
のぶ） 幸せになるかどうかより、
この人とやったら、不幸になっ
てもえい。それが…本当に好き
やということやないろうか。
行ってきます。
（のぶを目で追うメイコ）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（メイコが闇市にやって来る）
（ガラクタ売りの店番をして
いる健太郎）
健太郎） ああメイコちゃん。
また来てくれたとね。
メイコ） どうも。
健太郎） 柳井君やったら、
今日はおらんちゃけど…。
メイコ） 知っちょります。
のぶ姉ちゃんに聞きました。
健太郎） うん。休みの日も
忙しそうっちゃんね。
じゃあ、メイコちゃんは、
何しん来たと？
メイコ） あ…たまたま
通りかかって…。
健太郎） ああ～そげんね。
まあ、ゆっくりしていきぃ。
どうぞどうぞ。
メイコ） はい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
健太郎） こん人とだったら、
不幸になってもいい？
メイコ） のぶ姉ちゃん、次郎
さんのこと、今はそんなふう
に思うちゅうがやなって。
健太郎） 次郎さん？
メイコ） のぶ姉ちゃんの、
亡くなった旦那さんです。
健太郎） ああ…。そげん旦那
さんば思いよぉとやったら、
柳井君の恋は絶望的やね。
押しても、引いても、どげん
もこげんもならんったい。
（ため息）
メイコ） あの…健太郎さんにも、
そういう人おりますか？
健太郎） え？
メイコ） 不幸になってもえいき、
一緒に、おりたい人。
健太郎） い、いや…いやはや、
俺は、戦争で死にかけて、や
っとの思いで帰ってきたけん、
どうせやったら、幸せんなり
たかよ。せっかく生きとっち
ゃけん。幸せにならんと意味
なかろうもん。
メイコ） ですよね。
健太郎） うん。あっ、そっか…。
メイコちゃんがここん来た訳
分かったばい
メイコ） えっ？ あ…。
健太郎） ヘヘッ。こん前、「素人
のど自慢」が好きって言いよっ
たけん、聴きに来よったっちゃ
ろ。もうすぐ始まるけんね。
あ～あ～なるほど。
康太） 健ちゃん、健ちゃん！
大ごとや！
健太郎） どど、どげんしたん？
康太） ここの元締めがショバ代
取りに来る。
健太郎） また来たと？
あ、あの…。
健太郎） ああ、それ、あげる。
持ってって。ごめんメイコ
ちゃん、またね。
メイコ） あ…また。
健太郎） ごめん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜編集室＞
東海林） いよいよ明日、東京
入りや。岩清水、代議士先生
の、資料集めてきたか？
岩清水） はい。
東海林） 東京には、３泊の強行
軍や。無駄にしてる時間ない
きにゃあ！
のぶ） はい。
岩清水） 今回は全部で、３人か
４人、取材したいと思うちょ
ります。僕はまず、この人に
取材したいがです。
東海林） 「ガード下の女王」、
薪鉄子か。婦人代議士は、
時代の象徴やきにゃ。
岩清水） はい。
嵩） ガード下って、有楽町の、
高架下のことですか？
東海林） お前以外だ～れも
東京行ったことがないが
やき、分かるか。
嵩） あ、そ…そうですよね。
東海林） ハハハハハ。
岩清水） 多分、そこにおるが
じゃないですか？
のぶ） どういて「ガード下の
女王」って、呼ばれゆうが
でしょうか。
岩清水） 活動拠点が、ガード
下らしいがです。もともとは、
高知の旧家に生まれた令嬢や
ったそうですが、今年４月の
総選挙に打って出て、代議士
となり、家や親をなくした浮
浪児や、身売りさせられそう
な、戦争未亡人などを助けゆ
うそうです。そういう、弱い
もんらあが集まる、ガード下
に、突如現れた、ガード下の
女王、ということですね。
のぶ） こんな女性がおったらあ
て…。もし会えたら、お聞き
したいことがようけあります。
東海林） 全く意欲がかきたて
られんやつもおるな。
嵩） あ…すいません。東京も
大きな空襲があったので、
どうなっているのか、気にな
ってしまって。
岩清水） 柳井さん、有楽町にも
行ったことがあるがですか？
嵩） はい。
銀座のすぐそばなので。
岩清水） やっぱり、
えいところながですか？
嵩） 戦争になる前の話ですけど、
目に映るものは全てキラキラ
してて、歩いてる人は、みんな
おしゃれで、生き生きとしてい
ました。あ、ご婦人たちは、
みんな美女で。
岩清水） たまるかー！
東海林） よし、柳井、
次号の表紙はお前が描け。
嵩） え…表紙？
東海林） 東京特集は、８月号
の目玉や。お前の知っちゅう、
東京のキラキラ美女を、
表紙で描いてくれ！
経費削減にもなるきにゃ！
嵩） はあ…。
岩清水） 柳井さん、
期待しちょります。
嵩） はい！
東海林） よし。
全員で行くぞ、東京！
東海林・岩清水） おお～！
のぶ） あ、お～！
嵩） お～。
東海林） ハハハハ。
岩清水） お～！
東海林） おほほほ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜屋台＞
嵩） え？ お店やめちゃうの？
健太郎） もともと、当面の間の
食いつなぎやもん。柳井君も
無事就職したけん、次は俺っ
たい。
嵩） うん。じゃあ、
高知、離れちゃうの？
健太郎） そげんっちゃねえ。
なんも考えとらんっちゃけど、
うん、そげんしよっかなあ。
嵩） そっか…。
それは、さみしくなるな。
健太郎） なあ柳井君。
生きとってよかったやんか。
嵩） え？
健太郎） のぶさんと一緒ん
働けて、おまけん、東京
ん行けるげな。
嵩） まあ、仕事だけどね。
うん、そうだね、
生きててよかった。
健太郎） ちかっぱ幸せやろ？
嵩）あ、でも、距離が近くな
れば近くなるほど、とても、
遠くにいる人に見えるんだ。
健太郎） うん？
どげんこつなん？
嵩） のぶちゃんはすごいよ。
ご主人亡くしてからそんなに経
ってないのに、本当は、つらい
はずなのに、弱音吐かないんだ。
教師辞めて、新しい会社に飛び
込んだのも、きっと必死なんだ
と思う。必死に、前に進もうと
してるんだよ。だから、そんな
人を、俺みたいなやつが、好き
になっちゃいけないんだよ。
健太郎） （ため息）
柳井君は、独楽のごたぁ。
経って ん？
健太郎） 同じところば、グルグル
グルグル回っとぉ独楽やん。
嵩） え？ 独楽？
健太郎） 独りが楽しかって書いて、
独楽。柳井君、本当は自分が傷つ
きたくないだけっちゃないと？
（ため息）
あ…ごめん、つい思っとぉこと
言ってしまったばい。
嵩） それ謝ってないでしょ。
（飲む音とコップを激しく置く音）
客） おうおう。
琴子） のぶちゃんのことそこまで
分かっちゅうのに女心がちっと
も分かっちゃあせん！
健太郎） え…え、あの…。
琴子） のぶちゃんと同期入社の、
小田です。
嵩） あっ、ど…どうも。
健太郎） どうも。
琴子） すみません。さっきから
ず～っと会話が聞こえよって。
これ、言おうかどうしようか
迷うちょったがですけんど…。
あなたが高知新報に入社でき
たがは、彼女のおかげですき。
嵩） え？
琴子） 試験では眼鏡君は…失礼。
柳井さんは恐らく、落ちちょり
ました。けんど、のぶちゃんが
資料室から10年以上前の新聞を
見つけてきたがです。柳井さん
が懸賞に応募した漫画が載っち
ょった新聞です。それを上司に
見せて食い下がって…。
健太郎） やけん柳井君、あん夜
新聞社呼ばれたとね？
琴子） そう！
挿絵を描くチャンスを作って
くれたがは、のぶちゃんです！
たあ～言うてしもうた～。
嵩） のぶちゃんが…。
琴子） おっちゃん、
カストリお代わり。
店主） はいよ、コトちゃん。
健太郎） 俺も、
お代わりください。
店主） はいよ。
柳井君！ よかったやんか～！
独楽みたいに、１人でグルグル
回っとぉ場合やなかったい。
銀座は、柳井君の縄張りみたい
なもんや。あん街角で、長年の
想いば、伝えるったい！
嵩） え～…。
琴子） うん！
健太郎） 今、ここで動かな、
一生後悔するばい。うん！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜若松家＞
のぶ） なんね。
メイコ） お姉ちゃん、ついに
子供の頃の夢がかなうがやね。
（回想）
のぶ） うちの夢は…四国の山
越えて、海越えて、ずっと
ずっと多くの、ギンザとい
う町に行って…。
のぶ） そうやね。
メイコ） ええなあ。
東京をよう見て、もんてき
たら、いろいろ教えてよ。
のぶ） うん。
次郎さんのこのカメラで、
いろいろ撮ってくるき。
メイコ） うん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜満員列車＞
のぶたちは、
いざ東京へと、
旅立ちました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
超簡単感想で♪
健太郎に恋するメイコがカワイイね。
そして相変わらずグダグダの嵩の話
を聞いていた琴子さん、グッジョブ。
独りが楽しかって書いて独楽。独り
でグルグルしててもね～。深いわｗ
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