「高嶺の花」第１話

「高嶺の花」

第１話

市松）　私は、家元である前に

　お前の父親なんだよ。

もも）　そうでしたね。

市松）　忘れられないのか？

もも）　何を？

市松）　もう半年にもなるのに。

もも）　だからたまたま

　サイクリングコースで…。

市松）　あんな男のことを。

もも）　父さんも気に入ってたのにね、

　彼のことは。

市松）　芸術家は伴侶を選び間違える。

もも）　お家元も？

市松）　フッ。

　ずっと、引きこもってるそうだね。

　そりゃあんな辱めを受けたんだ。

　人の目が気になるのは

　理解できるが…。

もも）　そんなことどうでもいい。

市松）　ん？

もも）　人の目なんてどうでも。

　笑いたければ笑えばいいし。

市松）　別の相手を見つける

　ことはできないか？

もも）　それ世間ではビッチって

　いうのよ？ 次から次へと。

市松）　そんな意味じゃない。

　新しい恋をしてみるということだ。

もも）　くだらない。

市松）　深く心が傷ついたんだ。

　それは分かる。お前のような

　デリケートな子は。

もも）　図太いと思ってたくせに。

　まぁ、何なら私もだけど。

市松）　リハビリテーションだよ。

もも）　リハビリテーション？

市松）　お前は事故にあったようなものだ。

　大ケガをしたら病院で手当てを受ける。

もも）　恋のリハビリ？ ハハハ…。

市松）　痛みを告げて寄り添ってもらう。

　回復するにはそういう相手が必要だ。

もも）　そんな気にはならない。

市松）　意識的にでもそうするんだ。

もも）　誰でもいいから？

市松）　そうだ。優しければ誰でもいい。

　徐々にでもその優しさで癒され、

　元に戻ることができる。

もも）　別に何ともなってない。元気だし。

　あっ、東京マラソンエントリー

　しようかな？

市松）　もちろん回復すれば、それは

　本当の恋じゃないと気付く。

もも）　ややこしい。何それ？

市松）　その時は…。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

市松）　その時は、捨ててしまえばいい。

もも）　男を？ ティッシュみたいに、

　はなかんでポイ？

市松）　言葉が悪いな。感謝をして、

　お礼を言って別れる。

もも）　かわいそう。その彼が今度は…。

市松）　「かわいそう」をバトンしなさい。

　お前が持ってちゃいかん。その罪悪感

　もひっくるめて、立ち直れる。

　芸術家とはそういうものだ。

もも）　難しい事言わないで。頭痛くなる。

市松）　お前は太陽なんだ。まぶしく輝く。

　だが、熱くて激しくて、

　自分で自分を焼き尽くす。

もも）　かき氷食べよ、イチゴ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

直人）　うちの、母親が…。まぁ、あの…

　時間は、たくさんあったから、よく、そ

　んな話を聞かされたんです。モテない、

　息子に、恋の手ほどきっていうか…。

もも）　恋愛指南？

直人）　はい。

　あの…こういう人が、いい女って。

　自分が、傷つけられた時、

　怒る人と、哀しむ人がいます。

　怒る人は、憎む人です。

　自分は、棚に上げて、

　相手をただただ、攻撃する。

　ヒステリックに、声が大きくなる。

　哀しむ人は、愛の人です。

　静かに、ただ時を止めて、哀しみます。

　愛と憎しみ、愛憎。

　うちの母親が、言った、あの…。

　「愛憎半ば」なんて表現があるけど、

　そんなことは、あり得ない。

　愛してたら、憎まない。

　憎めないんです。あなたのように。

もも）　私のように？

直人）　はい。

　それは、ちゃんと愛がある、

　いい女、だからなんです。

もも）　私…いい女なの？

　何ならストーカーよ？

佳代子）　いい女よ。

幸平）　めちゃくちゃいい女だよ。

　さっきの子供の考え方も

　正義感強くて。

太郎）　すげぇ、いい女。

もも）　本気で言ってる？

直人）　もちろん。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（回想）

節子）　へ～んな子だよ。

　あんなに成績が良かったのに、

　急にやる気なくしちゃって。

　望めば何でも叶えられる子なのに。

　ハ～ア…。

直人）　親の、ひいき目だよ。

節子）　「能ある鷹は爪を隠す」ってね。

　ボンクラのふりしようってのかい？

　ハハハハ…。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

市松）　自転車屋と、ももが？

高井）　はい。

市松）　誰でもいい。

　悪いがその男には泣いてもらおう。

高井）　は？

市松）　リハビリテーションだ。

　やがて娘は感謝して、

　その男を捨てるのだから。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（回想）

節子）　どんな夢も、現実になるよ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

市松）　束の間の夢さ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（回想）

節子）　夢を叶える力がある。

　だまされやしないよ～。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

野島伸司脚本という訳で…クセがあるのは

織り込み済みとして、石原さとみと峯田和伸

の組合せが新鮮。直人のキャラはなかなか

興味深い。能ある鷹は爪を隠すと母親に言

わせるぐらいの、隠された能力が高そう～。

千葉雄大君がちょいワルな感じなのも新鮮。

石原さとみは文句なくきれいだし、可愛いし。

「怒涛の純愛エンターテインメント」という事

なので…野島節を覚悟しつつ、期待～！！

●「高嶺の花」HP

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