京浜東北線の東神奈川駅で乗り込んできた初老の男性に関西弁で声を掛けられた。


『コレ、関内とまります?』


その老人は結婚式に出席する為に上京してきたのだろうか。黒い背広に白いネクタイを着用し、小脇にセカンドバックを挟んでいた。


170㎝後半はあろう長身に広い肩幅。なかなか恰幅が良いが背も曲がっておらず、背広が映える。


白髪を七三に分け、ニカっと微笑んでいる姿からは人の良さが滲み出ている。


『はい。停まりますよ』


僕が答えると細い目をさらに細めながら右手をスッと挙げて


『ホンマでっか!おおきに!』


車内にも関わらずかなり大きい声でお礼を言うと、老人は後ろに振り返り


『関内行くらしいで』


と声を掛けた。


僕はてっきり大柄な旦那様に奥様が隠れてしまっていたのだと思った。


しかしその大柄な老人の後ろからは


『なんとか間に合いそうやな』


男性の声だ。


すると大柄な老人の脇をスルリと抜けて小柄な老人が姿を現した。


その小柄な老人もやはり背広に白いネクタイ、小脇にセカンドバックを抱え、白髪を七三に分けている。


そして格好だけではなく顔形が先程の大柄な老人と瓜二つだ。違うのは後から出てきた老人が先の老人よりニ周り小さいということだけ。


兄弟なのか双子なのか分からないがまさにロシアの民芸品マトリョーシカだ。



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