孤独のグルメ Season6
第12話
東京都品川区五反田の
揚げトウモロコシと牛ご飯
目黒川…この川は、
いつから流れているんだろう。
昔はもっと大きかったのか、
それとも、小川だったのか。
川にも人生のようなものがある。
人も生きている限り変わっていく。
そしてそのつど、腹が…減る。
店を探そう。傘、傘。
**********
五反田、全然メシ観がない。
何を食う?
俺の腹は何を欲しているんだ。
焦るんじゃない。
どんな一食だって、
一生に一度のメシだ。
落ち着け。
直感を研ぎ澄ますんだ。
ふれあい飲食店街?
なんともくすぐったいガイじゃないか。
えっと…スナック、スナック、パブ。
スナック、バー、スナック…。
ロック酒場?
なんだ。飲食と言いつつ、飲み屋街か。
おっ、食堂!
いいじゃないか。
**********
上にも店があるのか。なるほど。
あんまりふれあい感はないけど…。
あっ、とだか。
「立呑み」? 違う違う。
えっと…。あれだ!
「食堂とだか」
中が見えん。
食堂と謳いながら、
単なる常連酒場だったら最悪だ。
勝負の店だな。
他にするか? いや…。
う~ん、いい店のような気もする。
ダメだ! 空腹が俺の足を
ここから動かしてくれない。
**********
えぇ? これが食堂?
やっぱり食堂飲み屋だったか。
1食落としたか…。
う~ん、でもちょっとそそる。
マスター) 飲み物は前に書いて
ありますんでお願いします。
五郎) あ、はい。
マスター) それから、あちらに4品書いて
あるんですけど、あそこからお通しを
1つ選んでいただきます。
お通し? やっぱり飲み屋だ。
出るか…。
五郎) すみません。
私、酒飲めないんで…。
店員) あっ、全然大丈夫ですよ。
ソフトドリンクもありますんで。
五郎) あっ…。
逃げられない雰囲気。
でも、選べるのは良心的。
飲み物は…あっ、ここか。
**********
さて、どうする?
この場面で最善の選択は?
マスター) はい、こちらからすみません。
ウーロン茶です。これに書いて
いただいていいですか?
五郎) これいん?
マスター) はい。好きな料理を下の
ほうから、書いていってください。
五郎) あっ、分かりました。
客に書かせるか? いやいや…
郷に入れば郷に従い、郷を楽しめだ。
子持ち昆布フライタルタル。
キンキと茄子の包み焼き。
へぇ、珍しいのがあるじゃないか。
えっ、いちご大福?
なんだこの店?
おもしろいかもしれないな。
おぉ!
それより、ご飯があるか否かだ。
おっ、牛ご飯? それにみそ汁も。
よしよし! 飲み屋が食堂側に
ぐぐっと傾いてきたぞ。
飯と汁があるとなれば、
あとはいかようにも組み立てられる。
オン・ザ?
でもそれ、もしかしてうまいかもな。
ふ~ん…となると…
牛ご飯とみそ汁に合わせるならば…
マスター) はい、お待たせしました。
牛トロのウニ巻きです。
客) え~!
客) きた~。
客) すっごい!
客) すごいでしょ、色。
おお~。ウニ、やっぱりいくか…。
客) うまいです。
マスター) ありがとうございます。
**********
「たことキュウリの塩昆布(お通し)」
塩気控えめ 楽しい歯ごたえ
五郎) いただきます。
おぉ~いい。
タコ with 塩昆布、いい。
俺にとってこれはお通しでは、ない。
前菜、先づけ、アペタイザー。
**********
マスター) はい、ウニ・オン・ザ煮玉子です。
崩れやすいので、手でつまんで
一口でいっちゃって下さい。
五郎) はい。
「ウニ・オン・ザ・煮玉子」
悪魔の如き 組合せ
天使の如き その味わい
名前のまんま。そのまんま。
おっとっとっとっと…。
ホントだ。崩れる。
おぉ~口いっぱいに玉。
これは…うまい。
五郎) うわっ。うわっ!
こういう食べ方があったか。
うん…。うん…。
うまかったが出てきて一瞬で終わった。
儚い料理。
**********
「胡麻豆腐とトマトの揚げだし」
胡麻の甘みと トマトの酸味
絶妙コラボに 舌鼓
あぁ~いい香り。
おぉ、たしかにたしかに。
思いっきりゴマだ。
味も、色味も…。
おいしいぞ。
普通の揚げだし豆腐より、
俺は、断然こっち派になりました。
はぁ~カツオ風味で、
ちょいトマトスープっぽいのが、
たまらないじゃないか。
う~ん、
トマトが優しさに包まれている。
あんな狭いスペースで
全部作ってるのか。
すごいな…。
このだし…
スプーンの動きが止まらんぞ。
**********
「揚げトウモロコシ」
甘さそのまま 衣で包み
かじれば浮かぶ 夏景色
もうトウモロコシの季節か。
1年が早い。
お~っ、うまい!
この香り、甘み、サクサク。
まさに夏の味。
香ばしさが全身に
吹き抜けるようにおいしい。
**********
「キンキと茄子の包み焼き」
魚と野菜の熱き抱擁
優しく隠すは 栗の粉雪
これはちょっと高い
小料理屋の一品って感じ。
定食屋ではお目にかかれないぞ。
あっ、これが茄子か。
ほぉ~こういう…。うんうん。
キンキと茄子をペア食い
したの初めてだけど、
意外にもいいコンビネーションだ。
うん。おいしい。
栗か…。
言われなきゃわからないかも。
客) ウニ・オン・ザ・煮玉子って
どんな料理かな。
客) それは僕も食べたことないですね。
客) 気になりますね。
そのまんまですよ。
**********
マスター) お待たせしました。
牛ご飯です。
フフフッ。おいでなすった。
マスター) で、おみそ汁ですね。
今日はラッキョウが入ってます。
五郎) ラッキョウ?
マスター) ラッキョウ。
ランチョンマットにのりきらん。
なんか、俺一人浮いてないか?
いや、気にするな。
俺は食堂に入ってきたんだ。
浮こうが浮くまいが関係ない。
好きなおかずで、メシを食って帰る、
食堂の一人客たれ。
「牛ご飯」
とだか名物 最強ご飯
一口食べれば モ~最高!
お~っ!
牛が優勢でメシが見えない。
このサイズか…。
おっほ~!
空腹にドスンとくる肉メシだ。
相手にとって、不足なし。
牛にはいったん
おいとましてもらってと。
横綱のごとき貫禄と風格。
煮玉子も、さっきとは意味が
違うから、もう一度うまい。
「体に良いみそ汁」
こ…これは!
お椀で体験 未知との遭遇
ホントだ。
まごうことなきラッキョウ。
汁ものにもいけたのか。
五郎の知らない世界。
体にいいと書きたくなる
作り手の気持ちがわかるみそ汁だ。
うん、なるほど。
これは上品な贅沢揚げせんべい。
立ち飲みにデリバリーしてるのかな。
肉もいいし、米もうまい。
タレ絶妙。
そこにきてこのネギと大葉が
メチャクチャ効いてる。
つけ入る隙のない丼だ。
**********
酔っ払いばかりだけど、
いい食堂だ。
う~ん。
どれもこれもやっぱりおいしい。
この店にしてよかったじゃないか。
飲み屋だろうが、
小料理屋だろうが、
うまいおかずと飯があれば、
俺はそれで幸せになれる。
この小さな店の中には、
古きよき食堂の精神が
ぎゅっと詰まっている。
五郎) ごちそうさまでした。
**********
あぁ、今日も腹いっぱい。
しっかりいい飯が食えた。
男性) あ~酔っ払いましたね。
男性) うまかったね。
うまいうまい、うまかった。
男性) ちょっと、
もう一軒だけ行きませんか?
男性) えぇ~?
男性) せっかくなんで行きましょうよ、
絶対。
男性) もう一軒?
男性) ちょっとスナックがあるんで。
男性) ちょっとだけだよ。
フンッ。こんな時間にもう2軒目。
飲兵衛さんたちは、いい気なもんだ…。
さて、明日は浅草か…。
何を食おうかな…。
**********
孤独のグルメSeason6、最終話にメレブ…
じゃない、ムロツヨシ登場。マスターの役が
似合い過ぎる~。酒飲みとしては、今回の
お店はかなり行ってみたいお店ランキング
の上位に入るかも。料理が独創的でしかも
おいしそう。最近、量が食べられなくなって
きているので、少しずついろいろ食べられ
るほうがいいというか…。2人で分け合える
と助かるというか…。頭は食べたがるのだ
けれど、体がね…。胃袋が2つ欲しいよ~。
ラストはお約束、今回はお店の外で原作者
が登場。酔っぱらいの演技が上手すぎるw
来年また、Season7が見られますように!
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