ROLLACOASTER 2021年6月刊

段宜恩 全新启途(A new beginning)

 

 

 成功することに焦る現代社会、若者はこれまで3分の1の人生をかけて一つのことに打ち込みたいと願った。マークこそそのようなアーティストである。3年間の練習生生活を経てデビューし7年、4枚の韓国語正規アルバム、3回のワールドツアー、64回のコンサート、1000万人以上のファン、20代のまさに青春時代に彼はすでに世界で認められるK-POP歌手という地位を持っていた。K-POP歌手という確かな仕事は強固で安全な巣穴とも言えるが、彼はまだエンターテイメント界に足場を固める更に多くの方法を探し出したくてうずうずしている。

 

 マークにインタビューしたことのある記者ならほとんど皆が感じたことがあるだろう。彼は決して話好きではないが、コミュニケーションしてみるととても気さくであることを。彼との対話はたとえ瞬間的に理解できなくても、次の瞬間にはマークが別の方法で自分の表現したい考えについて説明してくれる。ボディーランゲージや、時には少し英語を使って。話したい考えがなんであっても、彼はいつも真剣に話し、彼のおかげでインタビューはとてもスムーズに進行する。

 

 過ぎた7年の時間を振り返って、マークは少し考えたあと、最初にfast(速い)と言う言葉を吐露した。

 

「この数年は過ぎるのが本当に早かったです!」言い終わったあと唇を撫でて次の言葉を考えた。2010年に音楽の夢を追いかけて単身異国へ向かった風景が今もまだはっきりと目に浮かぶ。

 

 《Girls Girls Girls》のデビューステージ、はじめてのファンミーティング、初めてのワールドツアー、マークは一つ一つの記憶を分類したあと完璧に記憶の倉庫に保存している。質問の合間に彼は素早く頭の中の過去の記憶に目を通し、続けて言う。「その次はHappyです。楽しいから時間が過ぎるのが早いのです。僕はそう思います。Right?」

 

 まだ言いたいことを自由に言えるほど中国語を使いこなしてはいないが、彼は習慣的に自分の論理を整理して対話の周波数を一致させる。最後の言葉に彼はMemorableを選んだ。それは、幸せな時間はいつも短いもので、短いからこそ全て覚えておきたいからだ。

 

 一月の初めにGOT7の4枚目の正規アルバムのカムバック活動と年末の授賞式を終え、マークは10年間過ごした場所にしばしの別れを告げた。個人のYouTubeチャンネルに投稿された7分間の映像の中で、彼は韓国語で自分の赤いマイクに向かってそっと「終わり」と言った後、それを静かに箱にしまった。メンバーはぞくぞくとマークのところに来て、「体に気をつけて」という別れの言葉を残していった。メンバーにいつ帰ってくるのかと問われた時、彼はそれに対する答案に空白を残した。

 

 飛行場で、最後の感想を尋ねられた時にマークはとても柔らかな口調で、「これは最後ではありません」と言った。これを見たあなたは彼と一緒に気持ちを整理し、新しい始まりが楽しみになったのではないだろうか。

 

 この数ヶ月マークはロサンゼルスで過ごした。彼はこの時間をシンプルな幸福と表現した。ただ街を歩くだけで心地よかった。家族と一緒の時以外には時間があれば友達とゴルフをしたり、ツイッチ上でゲーム実況をしたりする。時にはclubhouseでファンとおしゃべりをしたりもする。

 

 彼は自分な好きなことはどれも一度は試してみたと話す。新年を迎える時に、彼は自分の部屋のドアに“行到水穷处,坐看云起时”※という一対の春聯を掲げた。横向きの春聯には“A New Beginning”を掲げた。一対の春聯には唐の詩人王維の《終南別業》の言葉を引用した。これはまさにマークがどんな環境でも人前で落ち着いているということだ。

 

 客観的に見れば、これは彼の10年間の忙しい日々のあとの短い休息だった。まるで長い時間ピンと張ったバネが、ちょうどよく跳ね返ったかのようだ。この休息は彼自身に時間を作り、彼は心の声に耳を傾けた。そうしてこそ人生にはまだ何度か光り輝く瞬間があることが期待できると分かるのだ。

 

 生活への回帰に比べて仕事の方は積み重なったものが多かった。年初には個人のYouTubeチャンネルを開設した。まだ何も動画が投稿されていないにもかかわらず、MarkTuanチャンネルは高い人気でチャンネル登録者100万人を達成し、ゴールドクリエイターアワードが送られた。その後、同じくEDMクリエイターのSANJOYとシングル《one in a million》をリリースした。

 

 以前からの低音ラップとは異なり、この曲は味わい深いR&Bのラブソングだった。「コロナのせいで、皆さんの生活は辛いものになりました。僕はこの歌を通して皆さんを元気づけることができればと思います。」

 

 楽曲は発表当日すぐに、10の国と地域のiTunesチャートで一位を獲得した。今までMVは800万回再生されている(2021年6月当時)。ソロ歌手の最初のチャレンジとして、彼の成績は注目に値することは明らかだ。

 

 多くの音楽評論はマークが本当に自分らしいスタイルを探し出したと考えている。しかし本人に自身の音楽スタイルを尋ねると、彼は次のように答えた。「今まで僕はまださまざまな異なる音楽を試しているところです。ロック、流行の音楽、R&B、これらの好きな音楽ジャンルはどれも試してみたいです。」

 

 「得意なこと」はある種の技能であり、チャレンジし続けることはさらに多くの「得意なこと」を見つけることである。特定の音楽スタイルに集中するよりも、今のマークならもっと自由な選択ができる。ただし、どんなスタイルにしろ、彼が執着するのはある歌を完璧に仕上げることだ。

 

 次のアルバムの制作について話が及ぶと彼は少し沈んだ話しぶりになった。「今回は僕が初めて自分で準備したアルバムです。学ばなければならない作業がとてもたくさんあります。だから制作は簡単ではありません。僕はゆっくりと自分の音楽制作の基準を作っていく必要があります。同時にさらに多くの判断の自由さも持っていなければなりません。」自由な性格、完璧主義、これらは乙女座の人々の典型的な特徴だが、マークもまさにそうらしい。彼はさらに最近今まさに完成に向けて磨き上げているいくつかの楽曲を録音するところだと教えてくれた。そしてそれらは次のアルバムに収録されるそうだ。ファンの皆さんは是非楽しみにしていてほしい。

 

 雑誌の撮影は成都で行われた。この成都訪問は初めてではない。以前は観光する機会もなかったが、この街の火鍋と辛味は彼の記憶に深く刻まれている。そのため、今回の撮影もわざわざ成都の昔ながらの火鍋屋が選ばれた。撮影当日の服装は編集が初期のヒッピー風ファッションと現代デザインを組み合わせピンク色で落書きを施したセットアップを準備した。

 

 

 撮影開始前、彼がこのような遊び心たっぷりの衣装をどのように着こなすかみんな興味津々だった。扉が開いたその瞬間、マークの着こなしは何者をも失望させなかった。遊び心いっぱいのスタイルはしばしば人生のストーリーを予感させる。ならば、私たちは今日のこのスタイリングをサプライズと名付けよう。

 

 普段のマークはストリートファッションの愛好家だ。彼のファッションは街の雰囲気を引き立たせる。少し前に彼はデザイナーとして3回目のRepresentとのコラボレーションでXC3シリーズをリリースした。このシリーズの中で彼は次のような言葉を書き込んだ。

 

”Grasp onto your life

Take control of it

Stop letting time slip by

If you don’t like what you see

There is no need for things 

To be the way that they are

You have the power to change

To adapt 

And to conquer

Be the person you have always

Wanted to be

There’s no need to wait

Any longer.”

 

(あなたの人生をつかみ、

コントロールしよう。

時間を無駄にするのはやめよう。

気に入らないことは、する必要はない。

あなたは変化し、適応し、

打ち勝つ力を持っている

なりたいと思う人になろう。

もう待つ必要はない。)

 

 彼はこのメッセージでコロナによって制限された生活について語ったのだ。「今、多くの人の生活はどれも辛いものです。僕はこのシリーズを通してポジティブなメッセージを伝えたかったのです。」3回のコラボレーションで数万の商品を売り上げ、全ての収益は最終的にSave The Children”基金に寄付された。この青年は自分のやり方で黙々と世界中のために頑張る。

 

 公人として社会問題に対して声を上げることの重要性について話が及んだ時、彼は電話の向こうでしばらく考えていた。アジア人移民に対して決して友好的ではない環境で成長したマークは次のように話した。「なんというか、アメリカではアジア人ヘイトの事件が多く起こります。もし私がSNS上で声を上げることができれば#StopAsianHateという意見の提唱をもっと多くの人が目にすることができるでしょう。それを見た人はアジア人グループが社会で生存していく上での問題についても意識するようになるでしょう。僕は僕のできる限り助けになりたいです。」この質問に答えた時、彼は中国語と英語を使って「意識の向上」と「どのように手助けするか」ということを特に強調した。はっきりとした正確な言葉はあきらかに彼の中国語は彼が彼の中国語能力について言う7点という点数をはるかに超えていた。

 

 インタビューの最後に、私は彼に7年後の未来はどうなっているか考えることがあるか尋ねた。「最近は毎日考えています。一歩一歩努力します。後悔はしたくないので。」マークは「今」を大切にする人だ。彼ウィッシングリストには彼がずっと挑戦してみたいことがある。それは演技だ。もしできるなら彼はスーパーヒーローの役をしてみたい。マークが選んだのはスパイダーマンだ。彼は言った。「僕はマーシャルアーツトリッキングができますから。」その話しぶりにはいたずらっぽさを帯びていた。誠実に対応してくれる彼に対して、彼の全ての願いが実現することを私は切に願う。

 

 

 

※「行きて到る水窮まる処、坐して看る雲起る時。」川の流れに沿って、だんだんとさかのぼってゆく。とうとう源に達し川はもはやそこでおしまいになる。そこにすわりこんでいると、向こうの谷あいから雲がもくもくとわきあがる。それをじっと眺めている-吉川幸次郎、三好達治著、新唐詩選、岩波新書より引用