スペイン語には「過去形」が4つある。「点過去」「線過去」「過去完了」「過去未来」である。この点は、有海はフランス語で理解していた。フランス語、スペイン語とイタリア語とは、元はラテン語とする親戚言語で、共通点が多い。
「過去完了」は、過去のある時点にはすでに終わっていた時制。これは英語でも馴染み深い。例えば「彼が食堂に来たときには、もうすでに5人の男たちがいた。」という具合だ。
それに対して「点過去」と「線過去」は、その事情が感覚的に見て瞬間的に完結したのか、ある程度継続的なことなのか(他にも用法は多いが)、でどちらを用いるかが決まる。
有海には、下図のように感じられるが、どうだろうか。
彼は朝5時に起きた。(点過去)
Se levantó a las 5 de la mañana.
家族は食堂に居た。(線過去)
Su familia estaba en el comedor.
この se は「彼自身を」という再帰動詞、sv は「彼の」という所有形容詞であるが、そこは今は軽く受け流しておくとして、
彼の朝5時に起きた時には、彼の家族は食堂に居た。
は・・・
Cuando se levantó a las 5 de la mañana,su familia estaba en el comedor.
のようになるのである。
「彼が目覚めた」のは瞬間的な、単純に過去と表現される動作であり、家族が食堂に居た」には、何分か何十分か経過を伴う。あるいは、後半には過去完了を使っても良いかもしれない。
ただ、線過去には、他の用法もあって、間接話法における時制の一致や、湾曲表現にも使われるとのことだ。
ペドロは私に博物館に行かなければならないと言った。
Pedro me dijo que tennnia que ir al museo. (Pedro me dijo “Teogo que ir al museo.” )
これは「彼が私に言った」言葉は「僕は博物館に行かなければならない」だったのだが、「言った」に合わせて過去形にされたのである。その場合は、点過去ではなく、必ず線過去を用いるのだそうである。
また、線過去による湾曲表現の例としては、
Queria pediirse un favor. お願いがあるのですが・・・。
Que deseaba usted?いらっしゃいませ。(何をお求めでしょうか?)
などを覚えておくと便利だろう。
過去進行形は、英語でも「〜していた。」で馴染みがあるだろう。残るは「過去未来」という、ちょっと変わった形だ。これは「ある過去の時点においては未来だった」事柄だ。
彼女は私に、次の木曜日にはここに来るだろうと言った。
Elld me dijió que estaría aquí el próximo jueves.
この発言が水曜日だったら「彼女が来る」のは、その時点でも未来だが、もし金曜日だったなら、もうすでに「彼女は来た」あるいは「言葉通りには来なかった」という過去のことになるのだが、この場合そのどちらでもよく「彼女は来ると言った」という事実のみが要点となるのだ。
なお、未来形の作り方は比較的簡単で、動詞の原形に、そのまま é,ás,á.emos.éis.án を付けてしまえば良い。estar は、 estaré,estarás,estará,estaremos,estaréis,estarán
と活用する。もしかしたら例外もあるのかもしれないが、全ての動詞が未来形はこの活用でいけるように思われる。
と活用する。もしかしたら例外もあるのかもしれないが、全ての動詞が未来形はこの活用でいけるように思われる。
そして、過去未来形は、まさにこの未来形の活用に線過去を付けた形なのである。分かりやすいと言えば分かりやすい。
estaría, estarías,estaría,estaríamos, estaríais,estarían
「少し難しく考え過ぎたかな・・・。」
有海はふっと時計を見た。夜のヘルパーが来る時間になっていた。
