「ばけばけ」第60回
第12週「カイダン、ネガイマス。」
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<大雄寺>
(「水飴を買う女」の墓に向かい、
手を合わせたトキ)
トキ) 先日はヘブン先生が
ありがとう存じました。
住職) あっ、いいえ…。
その後、どげかね?
トキ) あっ…はい、おかげさまで。
もう金縛りはもうすっかり…。
寂しがっちょるぐらいです。
フフッ…。
住職) そげかね。なら安心だが…。
トキ) はい。
住職) …で、何か、
相談があるとか?
トキ) はい…。
「水飴を買う女」を、もう
いっぺんお聞かせ頂きたく。
住職) ほう…怪談の?
トキ) はい。
**********
<花田旅館>
平太) あと少し、
待っちょってごせ。
トキ) あっ…。
平太) もう1~2分で…。
いや、4~5分、5~6分で、
出来るけんの。
トキ) フフフ…はい。私が早く
来過ぎたのがあれですけん。
平太) いやいや…。
急ぐけんのう。
トキ) フフッ。
(こっそりあくびをするトキ)
**********
<表>
ツル) ありがとうございました。
ウメ) ありがとうございました。
ツル) はあ~しかし、だいぶ
日が延びてきたわねえ…。
ウメ) ほんに。こないだまで
この時間は真っ暗でしたけん。
ツル) ねえ? もうすぐ春だわ。
**********
(土間に入る)
ツル) こげに同じことば~っか
し言っちょるうちに人は…とい
うか、私、花田ツルは、死んで
いくんだろうねえ…。あれ?
(トキが立っている)
ツル) 寝ちょる…。
あっ、寝ちょるよね?
ウメ) 寝ちょりますね。
ツル) はあ~器用だねえ…。
ウメ) おトキさん? おトキさん?
ツル) (小声で)し~っ、し~っ。
寝かせてあげよう。
疲れちょるんよ。
ウメ) あっ、はい…。
(トキの前に立ち、
両手を突き出すツル)
ウメ) 何しちょるんですか?
ツル) 決まっちょるが。おトキち
ゃんがいつ倒れてもええように
備えちょるの。おウメは、後ろ。
ウメ) 後ろ?
ツル) 後ろ。こげに。
あっ、早いこと早いこと。
ウメ) あっ、はい…。
ウメ) こげにこげに…。
(背中側にまわるウメ)
平太) ほれ、おトキちゃん
お待たせ!
(目を覚ますトキ)
トキ) えっ?
わっ! えっ、ああ…あれ?
平太) うん? 2人とも、
何しちょうかね?
ツル) 決まっちょるでしょう。
おトキちゃんが立ち寝しちょっ
たけん、いつ倒れてもええよう、
備えちょったの。
平太) ああ?
ツル) あ~何事もなくてよかった。
だども…こげなことしちょるうち
に人は…というか、私、花田ツル
は、死んでいくんだろうねえ…。
平太) 何を言っちょうかね?
あっ、おトキちゃん、
夕餉、お待たせ。
トキ) あっ、
ありがとうございます。
平太) ほんで、これが夜食ね。
トキ) すんません、
ご面倒をおかけして。
平太) ええ、ええ!
ちゃんとお代は頂戴するけん!
トキ) はい。
ウメ) 夜食?
ツル) あれ? 朝話してる時
おらんかったかおウメは。
平太) 怪談を語るんだと。
ウメ) 怪談?
トキ) はい。先生が怪談を聞き
たい言うもんで、私が、語っ
て聞かせちょって。
ツル) 昨日もおとといも、
丑三つ時まで語ったんだと。
ウメ) そげに?
トキ) はい。だから、私と
先生の2人分お願いして。
平太) 大変だのう!
ツル) ほんに。
ウメ) けどそれで立って
寝ちょったんですね。
ツル) あっ…。あっ、
おトキちゃんだないかい?
トキ) えっ?
錦織) あっ…この時間は、
ここだろうと思ってな…。
久しぶり。
**********
<茶店>
錦織) 先生は、お元気か?
トキ) 変わらず。
今はお一人でお散歩に。
というか…学校でお会いに…。
錦織) ああ…
まあ、そうなんだが…。
トキ) 中学校…。
錦織) それで…。
2人) あっ…。
トキ) フフフ! あっ、すんません。
錦織) 申し訳ない
トキ) あっ、いえ…あっ、はい。
どうぞ。
錦織) いいのか?
トキ) はい。
錦織) うん…それで…君は確か…
怪談が好き…だったよな?
トキ) あっ…あっ、はい。
怪談は好きですが。
錦織) そうだよな。
トキ) はい…。
錦織) 昔東京の下宿先でそんな話
をしていたし、確か、銀二郎君
と2人とも好きだったよな?
トキ) フッ…ええ。
錦織) 実は…まあはっきりとは
言えないんだが…怪談が、ヘブ
ン先生の日本滞在記の、ラスト
ピースになるのではと、思えて
きてな。
トキ) 怪談が…。
錦織) なので…君から先生に…
怪談を教えて差し上げてくれな
いか?
トキ) 私から、ですか?
錦織) ああ。まあ私が言うのも
なんだが…先生の、お力にな
ってほしい。
トキ) 私が…。
フッ、フフフ…フッ…フフ…。
錦織) うん?
トキ) いや、「私が言うのもなん
だが」ってそげですよ。フフッ。
錦織) しかたないだろう。
トキ) フフフ…え~? フフフ。
ご心配なく。もうやっちょり
ますけん。
錦織) もうやっちょる?
トキ) 怪談を…教えて
差し上げちょります。
錦織) 先生に? もう既にか?
トキ) はい。大雄寺で、怪談を
知った日の夜から、毎晩欠かさ
ず、怪談を語って差し上げちょ
りますけん。もう、しばらく…。
あ~…ただ、私が、英語が話せ
ませんけん、何べんも繰り返し、
ゆっくり語らんといけません。
まあそれもあって…毎晩、えら
~い遅くまで…。
錦織) そうか。
トキ) フフフ…。
錦織) ああ…。そうか、
それは…ありがとう。
トキ) フフッ、いえ。
錦織) いやしかしなるほど…その
様子だと、怪談がラストピース
だと思って間違いなさそうだな。
トキ) う~ん、そげかもしれま
せんね。私には何にも言っちょ
りませんが、あげに熱心に、何
べんも聞いちょられますし…。
まあでも…本当にそげだとする
と…うれしいやら…荷が重いや
ら…フフフ…。フッ…フフフ…
フフ…。どげしました?
錦織) うん? いや…教えて差し
上げてくれと言っておいて何な
んだが…。言っておかねばなら
んことがあってな。
トキ) フフ…えっ、何でしょう?
錦織) 先生は新聞記者で、滞在記
を書くために日本に来ている。
そして…怪談がラストピースで
あるとすれば、怪談のことを書
き上げれば、滞在記は完成し、
先生は目的を達する。
トキ) はい…。
錦織) うん…。まあつまりだ…
君が怪談を語れば語るほど、滞
在記は完成に近づき、先生は…
ここからいなくなるということ
になる。
**********
(台所でぼんやり後片付け
をするトキ)
**********
(座布団とろうそくの
準備をする、書斎のヘブン)
ヘブン) オトキ シショウ!
ハヤク! ハヤク! カイダン!
(ためらうトキ)
ヘブン) オトキ シショウ?
トキ) はい! ああ~…だ…何?
何これ…えっ? な…何か?
ああっ、すんません汚れが。
うん? うわっ、わっ…。
ヘブン) ヨゴレ…。
トキ) うわ…
うっ、頑固な汚れが…。
ヘブン) ガンコ、ヨゴレ?
トキ) あ~すんません。恐らく
今日中には取れませんけん、
今日は、怪談なしで。
ヘブン) アッ… ナニ?
トキ) あれ~? あっ、あっ…。
あ~すんません…。
ヘブン) ナンデ!?
トキ) おっかしいな~?
おっかしいな~?
ヘブン) プリーズ。
トキ) おっかしい…。
(動かないトキを押しのけ、
頑固な汚れをあっさり取って
しまうヘブン)
ヘブン) ネガイマス。
トキ) あっ、そうだ!
あっ、お風呂! お風呂が…今
ちょうどええ湯加減ですけん、
先にいかがでしょうか?
ヘブン) フロ? ナゼ、フロ…?
トキ) なぜ? あの、すごく、体に
…体にええ…。あ~…先生、寒い
嫌い、暖かい好き、ですよね?
ヘブン) ア…モチロン。But….
イマ、カイダン、スキ。
カイダン、ハヤク! ハヤク!
トキ) そげですよね。
ヘブン) ソゲソゲ!
トキ) アハハハ…フフ…。
では…。フフッ。
ヘブン) カイダン…
カタル… キライ?
(目をそらしてしまうトキ)
ヘブン) ワタシ… キク… スキデス。
アナタノ ハナシ…アナタノ
カンガエ… ハナスノ コトバ…
スキデス。
(少年のようなまなざしで、
トキを見るヘブン)
(うつむき、微笑むトキ)
(たすきを外す。
トキ) フフッ…はい。
**********
(和ろうそくに火をともす)
(向き合って座った2人)
トキ) 「これは、初代藩主、松平
直政公の頃のお話。そのころ、
大雄寺の東側に、小さな飴屋が
あったそうで…」。
ヘブン) ミズアメ?
(微笑むトキ)
ヘブン) アリガトウ。
トキ) いいえ。
「『ごめんなさいませ』。ある夜更
けに、一人の瘦せこけた、まる
でかげろうのような女が、『水飴
を下さいませんか?』と、店を
訪れた。そして、それは毎晩続
きました。店主は…」。
**********
勘右衛門) ひい! ふう! みい!
よ! いつ! む! なあ!
男性) 松野さ~ん。松野さん。
郵便で~す。
フミ) えっ?
松野ですが…。
男性) こんにちは、郵便です。
フミ) えっ…?
本当にうちにですか?
男性) はい。松野トキ様宛てに。
フミ) へえ~珍しい…。
初めてだないですかね?
おトキに手紙だなんて…。
勘右衛門) 誰からじゃ?
フミ) 山根…銀二郎…。
勘右衛門) ああ?
フミ) 銀二郎!
勘右衛門) 銀二郎じゃと…?
(封筒を太陽に透かして見たり…)
**********
「私が言うのもなんだが」…。ほん
それ! もう~ホント、ヘブン先生が
好きなんだから~。かわいいったら
ありゃしない。早く誤解がとけると
いいのにね。本当は相思相愛なのに。
そしてその思いゆえに、怪談が日本
滞在記のラストピースになるだろう
ことも予想できるし、それを書き上
げたら日本を離れることになること
も予想出来てしまう錦織が切ないよ。
そして、錦織の話を聞いて、無駄な
抵抗を試みるトキもかわいすぎる。
少年のように、キラキラしたまなざ
しで怪談をせがまれたりしたらもう。
話さないわけにはいかないよねえ…。
大好きな怪談。大好きな怪談を好き
になってくれた人に、怪談を語れば
語るほど、その人が日本を離れる日
を早めてしまうかもしれないという。
そんな時に銀二郎から手紙…ワオ!
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