帯ドラマ劇場
「トットちゃん！」
第11週 第51話（12/11）
あなたは神様に選ばれた人なのね
アメリカ・ニューヨークに留学中の徹子
（清野菜名）のもとに、日本のNETテレ
ビ（現・テレビ朝日）から電話が入る。
新たにはじまる『13時ショー』という番
組のメイン司会の依頼だった。帰国を
決意した徹子は、ヘア・デザイナーに
新しいヘアスタイルを作ってほしいと
依頼する。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ニューヨークでは、
たくさんの出会いがあり、
忘れられない再会がありました。
（徹子からのハガキを読むエミー）
手紙・徹子） 「この前ダニーさんに会い
ました。ダニーさんは、ブロードウェイ
のミュージカルに出てて、全米ツアー
にも行ってて、忙しそうでした。とって
も元気で、相変わらずスラッとしてて、
かっこよかったです」。
椎名） （あくび）
横になったらうっかり寝ちゃったよ。
エミー） いいのに、寝てても。
椎名） フフフッ。
優しいね、僕のエミーは。
エミー） トットちゃんから、ハガキ。
椎名） えっ！ ニューヨークからか。
エミー） うん。ダニーに、会ったって。
ソシアルダンス以外は踊らないって
言ってたのに、ミュージカルに出て
るそうよ。
椎名） 終戦後エミーが、他のダンス
も踊ってみたいって言った時、ダニ
ー怒ってたよね。
エミー） そんな事もあったわね。
椎名） エミーのあの頃の気持ち、
やっと分かったんだよ、ダニーにも。
エミー） よかった…生きてて。
椎名） もう帰ってこないのかな。
エミー） 帰ってきたほうがいい？
帰ってこないほうがいい？
ごめんなさい。変な事言って…。
椎名） 何があっても、エミーは、
僕の奥さんだから。
（シイナに抱きつくエミー）
椎名） おっ、おいおい…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
電・徹子） （英）はい、黒柳徹子です。
電） （英語）黒柳さん、
日本から電話です。
電・徹子） （英）つないでください。
電） 少々お待ちください。
電・佐々木） もしもし？
黒柳徹子さんでしょうか？
電・徹子） そうです。
電・佐々木） NETテレビの佐々木と申
します。突然お電話してすいません。
電・徹子） いいえ。
電・佐々木） 実は今年の10月から
『13時ショー』というワイドショーを
やろうと思うんですが、そのメイン
司会者を、黒柳さんにやって頂け
ないかと思いまして。
電・徹子） 司会者ですか？
電・佐々木） メイン司会者です。
電・徹子） 光栄なお話です。
でも…ワイドショーやニュースショー
の、女性司会者は、ご結婚なさって
る方ばかりですわよね。私、独身で
すけれど…。
電・佐々木） 構いません。
時代は変わってます。黒柳さん
らしく、存在して頂ければ…。
電・徹子） 白のブラウスに、紺のスカ
ートでなくてもよろしいんですか？
電・佐々木） もちろんです。
華やかなお衣裳を期待しています。
ブロードウェイで、能力はあっても
仕事にありつけない人を大勢見て
いた徹子は、自分が必要とされる、
仕事があるという事を、心からあり
がたいと思いました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
須賀勇介） じゃあ、和服でも洋服でも
似合うように、作ってみようか。
徹子） ええ、よろしくお願い致します。
帰国を決意した徹子は、
世界的ヘア・デザイナー、
須賀勇介さんに、
新しいヘア・スタイルを依頼。
須賀） どう？
徹子） これがいいわ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜NETテレビ＞
今や定番となった、
タマネギ・ヘアーとなって、
徹子は颯爽と再スタートを切りました。
佐々木） おかえりなさい。
こちらで打ち合わせお願いします。
徹子） えっ…？
久松） 黒柳さん、おかえりなさい。
徹子） 久松さん！
ここは、NETですわよね？
久松） NHKを辞めて、
NETに入りました。
徹子） あらま。
佐々木） 「13時ショー」も、
久松がチーフ演出です。
徹子） まあ、素敵！
佐々木） どうぞ、こちらへ。
久松） 黒柳さん、その頭は
どうなさったんですか？
徹子） いい？
久松） お似合いです。
誰にも出来ない髪型です。
徹子） よかった。
これからこのタマネギ頭を、
トレードマークにしようと思うの。
佐々木） 最先端ですね。
素晴らしいですよ、黒柳さん。
徹子） ありがとうございます。久松さん、
結婚式出られなくてごめんなさい。
咲子さんはお元気？
久松） ええ。今は仕事を辞めて、
子育て中ですけど。
徹子） メイクさんやってないの？
久松） あっという間に子供が
４人も出来ましてね。
徹子） ４人も！？ まあ…お仲良しね。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜「13時ショー」＞
徹子） 中国から来たパンダの名前が
決まったそうですね。ランランとカン
カン。覚えやすいいい名前です。実
は私、この愛嬌のあるクマさんの事
は、昭和15年から知っておりました
の。報道カメラマンだった叔父が小
学校の入学祝いにパンダのぬいぐ
るみをくれたんです。叔父は、その
ぬいぐるみをアメリカで買ったらしい
んですが、これは支那のクマだよと
申してましてね。それで私そのパン
ダに、シナシナという名前を付けた
んですの。当時中国の事は支那と
申しましたので。シナシナ、ランラン、
カンカン。なんだか似ておりますで
しょ。改めて私、パンダに深いご縁
を感じてしまいました。一代目シナ
シナは、戦争中に家とともになくな
ってしまったんですけど、母が上野
の闇市で買ってくれた、二代目シナ
シナは、今も家におりますんですよ。
パンダって指が６本ありますのよ。
ここのところに小さな指があって、
竹の枝をつかむんだそうです。パ
ンダの事をお話ししてるとキリがあ
りませんわね。ではCMどうぞ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
女性） CM入りました。
久松） ああ…よかった。
今日はパンダの話で終わっちゃう
のかと思いましたよ。
佐々木） 彼女はプロだ。
我々よりテレビの事はわかってる。
任せておけば大丈夫だよ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜乃木坂上倶楽部＞
二木） 大スターだな、トット様は。
徹子） やめてよ、「様」だなんて。
二木） 「トットちゃん」では申し訳
ないだろ、もはや。
久松） 何言ってんだよ。
二木だって忙しいじゃないか。
二木） トット様には遠く及ばないよ。
京子） 男のくせに愚痴っぽいわね。
緑） 京子ちゃんと道代ちゃんは
旦那様もいるからいいけどさ。
私も一人で生きてくのは厳しい。
楽しかったな、NHK研修生時代。
道代） 二足のわらじも大変よ、
それなりに。
京子） 「ヤン坊ニン坊トン坊」やってる
頃、ナレーションの人が、黒柳徹子っ
て名前、クロヤギテツコとか、クロサ
ナギトツコって間違えるから、名前変
えたいって言ってたの覚えてる？
徹子） 覚えてるわ。
リリー白川にしようと思ったんだもの。
京子） 名前変えなくて
本当によかったわね。
咲子） ごめんなさい！
下の子がぐずっちゃって…。
徹子） 咲子さん！
咲子） ますますあでやかね。
徹子） お子さん４人もいるんですって？
咲子） 今日は子供の事は忘れたいの。
ビールちょうだい。独身時代に戻って
飲んじゃうから。酔ったら連れて帰って。
子供も迎えに行ってよ！
久松） はいはい。
緑） いいな…私も結婚した～い。
久松） じゃあ、もう一度乾杯します。
黒柳徹子さんのご帰国を祝い、我々
NHK出身の仲間の前途を祝して、
乾杯！
一同） 乾杯！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
咲子） あなたは神様に
選ばれた人なのね。
徹子） 咲子さんは、久松さんに選ば
れたじゃないの。愛する人と暮らせ
たら、最高だと思うけどな。
咲子） 愛する人…いないの？
いるんだ？
徹子） 何もかも捨てて、
一緒になりたい人はいない。
咲子） 何もかも捨てて、
馬鹿を見たのは私。
徹子） あらま。
咲子） 仕事がしたいわ。子供と
一日家にいると、変になりそう。
徹子） お子さんの手が離れたら、
戻ればいいじゃないの。
咲子） あなたもそんなきれい事
言うの？ まるで久松みたい。
徹子） きれい事じゃないわ。本気よ。
咲子） そんなに甘い世界じゃない事、
知ってるくせに。
徹子） そうは思わないわ。咲子さんが、
戻りたいと強く思えば、必ず戻れるわ。
誰も出来なかった事を、咲子さんが
やればいいわ。
咲子） 世の中は、あなたみたいに思
いどおりにいく人ばかりじゃないの。
だからあなたは神様に選ばれてる
って言ってるのよ。今日も遅れて入
ってきた時、あなたしか目に入らな
かった。あなただけが輝いてた。
もう私がうらやましがるのもおこが
ましいぐらい、あなたは遠くに行っ
たんだなって思ったわ。それでビ
ール、散々飲んじゃったの。
徹子） まだビール飲む？
咲子） 飲むわ。
徹子） あらま！
シイナさん！ ビール下さい！
椎名） はーい。
えっ？ ビール？ 何本？
徹子） みんなまだビール飲む？
咲子） 飲むわ。
徹子） ５本で。
椎名） フフ…。テレビジョンの
一期生はみんな仲良しだね。
徹子） そうなの。
みんな、仲良しなのよ…。
一同） ね～！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
久松） 夕べは大変だったよ…。
かみさん連れて帰って、それから
親戚の家に子供迎えに行って。
徹子） 咲子さん、お仕事やりたい
って言ってたわよ。
久松） そればっかり言うんだよ。
無理な事わかってるのに。
徹子） 男の久松さんは、家庭も持っ
てお仕事も出来ているのに、女の
咲子さんは家庭か仕事か、一つし
か選べないなんて、何か変よね。
久松） 黒柳さんまでそんな事言うの？
徹子） だって、ニューヨークじゃ
普通に女の人が、仕事をしながら、
子供を育てたもの。
久松） じゃあ、黒柳さんも、仕事も
家庭も欲しいって思ってるの？
徹子） 私？ 私は…。
（回想）
祐介） 僕と一緒に、パリに行こう。
パリに来てくれ。
テツコと一緒に生きていきたい。
久松） どうしたの？
徹子） ううん。何でもないわ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
徹子） お久しぶりでございます。
森繁） おお…黒柳くん。
拝見しましたよ、「13時ショー」。
いい感じじゃないですか。
徹子） ご光栄でございます。
森繁） あなたはね、みんなが欲しが
るもの全て手に入れつつあるね。
でも、男がいない。ハハハハハ…。
徹子） あらま。よくご存じで。
森繁） ハハハハハ…。１回どう？
徹子） いつか…
チャンスがございましたら。
森繁） ああそう。ハハハハハ…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜「13時ショー」＞
徹子） こちらが、今話題の紅茶
キノコだそうでございます。
なんだかトロリとしております。
ハチミツみたい。
色は普通の紅茶みたいですね。
ではいただきます。
「13時ショー」の司会をしながら、
徹子はドラマや舞台にも女優として
出演し、ますます忙しくなっていました。
徹子） どこが紅茶なんでしょうかしら。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜楽屋＞
（ノック）
徹子） どうぞ。
佐々木） 失礼します。
久松） 失礼します。
佐々木） 本番前に申し訳ございません。
夜もまた、お仕事だとお伺いましたので。
徹子） どうぞおかけになって。
佐々木） 失礼します。
久松） 失礼します。
徹子） 何事ですの？
お二人して、神妙なお顔で。
「13時ショー」、終わるんですか？
佐々木） いえ。
新しい番組を企画しました。
徹子） 新しい番組？
久松） 黒柳徹子をメインにした、
新しいトークショーです。
タイトルは…「徹子の部屋」。
徹子） あらま…。「徹子の部屋」！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
トレードマークとなるあのタマネギヘアーが
生まれ、「13時ショー」の司会から、いよい
よ「徹子の部屋」の企画が持ち込まれたよ。
でもホント、徹子さんをメインにした番組を、
「徹子の部屋」を思いついた人グッジョブ！
徹子さんが徹子さんらしくいられる場所を
提供してくれる人、才能に気付き活かして
くれる人に出会えるのも、徹子さんの強運
というか、「神様に選ばれた人」と思える理
由。まさに、神様に選ばれ、生かされてい
る人なんだと思う。伝えるべきことを、世の
中に、世界中の人に伝えるべく、真面目に
正直に、正しく精進し続ける事ができる人。
きっとそれが…徹子さんなんだろうなあと。
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