語学探偵・ユミ(スペイン語編) 4.命令形は接続法現在?
有海は、動詞の活用表を作っている。
規則動詞 hablar comer vivir
「〜だ」動詞 ser estar haber
不規則活用 tener saber dormir ir venir 等々。
これらの活用形が各々6×8-1+2、合わせて49ずつある。いつでも見られるようにPDFファイルに変換して、インターネット上にアップしてあるが、これら全てを覚えるのは本当に大変だと思う。
どうしてそんなにたくさんあるのかと言えば、
直説法(普通に考えられる形)の、現在・過去・未来・点過去・線過去・過去未来・命令
接続法の、現在と、過去
現在分祠・過去分祠
などがあるからだ。それが一人称・二人称・三人称・またそれぞれの複数形で変化する。
語学書では、
一人称単数(私)・一人称複数(私たち)
二人称単数(君)・二人称複数(貴方達)
三人称単純(彼、彼女、あなた)・三人称複数(彼ら、彼女たち、貴方達)
という形で表に纏められている。
スペイン語では、親しい相手は tu で二人称単数、丁寧な「あなた」 usted は三人称単数になる。
驚くのは命令形で、
ar 動詞の規則的活用をする hablar (話す) の場合 、現在形が
hablo hablas habla hablamos hablais hablan
と活用するところ、命令形は
一人称(yo) - - (nosotros)hablemos
二人称(tu)habla (vosotros)hablad
三人称(tu)hable (usted)hablen
なのである。一人称単数には命令形はないらしい。「私」自身に対して命令形がないのは、それもそうかなとも思う一方で、同時に「でも、無くて困る時もあるんじゃないか?」とも考えてしまう。
一見、不規則にも見えるのだが 前述の「はじめてのスペイン語」によれば、実は「命令形」は、
tu は、直説法現在三人称そのもの
vosotros は、動詞の原形 -r +d
残りの三人称は、それぞれの接続法現在と同じ形だ。そのように見れば、少し楽になる。
接続法というのは、通常の活用(直説法)とは異なる活用で、これらにも現在形や過去形が存在する。例えば
Creo que está en el comedor. 私は彼が食堂にいると思う。(aの上にはアクセント記号)
という文における「 está いる」のように、実際化されていない動作を指す「法」という時制の概念だ。つまり、この場合、たとえ実際には「彼」が食堂にいなくても、「私」は「彼が食堂にいる」ことを想像して言っているわけである。
西ヨーロッパ言語においては、この接続法という概念は一般的に見られる。有海も、この「法」の概念に初めて触れたのはフランス語においてであった。
スペイン語では、ar 動詞とer.ir 動詞の語尾が互いに入れ替わったような形になっている。
それを踏まえて、スペイン語の命令形を見直してみよう。
二人称単数 tu は1つ下直接法現在三人称単数に変わり、
二人称複数 vosotros は、動詞の原形から r を取ってd を付け、
三人称単数 usted は、接続法現在、
三人称複数と一人称複数は接続法現在を使う
そういうふうに覚えよう、と有海は考えた。命令形だけは、普通の動詞活用表とは異なる順序で組み換えて覚えたほうが良さそうだ。
規則的活用動詞の他の例を見る。
er 動詞 comer
直説法 現在形
como comes come comemos comen
命令形
ー come coma comamos comed coman
ir 動詞 vivir(生きる。住む)
直説法 現在形
vivo vies vive vivimos vivis viven
命令形
ー vive viva vivamos vivid vivan
さらに、これが「〜するな。」「〜しないで下さい」」という否定命令になると、一律に接続法現在を使うというのだから、やはりややこしい。いや、原則的には「命令」は接続法現在を使っているのが、二人称だけが砕けて異なる形に置き換わったのかもしれない。
すると、ir(行く・相当な不規則動詞) の場合・・・
No vaya! 行かないで!
すると、「行って!」は
Va!
なのか・・・。否定することを命令することは、その動作が現実でなくなるから接続法を使うのだろうか・・・。うーむ、そうとしか思えない。