いまさらながら「アバター」を観た。



ターミネーターシリーズやタイタニックなどで技術革新をもたらしヒット作品を次々に世に生み出してきたジェームズ・キャメロン監督。



大ヒットしたくらいだからファン層も相当広いと思う。



ただ僕個人としては、キャメロンもスピルバーグも金曜ロードショーか日曜洋画劇場で十分だ。



両監督とも有名でそれなりに面白い作品はあるけれども、他人に勧める映画は残念ながらない。



世の中にはもっと「これは観とかなきゃな!」って思える作品はいくらでもあるからね。



とはいえ。



金曜ロードショー、日曜洋画劇場のポストにスッポリとハマる作品を作れるというのも偉大だとは思う。



その枠でヴィム・ベンダースやそれこそゴダールとか放送してくれたほうが次の日の話題に困らなくて済みそうだと思ってしまっている僕としてはやはりキャメロン監督は苦手なのかもしれない。



さて。



今回の「アバター」は以前に金曜ロードショーで放送したものを録画したヤツだ。



HDDが撮り貯めた映画でパンパンになってきているので観てみた。吹き替えだけれどしょうがない。



んで内容。



もうベッタベタなストーリー。蠅取紙なみにベッタベタベタベタしてる。水洗いしてもなかなか落ちないベタベタ。



もうね、この手のストーリーはまとめて絵本にでもしたらいいんじゃないかと思う。



こいつ敵になるヤツね。こいつとは恋するんでしょ。最初イヤなヤツだけど仲間になったら良いヤツなんでしょ。意外性も、心躍る展開も皆無。小4、いや小3でも分かるレベルだ。



よくこんなんで2時間半以上作ったな。せいぜい1時間半だろ~と思うのが率直な感想。



良かった点としては開発責任者のパーカーのキャラ。



「原住民の死を報道するマスコミより、まじかに迫った決算の時の株主の方が恐ろしい」ってナイス過ぎるセリフ。



とても人間くさくていいね。



欲というものに縛られているという性質と、絶滅危惧種の生命体の存続を願いながらも家に出たゴキブリを無慈悲に叩き殺せるという性質を持つのが悲しき人間だ。





気になった点。



この映画は大航海時代の新大陸がモチーフなのだろう。



シャーマン崇拝の原住民VS侵略者という構図はアメリカ先住民VSスペインのコンキスタドールそのもの。



一発当てて大儲けを企んではるばる大西洋を越えてきたコンキスタドールは新大陸でやりたい放題。なにせ原住民は弓と槍。



それでも原住民達は立ち上がってコンキスタドールに立ち向かうも文明の差が歴然。結果、大量虐殺という悲劇になりました。インカ帝国や様々な部族がこの時に滅ぼされたのです。



あの有名なクリストファー・コロンブスも悪名が高いコンキスタドールの一人。数千人の原住民を殺しています。



アフリカでも同じです。



南部アフリカに栄えた偉大な戦士達が集うズールー。



彼らもまたイギリスと戦った際にはマスケット銃相手に弓と槍で応戦しました。そして数万人の死傷者を出した後に植民地にされました。



日本にも似た状況がありました。



幕末に黒船がきちゃったときですね。



最初は尊王攘夷だ~!なんつって息巻いていたけれど、薩摩藩や長州藩など実際に外国と戦ってみたら「無理無理。コレ無理だよ」ってことになって急遽、倒幕、開国。文明化で近代化になったんです。



間一髪で滅ぼされもせず、植民地にもならなかったのは正面から敵対することなかったからです。インカやズールーのように。



話を戻してアバター。



自然と共に生き、自然と共に死ぬ生活をしている原住民のナビィ達は大層ご立派。



しかし、もう後戻りできん状況にいるワケです。



圧倒的な力を持った異星人がベースキャンプを張って数年経つ状況。



気づかないといけない。今までと同じじゃいられないってことに。



「ウチらの星のことには構わんでくれ」っていうのは鎖国していた日本と同じでマイルール。



原住民にとっての世界は惑星1つでも、遥かに文明の進んだ者達にしてみれば世界とは限りなく広がる宇宙だ。



そして宇宙とはやはり自然の一部。



とするならば異性人がやってくるのも、家にシロアリが大量発生するのも、どちらも自然の成り行きだ。



そんな状況に英雄気取りの血気盛んな主人公が平和的解決ではなく武力行使による解決を煽る。



ま、結果勝てました。良かったコレでこの星から異星人はいなくなったぞ~い!で話は終わる。



しかしながら、主人公もナビィ達も分かっていない。人間の恐ろしさを。



人間は一度敗れて、それが危険を伴うと承知のうえでも欲のためにはそれを乗り越えられる。



そしてなによりもあの惑星に大量の儲け話が埋まっていることを忘れはしない。決して。



コンキスタドールもイギリスのマスケット兵も連戦連勝ではなかった。鉄の甲冑を着込んだスペイン兵が、射程範囲が遥かに違うイギリス兵が、弓と槍の戦士達に負けたこともあった。



しかし最終的に勝利を得たのだ。



そう考えると、この映画の結末はハッピーエンドなのだろうかと疑問を抱く。