温かい重みを肩に感じて目を開けると、隣にいる北山も眠ってしまっていた。
だらんと無防備に開いた手のひらはシートに投げ出されている。
俺はその手をそっと握った。
北山が目を覚まさないのを確認してから、窓の外に視線を向けた。
街路樹の間からいくつもの光が溢れて、チカチカと瞬き流れていく。
車が揺れるたびに、肩にかかる重心がずれる。
そうしている間にも北山が目を開けるかもしれない。もしかすると次の衝撃で起きてしまうかもしれない。
けれど俺は瞬く光を見つめ続けた。
北山の手の温もりを感じていたかった。
なぜか自信もあった。
もしも目を覚ましても、北山は知らないふりをしてくれるだろうと。
今までがそうであったように、これからも、きっと。
北山のそういうところが、好きだ。
俺たちが、お互いの気持ちを確かめ合うことは絶対にないのだ。
「藤ヶ谷さん、着きましたよ。」
バックミラー越しにマネージャーと目が合った。
俺は北山の手を離し、カバンと飲みかけのペットボトルを手に取った。
「ありがとう。お疲れ様。」
マネージャーに声をかけそのまま振り返らずに車を降りた。
まだ温もりの残る左手をぎゅっと握り締めながら。
K-side
「ありがとう。お疲れ様。」
目を開けると、藤ヶ谷の後ろ姿。
スライドドアがゆっくりとしまり、ロックがかかる音がした。
しばらく走ると、マネージャーは「もうすぐ、着きますよ」と声をかけてきた。
「ぐっすり眠ってましたね笑」
バックミラー越しに笑顔を覗かせたのは、俺よりもひと回りくらい年下のマネージャー。
深夜の送迎にも関わらず、疲れをみせない好青年だ。
「さすがに寝ないとキツイわー笑」
俺がそう返すと、彼は「そうっすよね」となんの疑いもない様子で相槌をうった。
眠って、うっかり肩にもたれかかるなんてよくある芝居。
しかし、彼には通用したみたいだ。
…藤ヶ谷は、気づいたかな?
俺は、まだ温もりの残る右手を
ぎゅっと握りしめた。
