「ひよっこ」第132回～富さんの恋・・・私の人生楽しいことでいっぱい

「ひよっこ」 第132回
第22週 「ツイッギーを探せ！」
富さんの恋・・・

私の人生楽しいことでいっぱい

鈴子）　今、テレビの臨時ニュースで…。

　　松永さん、死んじゃった…。

富）　そう…。

鈴子）　ひょっとして、富ちゃん…。

富）　そうか…。死んだか。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（袱紗の中の写真を見せる富）

富）　私と…。松永悠馬さん。

富）　愛し合ってたの。

　ずっとね。ずっと。

愛子）　そうですか…。

鈴子）　赤坂じゃ、

　　有名な２人だったのよ。ねっ？

富）　美男美女で…。フフフ！

鈴子）　私なんか、

　　歩いてる２人見て、憧れたもん。

愛子）　へぇ。

富）　本当の奥さんには

　ならなかったけどね。

　まっ、今の言葉で言ってしまうと、

　愛人って、とこかしら。

　ここも、この人がくれた。

　最後の、贈り物だって。

　若い人がいる時じゃなくてよかった。

　この話するの。そういうの、今どき

　の人って軽蔑するでしょ？

（写真を見つめる富）

富）　いい男…。大好き。

　死んじゃったか…。

　もう一度、会いたかったなぁ。

（ドアが開く音）

みね子）　あれ？

　　　鈴子さんどうしたんですか？

鈴子）　あぁ。

（写真をそっと隠す富）

鈴子）　富ちゃん。

　　ちゃんと話してあげたら？

　　若い人たちにも。

　　分かんなくたっていいよ。

　　分かってたまるかって話だよ。

　　そうでしょ？

富）　そうよね。

鈴子）　そうよ。

　　よっ！ 赤坂小町～！

富）　ありがとう。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

富）　あれは、今から、ウン十年前。

　私は、赤坂で一番美しい芸者として、

　とても人気だった。輝いてた。

　その時、彼と出会ったの。

　大きな会社の御曹司。とてもシャイ。

　お父様に連れられて、いやいや来て

　いるって感じだったわ。でもね、

　何度も会ううちに、恋に落ちた…。

　背が高くて、ほりが深くて…。

　ダグラス・フェアバンクスみたいな

　いい男。芸者の身の上、いつも一緒

　というわけにはいかなかったけど…。

　２人で、旅に出た。いろんな所へ。

　松島の、美しい島々。天橋立。

　安芸の宮島。北海道の毛ガニ。

　仙台の、笹かまぼこ。茨城の、アンコウ。

　山梨の富士山。静岡のウナギ。

　新潟のへぎそば。富山のホタルイカ。

　福井の越前がに。三重の伊勢エビ。

　奈良の、柿の葉寿司。

　通天閣で、お好み焼き。

　讃岐うどん、宍道湖のシジミ。

　土佐のカツオ、下関のフグ。

　長崎のカステラ。阿蘇山の、カルデラ。

　鹿児島の、桜島。沖縄の…。青い海…。

　みんな、すてきだったわ。

　だから、全国の名産品が、今も好き。

　思い出すから。一番の思い出は、桜。

　ここには、大きな桜があって、

　毎年、を２人っきりで見た。

　彼は、愛していると、

　手を握ってくれて…。

　戦争とか、つらいことは、

　何にも覚えちゃいないわ。

　そういうことは全部忘れた。

　だから、私の人生楽しいことでいっぱい。

　ここには、彼が私にくれた、家があった。

　ここにいればすてきな思い出ばかり。

　あの桜は、息をのむほど美しかったわ。

　その桜…。そして…。今…。

　桜は散ったわ…。

♪いのち短し 恋せよ乙女

 紅き唇 あせぬ間に

 熱き血潮の 冷えぬ間に

 明日の月日は ないものを

愛子）　富ちゃん！ 飲もう！

富）　ありがとう。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（管理人室に喪服姿の富）

みね子）　え…？ あの…富さん？

富）　おはよう。

みね子）　あっ、おはようございます。

　　　あの…。

富）　告別式にね、池上本門寺まで。

　11時からだから、まだ早いんだけど。

　違うな。本門寺の前まで。

　行ってらっしゃい。お仕事、頑張って。

みね子）　はい。ありがとうございます。

　　　行ってきます。

富）　行ってらっしゃい。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

鈴子）　そう…行くのか…。

みね子）　近ぐまでって、

　　　言ってたんですけど…。

鈴子）　そう…。

　　お焼香するつもりはないんだよね。

　　それが、けじめなんだよね、きっと。

みね子）　そういう意味か…。

鈴子）　様子、どうだったの？

みね子）　すごぐ、明るくて。

鈴子）　そう…。何だか心配だね…。

　　あぁ…。私も一緒に行ってやりたいな。

みね子）　はい。

鈴子）　でも、お店があるしね。昼間抜け

　　るわけには、いかないよねえ。

みね子）　あっ！ います一人。

鈴子）　えっ？ 誰が？

みね子）　手伝ってくれる人が、

　　　すぐ近所に！

鈴子）　えっ？

みね子）　あの…すぐ、連れできますね！

　　　鈴子さん！ 富さんをお願いします。

鈴子）　はい。

みね子）　行ってきますね！

（店から飛び出して行くみね子）

省吾）　どうしたの？

鈴子）　えっと、あのね…。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（薬局の前のイチコに話しかける由香）

由香）　あんた、私がいる頃には

　　いなかったよね。

　　何か、偉そうな感じするんだけど。

（イチコを小突く由香）

由香）　よろしくね。

みね子）　あっ、こごにいだ！

由香）　何だ、みね子か。

みね子）　来て！

由香）　えっ？

みね子）　いいがら！ あの…柏木堂さん

　　　には、言っとくから。

由香）　えっ？ 何それ？ 何？ どこへ？

みね子）　えっ？ すずふり亭。

由香）　え～！？ いや～！

みね子）　いいがら！

由香）　やだ！

みね子）　いいがら！

由香）　何言ってんの！？

みね子）　手伝って、由香！ もう～！

由香）　やだ！

みね子）　こうでもしないと、いづまでも

　　　ウジウジやってんだがら！ もう！

　　　いいチャンスなんだがら！ ほら！

　　　ねっ？ さあさあ、こっちへおいで。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

富さんと松永さんの若き日の写真が…。赤坂

一の美人芸者も年を取るとああなってしま…

というお話ではなかったですね、ハハハ…。

富さんの恋、立場は、今の時代の倫理観で考

えてはいけない。男の甲斐性であり、ある意

味、女の甲斐性でもあった時代。本妻にして

も愛人にしても…覚悟があった時代のお話。

愛子と鈴子に写真を見せ、昔の恋を語る富。

若い人がいる時じゃなくてよかったって…す

っかり鈴子＆富サイドとみなされてしまって

いる愛子の心境を思うとちょっと気の毒でｗ

いや、確かに若くはないけどね（酷）、気持

ちは乙女たちサイドのつもりだろうから…。

大きな会社の御曹司で、シャイで背が高い。

これってどこかで聞いたことがあるような…

そうそう、あれあれ、みね子の元カレ島谷。

みね子が付き合い始めた時に、チラッと話

が出て来たけれど、富さんの恋バナ、もっ

とみね子の恋に絡めてもよかったのに…

なんて思ってしまった。もったいないよね。

戦争とか、つらいことは、
何にも覚えちゃいないわ。
そういうことは全部忘れた。
だから、私の人生楽しいことでいっぱい。

思い出すのは楽しいことだけ、愛されたこと

だけ。いいね、そういうの。人生楽しいこと

でいっぱいだったと死んでいけたらいいね。

迫力の演技力、富ちゃん劇場に圧倒されな

がら、恋の思い出よりも、富さんが食いしん

坊になった理由がよく分かる日本全国おい

しんぼの旅の内容のほうが心に残ってしま

ったことは…内緒～。ごめんね、富さん…。

富ちゃんの恋は、由香がすずふり亭に戻る

ための前フリとなる模様。まっ、いっか…ｗ

♪いのち短し 恋せよ乙女

「ゴンドラの唄」の藤圭子バージョン発見。

久しぶりに彼女の声を聞いちゃった。ちな

みに、宇多田ヒカルのお母さんですよ～。

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