「舞いあがれ！」 第87回
第19週「告白」
ここにおる全員、関係ないことないねん
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＜開店準備中のうめづ＞
ﾃﾚﾋﾞ・男性） 「え～投資のカリスマ、
岩倉悠人さんに、インサイダー取引
の疑惑が浮上と、いうことなんです
けども、光瀬さん、このインサイダー
取引とは簡単に説明すると…？」。
ﾃﾚﾋﾞ・光瀬） 「公表されていない重要
な情報をもとに、株の売買をする、
ということですね」。
ﾃﾚﾋﾞ・男性） 「はあ…
まあそれが犯罪になると」。
ﾃﾚﾋﾞ・光瀬） 「なります。一般投資家が
不利になり、証券市場の信頼性が損
なわれますので」。
ﾃﾚﾋﾞ・男性） 「はあ～。では今回、ルール
を破って一人勝ちをしようと考えたので
はないかと。いや、でもね…」。
雪乃） ちょ…。
ちょっとあんた！ ちょっと来て！
梅津） 何…どないしたん、
忙しい時にホンマ…。
テレビかいな。
ﾃﾚﾋﾞ・光瀬） 「それがですね、最近岩倉
さんに、巨額の損失を出していたという
うわさがありまして」。
雪乃) 悠人君やんか…。
ﾃﾚﾋﾞ・男性） 「それ本当なんですか？」。
ﾃﾚﾋﾞ・光瀬） 「その損失を埋めるため
だとしたら、ありえない話ではないと
思いますね」。
梅津） えらいこっちゃ…。
雪乃） めぐみさん知らせんと！
梅津） おい…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
光瀬） もしこれが事実なら、プロの
投資家としてあるまじき行為です。
断じて許されるものではありません。
男性） うん。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜IWAKURA・事務所＞
電・めぐみ） ちょ…ちょっと待って。
雪乃さん、どういうこと？
電・雪乃） せやから、悠人君、
ニュース出ててん！ ネット見て！
（パソコンでネットニュースを見るめぐみ）
舞） お母ちゃん…。
（電話をかけるめぐみ）
♪（不通音）
めぐみ） かかれへんわ…。
舞） お兄ちゃんは、
悪いことなんかせえへん。
めぐみ） うん。
けどな…。
（回想）
悠人） IWAKURAの権利、
おふくろに返そと思ってる。
めぐみ） 何で？ 私は、ずっと悠人に
オーナーでいててもらいたいて…。
悠人） こうしといた方がええ。
めぐみ） 本人に聞かんと。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜ホテルの部屋＞
（電話に出た悠人）
電・高橋） お前言ったよな？
インサイダーじゃない、
何も問題ないって。
どこがだよ！
なんてことしてくれたんだよ！
何ですぐに撤退しなかった！
一人で暴走しやがって。
俺がどんな思いで会社、
ここまで大きくしてきたと
思ってんだよ！
何とか言えよ！（泣）
もう終わりだよ…。
お前が、全部終わらせたんだ！
（電話を耳に当て、
肩で息をしている悠人）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（誰もいない休憩室に入り、
電話をかける舞）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（ホテルの部屋に、
ぼんやり座った悠人）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
♪（呼び出し音）
舞） お願い、出て…。
♪（呼び出し音）
♪（不通音）
（かけ直す舞）
留守電） 「おかけの電話は、
ただいま電波の届かない
ところにあるか、電源が…」。
舞） お兄ちゃん…何してんの。
藤沢） 岩倉さん、お客様やで。
すずかけ工業の徳永さん。
舞） ありがとうございます。
すぐ行きます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（ノック）
舞） 失礼します。
ああ、お待たせいたしました。
徳永） あっ、あんな…今表で
記者に声かけられたで。
舞） え？
徳永） なんとか振り切ったけど、
IWAKURAさんとこも、
えらいこっちゃなぁ。
舞） ああ…ご迷惑をおかけして、
申し訳ありません。
徳永） かめへん。こないだ、お願い
した試作なんやけど、ちょっと変更
してほしいとこあってな。
舞） 承知いたしました。
徳永） ねじの長さを２ミリ、
伸ばしたいんやわ。
舞） ２ミリですね。分かりました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜事務所＞
電・めぐみ） 申し訳ございません。
いいえ。息子から、連絡はござい
ません。失礼いたします。
めぐみ） 悠人のことで、あちこちから、
問い合わせが来てな。
舞） 会社の前にも、
記者さんおるって…。
めぐみ） まだ？ 取材断ってんけど…。
舞、みんなに、集まってもろて。
舞） はい。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜会議室＞
めぐみ） もう、知ってはる思いますけど、
息子が、違法なことしたんやないかて、
報道されてます。
相良） ホンマのことなんですか？
めぐみ） 分かりません。
本人と、連絡がつけへんのです。
今も、週刊誌の記者さんが、
会社の前に、張り込んでます。
皆さんも、いろいろ、話、聞かれる
ことと思います。ご迷惑かけます。
申し訳ありません。
（頭を下げるめぐみと舞）
宮坂） 社長が謝ることあらへん。
今回のこととは無関係なんやから。
章） いや…
無関係てことないと思うで。
宮坂） 何で？
尾藤） 結城さん…。
章） 悠人君、IWAKURAがピンチやった
時、工場買い取って助けてくれてんで。
相良） せやったな。
章） だからここにおる全員、
関係ないことないねん。
小森） 連絡つけへんの、心配ですね。
垣内) 社長、私らにできることあったら、
何でも言うてください。
めぐみ） ありがとう。
土屋） よし…外の記者いっぺん、
しばいてきましょか？
（笑い声）
男性） アホかお前。
日高） もう、何聞かれても、黙っとこ。
笠巻） 俺らはいつもどおりしっかり
仕事してたらええね。
藤沢） そうですよ。
いや、言うやないですか。
人のうわさも…。人のうわさも…。
入江） 七十五日や！
男性） 分からんのやったら言いな！
西口） 社長。七十五日の辛抱です。
めぐみ） ありがとうございます。
（頭を下げるめぐみと舞）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜夕方・事務所＞
山田） ほな、お先。
舞） お疲れさんです。
山田） お兄さん、連絡あった？
舞） ああ…まだなんです。
携帯かけても、会社にかけても、
だ～れも出えへんかって…。
お疲れさんです。
山田） お疲れさま。
（舞の肩に触れ、出て行く山田）
（パソコンで悠人の記事を見る舞）
めぐみ） もう帰り。雨降りそやで。
舞） うん。
めぐみ） 悠人の口から聞かな、
ホンマのことは分かれへん。
舞） せやんな。一緒に帰ろ。
めぐみ） 先帰ってて。
済ましときたい仕事あんね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（岩倉家の表に記者たち）
電・記者） ああ…うん、はいはい。
実家にも帰ってないっぽい。
自宅は？ （ため息）
どこに隠れてんだよ。
共同経営者の高橋だっけ？
あいつから目を離さないでくれ。
うん。
（道を引き返す舞）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（どしゃ降りの雨）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜デラシネ＞
貴司） はい。
（お茶を出す貴司）
舞） ありがとう。
貴司） えらいことになったな。
舞） もう…お兄ちゃん
どこおるんやろ？
ちゃんと、ごはん食べてるやろか。
誰か助けてくれる人おるんかな…。
お兄ちゃん、昔から、
何でも一人でできたから。
誰かに助けてって、
言えてんねやろか…。
ごめん、もう閉店やんな。
貴司） ええよ。僕も雨やむまで
おるつもりやったし。
舞） ありがとう。
（窓の外を見る舞）
舞） 雨…やむんやろか？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（ふらふら歩く悠人）
（水たまりに倒れる）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
章にいちゃん！ よくぞ言ってくれました～！！
ずっと気になっていたのよね。IWAKURAを助け
た最大の功労者なはずの悠人の、扱いの軽さ。
悠人君、IWAKURAがピンチやった時、
工場買い取って助けてくれてんで。
だからここにおる全員、
関係ないことないねん。
そうそう。岩倉家の一員として、悠人もちゃんと、
工場を守ってくれた。思い出してくれてよかった。
お兄ちゃん、昔から、
何でも一人でできたから。
誰かに助けてって、
言えてんねやろか…。
言えていたらねえ…。悠人の孤独に胸が痛む。
何だかんだ言って、家の近くまで帰ってきてい
た悠人。本当は帰りたかったんだよね、うちに。
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