第13回大賞受賞作
「化石の微笑み」
認知症の祖母の世話をする女子高校生と、人と
触れ合うのが苦手な男子高校生が、互いに困難
を乗り越えて成長を遂げながら、小さな恋を実ら
せるまでを描いたヒューマンラブストーリー。
**********
あの頃、俺は異常なくらい汚れる事に敏感で、
世界は触りたくないものであふれていた。
世界は触りたくないものであふれていた。
だけど、今では、何とか抵抗なく、
大抵のものに触れる事ができる。
それでも、人の肌だけは、まだ…。
大抵のものに触れる事ができる。
それでも、人の肌だけは、まだ…。
**********
彩美) 笑ってたのは、
今のおばあちゃんじゃないの。
私たちが見てたのは、化石の微笑み。
おばあちゃんの記憶の中で何十年も
眠ってた、少女の頃の笑顔。
彩美) 笑ってたのは、
今のおばあちゃんじゃないの。
私たちが見てたのは、化石の微笑み。
おばあちゃんの記憶の中で何十年も
眠ってた、少女の頃の笑顔。
和哉) だとしても、よかったんじゃないかな。
その化石を掘り起こして、今を吹く風に、
当てる事が出来たんだから。
幸子さん、心から笑ってたよ。
その化石を掘り起こして、今を吹く風に、
当てる事が出来たんだから。
幸子さん、心から笑ってたよ。
彩美) 優しいね。宮原君は。
(彩美の手に触れようとして払いのけてしまう和哉)
和哉) そうじゃなくて…。だから…違うんだって…。
彩美) 違うって何が?
和哉) いや…なんか…。
彩美) もういいよ。
**********
健介) 俺はいつも思い出してたよ。宮原の事。
痛い目に遭う度に、思い浮かんでくるのは、
決まってお前の事ばっかりだった。
和哉) 俺の痛みが、分かったとか、言うわけ?
健介) いや…それはないな。
和哉) はあ? はあ!? はあ!?
なんだよそれ!
マジで…なんなんだよ、お前!
健介) 俺は俺だよ! お前にはなれない。
宮原が味わってきたような思いを、
全く同じように感じる事は、
俺には出来ねえから。
和哉) ふざけるなよ!
そんなんで…納得できるかよ!
健介) ごめん。でもお前は、俺がどう思ったところで、
きっと腹立てただろう?
まあそれも、結局は俺のせいなんだけど。
本当、悪かった。
和哉) 俺も逃げてきた。
受験し直した理由…お前と同じなんだ。
健介) そっか。
和哉) 結構順調だったんだよなあ。高校入ってから。
でも、お前と会ったら、また昔の自分に、
逆戻りしそうになって…。
健介) 聞くよ。どんな文句でも。
和哉) はあ…やめた。お前に言っても仕方ないし。
それより…手、出せよ。
健介) ん? うん。
(健介の手を取り、その手を握る和哉)
和哉) 深田。
健介) ん?
和哉) お前の手、ぬるぬるしてて気持ち悪い。
健介) ハハッ…ハハッ。しょうがねえだろ。
めっちゃ緊張したんだから。ほら、もう拭け。
和哉) ああ、いいよ。
**********
(彩美の手に触れようとして払いのけてしまう和哉)
和哉) そうじゃなくて…。だから…違うんだって…。
彩美) 違うって何が?
和哉) いや…なんか…。
彩美) もういいよ。
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健介) 俺はいつも思い出してたよ。宮原の事。
痛い目に遭う度に、思い浮かんでくるのは、
決まってお前の事ばっかりだった。
和哉) 俺の痛みが、分かったとか、言うわけ?
健介) いや…それはないな。
和哉) はあ? はあ!? はあ!?
なんだよそれ!
マジで…なんなんだよ、お前!
健介) 俺は俺だよ! お前にはなれない。
宮原が味わってきたような思いを、
全く同じように感じる事は、
俺には出来ねえから。
和哉) ふざけるなよ!
そんなんで…納得できるかよ!
健介) ごめん。でもお前は、俺がどう思ったところで、
きっと腹立てただろう?
まあそれも、結局は俺のせいなんだけど。
本当、悪かった。
和哉) 俺も逃げてきた。
受験し直した理由…お前と同じなんだ。
健介) そっか。
和哉) 結構順調だったんだよなあ。高校入ってから。
でも、お前と会ったら、また昔の自分に、
逆戻りしそうになって…。
健介) 聞くよ。どんな文句でも。
和哉) はあ…やめた。お前に言っても仕方ないし。
それより…手、出せよ。
健介) ん? うん。
(健介の手を取り、その手を握る和哉)
和哉) 深田。
健介) ん?
和哉) お前の手、ぬるぬるしてて気持ち悪い。
健介) ハハッ…ハハッ。しょうがねえだろ。
めっちゃ緊張したんだから。ほら、もう拭け。
和哉) ああ、いいよ。
**********
彩美) そっか。人と触れ合うのがね…。
だったら言ってくれればよかったのに。
和哉) 知られたくなかったんだ。
そのせいで、嫌な思いもたくさんしてきたし。
だから高校では仕切り直して、今度こそ
うまくやろうって、思ってたんだけど…。
彩美) バレちゃったね、たった今。
和哉) うん。全然うまくいかなかった。
彩美) でもおばあちゃんとは? どうして?
和哉) ああ。あれは、偶然。幸子さんがつまづいて、
とっさに。ただ凄く感謝してるんだ。おかげで、
勇気をもらえたし。
彩美) そっか。でもやっぱ知っておきたかったな。
結構落ち込んでたんだよ、私。
宮原君に嫌われてるんじゃないかって。
和哉) ごめん。でも…その正反対だから。
彩美) うん。……えっ?
(和哉が差し出した手に、自分の手を重ねる彩美)
彩美) どう? 平気?
和哉) うん。でもちょっと…ドキドキしてる。
彩美) それだったら大丈夫。
私もすごくドキドキしてるし。
**********
彩美) おばあちゃん。
幸子) ん?
彩美) おじいちゃんと一緒で幸せだった?
幸子) ああ…つらい事もたくさんあったけど。
思い出すとこう…あたたかくて、
優しい気持ちになれるの。
(ペンダントを彩美に渡す幸子)
幸子) これね。もらってほしいの。彩美に。
**********
極度の潔癖症からイジメを受け、高校から仕切り直し
してきたつもりだった男の子と認知症の祖母をやさし
く見守る女の子。祖母の笑顔のため、やさしい嘘をつ
く2人。繊細な心の動きが伝わってくる2人の役者の
演技に好感が持てる。杉咲花ちゃんの方は、もうすっ
かりお馴染みだけど、小関裕太君は見覚えがあるは
ずなのに思い出せなくて…。でも、彼の優しい顔立ち
が気になって気になって…。最後の方でようやく彼が、
「ごめんね青春!」で、「コスメ」こと村井守役の子だっ
たことに気が付いて…。若い俳優さんの成長していく
姿を見るのは、何だかちょっと嬉しい。得した感じで。
好きな人と初めて手をつないだ時の嬉しさとドキドキ
を思い出させてくれる、とても優しくて、柔らかな物語。
おばあちゃんの笑顔を、「化石の微笑み」だと彩美は
言ったけれど、和哉が言うとおり、化石でも掘り起こ
されて、今の風に当てられてよかったと、私も思った。
たとえまた埋れてしまう記憶だったとしても、一瞬の
淡い光だったとしても、幸せな記憶は思い出したい。
誰かと…いえ、大切な人、好きな人と手をつなぎたく
なる、そんな時間を大切にしたくなる…ドラマでした。
●「化石の微笑み」HP
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